テーマ:ニュース(100159)
カテゴリ:仕事を離れてふと思う
法律制定当時に想定していなかった紛争が生じた時,立法趣旨から考えて法文の意味を広げたり縮めたりして新しい法規範を作り上げ,それに紛争事案をあてはめて紛争を解決する,というのが裁判所の重要な仕事のひとつである。
新株予約権発行差し止めの仮処分事件において,裁判所が,「証券取引法27条の2の立法趣旨から考えてToSTNeTシステムによって株式を大量取得した行為は違法であり,そのような威嚇的企業買収に対する対抗措置として行う新株予約権の発行は許される。」という判断を下す可能性もないわけではなかったと思う。 しかし東京地裁も東京高裁も,「ToSTNeTシステムによって株式を大量取得した行為は証券取引法に違反しない」という判断を下した。その判断の根底には,私の昨日の日記にコメントしてくれた方が書いていたように,「規制の対象はあらかじめ法文で明確になっていなければ,その行為をした者が思わぬ不利益を受けてしまうことになる」という考えがあったと思う。 「罪刑法定主義」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「犯罪とその刑罰があらかじめ法文で定められていない行為で刑罰を課されることがない」という原則である。基本的人権の尊重の観点から当然のことである,ということは皆さんもわかるであろう。 証券取引法の規制は刑罰法規ではないが,規制に違反していると評価されれば行政指導等様々な不利益を受ける。会社にとっては時として,刑罰よりも致命的な処分が課されることがある。やはり,「規制の対象はあらかじめ法文で明確になっていなければならない。」と考えたのだと思う。 ただし,東京地裁及び東京高裁のいずれの決定でも,「ToSTNeTシステムを通じた取引についても,今後,公開買付制度の趣旨を及ぼす立法を行うことには十分に合理性がある」旨述べられている。暗に,堀江社長の手法が強引すぎるとの批判をしているのである。 私個人の見解であるが,堀江社長の行為は法の網の目をくぐった極めてダークな行為である,と思う。そのようなことを思いつくこと自体,やはり頭がよく偉大な人間(但し尊敬はできない),ということになるのだろうか。 他にも様々な法律上の論点はあるが,この問題は和解で片づいたことでもあり,明日からは異なるテーマの日記を書きたいと思う。 ←最後にここをクリックして下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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