テーマ:ニュース(100160)
カテゴリ:仕事を離れてふと思う
昨日の日記で書いた,「過半数の株式」「3分の1以上の株式」という数字の意味はおわかりいただけたであろうか。これらは,1株につき1票の議決権があることが前提(商法241条1項)である。
それでは,フジテレビがニッポン放送株の公開買い付け(この言葉の意味は明日の日記にゆずりたい)に際し,25パーセント以上を取得しようとした。この数字の意味は何か。 それは,株式の議決権についてもうひとつ重要な規定があるからである。それは,自己株式及びそれに類似する株式については議決権がない(商法241条2項・3項),ということである。 ある会社(「A会社」とする)が,資産として自分の会社(A会社)の株式を持っていたとする。その株式に議決権を認めた場合には,その議決権はA会社の取締役が行使することになる。会社の業務執行を決めるのは取締役会であり,実際に社員を使って業務を執行するのは各取締役だからである。 本来,取締役は株主総会で選任される。つまり,株主の信任のもとにその業務を行っているのである。にもかかわらずA会社が持つA会社の株に議決権を与えると,取締役が,自分自身が個人として持っているわけではない株式で,自分を信任することになる。 自分が持っている株で自分を信任するのならいざしらず,他の株主のものである会社が持っている株で自分を信任するというのは,取締役の横暴であることはおわかりいただけるであろう。そこで商法は,会社が自己株式を取得しても(普通は取得できない),それには議決権がないとしたのである。 これと同じ趣旨で,A会社が支配している「別会社B」が持っているA会社の株についても,商法は議決権を否定している。具体的に言えば,B会社の25パーセント以上の株をA会社が押さえていた場合,B会社はほとんどA会社の言いなりであると考えてよい。そんなB会社が持つA会社の株は,A会社が持っているのと変わりないと法律は考えているのである。 そこで,ニッポン放送とフジテレビの問題にあてはめてみる。ニッポン放送はフジテレビの大株主である(現在はソフトバンクに貸し出されたらしいが)。堀江社長は,ニッポン放送をのっとった上でニッポン放送の持つフジテレビ株を利用し,フジテレビの経営にも参加しようとしていた。 ところが,フジテレビがニッポン放送の株式の25パーセント以上の株式を押さえたことで,ニッポン放送の持つフジテレビ株の議決権が,現段階ではなくなってしまったのである。 本来フジテレビの取締役の横暴からフジテレビの株主を守ろうとしていた規定が,堀江社長の横暴からフジテレビをとりあえず守った,ということになる。このように,商法やそれに関連する法律においては,法が予定していない事態が次々と起こり,毎年のように改正されているのである。 これまで書いてきたことは,株式についての基礎中の基礎であり,株式会社を設立しようと思っている人は絶対に知っておかなければならないことである。明日から,ニッポン放送がやろうとした新株予約権やライブドアの時間外取引の問題点について書いていきたい。 ←最後にここをクリックして下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 28, 2005 11:58:34 PM
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