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「みらい」出航!!

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「ジパング」の小説!!

「ジパング」の小説!!

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2005.07.13
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カテゴリ:小説「ジパング」
二、「みらい」出港

二〇〇X年 六月某日 海上自衛隊 横須賀基地にて

「出港用―意。舫い放てっ」

横須賀基地の港で四隻の自衛艦が出港に向け着々と準備をしているところだ。空は厚い雲に覆われ、雨が横薙ぎに降り続けている。甲板では乗組員がずぶ濡れになりながら作業をしていた。

沿岸に目を向けてみると、そこは大勢のマスコミ各社や自衛隊派遣に反対する人々で埋め尽くされていた。彼らの頭上には自衛隊海外派遣反対だとか平和憲法を返せなどの煽り文句が掲げられている。

天にも陸にも彼らの出港を祝うものは誰一人いない。それゆえ、彼らは海へ身を寄せるのか。

 四隻とも出港準備が終了し、乗組員が甲板に集まった。

「総員、帽振れー」

甲板に集まった自衛艦の乗組員が整列し軍帽を振った。生憎の雨に邪魔されているとはいえ荘厳たる風景といえよう。だが、彼らに向けられるものは歓声でも声援でもなく群衆の罵声のみであった。

「憲法を踏みにじって。お前らそれでも日本人か―――」

「馬鹿野朗、アメリカの犬め」

厳しい現実という名の声が、乗組員に浴びせられている。

さて、この艦隊の中心となる旗艦は「ゆきなみ」。それに護衛艦として新鋭イージス艦の「はるか」と「みらい」、補給艦の「あまぎ」が続く。これらにより構成される第一護衛艦郡が今回エクアドルに派遣される。

そのうちの護衛艦「みらい」の甲板上の乗組員達の中に、当艦の副長である角松洋介二佐もいた。そして沿岸から押し寄せる敵意の波に耳を傾けていた。

今回の派遣は、演習とはいえ武器弾薬を配備した威嚇的なものだ。平和憲法下の戦後日本がヒステリックな反応を示すのは当然過ぎるほど当然である、と角松は考えていた。こうしてみると日本は「戦後」から未だ解放されずにいるのだとつくづく痛感させられるものだ。

そして我々自衛隊はいまだ、その武力に根拠を得られずにいる。国民の支持を得られずにいる。それらを覚悟の上で自分は自衛隊に入隊し、今回の派遣にも参加したのではなかったか。しかし、理屈では理解できていても眼前に広がるこの人々のうねりは―――。

 角松の動揺は他所に、「みらい」は新鋭イージス艦の名にふさわしい速度で岸を離れていく。それにつれて角松の思考も航海へと切り替わっていった。




出港から二日後。乗組員は各々の持ち場に着いている。「みらい」のCIC(戦闘情報センター)ではコンピューターによるシミュレーション対空戦闘訓練が行われていた。

「敵対艦ミサイル高速で接近。124度。距離10万。機影3確認」

水測長が叫ぶ。角松は艦橋からこれに無線で指示を与える。

「機関最大戦速。取り舵20度」

イージス艦「みらい」の心臓部がうねりをあげ、鋼鉄の塊を加速させていく。

「も、目標よりアクティブ・レーダー。完全にロック・オンされています」

水測員の男は緊張の余り声が震えていた。シミュレーションとはいえ室内の空気は張り詰めたもので、普段の陸の生活では味わえ無いものだろう。そんな姿を見かねて声を掛ける男がいた。砲雷長の菊池である。

「落ち着いてやれ」
「はっ」

水測員は深く呼吸をし、息を整えた。が、どうも喉が渇き緊張は解けない。

「VLS(垂直発射装置)発射用―意。イ、イルミネーター・リンク。発射5秒前…4…3…2…1、発射」

 CICの中の空気がにわかに和らいだ。砲雷長である菊地は、ここCICの総責任者である。事は順調に運び、菊地は部下にねぎらいの言葉を掛けた。
「よし、いいぞ」



 もちろん実際に敵艦より攻撃を受け、迎撃のためにミサイルが発射されたわけではない。すべてシミュレーションである。そして、さらにシミュレーションは続く。

 場面は「みらい」右舷に移る。ここには航海長の小栗と三名の部下が待機していた。そこにCICでのシミュレーションの結果が届き、ここでの監視訓練が開始される。

「一機命中、二機目標接近。たのんますよ、砲雷長」

 小栗が皮肉を混ぜ報告する。ミサイルを迎撃失敗した菊地に対する皮肉だが、無論二機のミサイル迎撃に失敗するのは訓練用に想定されたもので、菊池達CICメンバーの腕の問題では無い。これを受け艦橋から角松の指示が飛ぶ。

「CIWS(近接防御火器)迎撃用意。チャフ発射」
「敵ミサイル突入体勢」
「CIWSコントロール・オープン」

 「みらい」の高性能20mm多銃身機関砲が目標を補足する動きをする。イージス・システムにより一度認識さえすれば自動で目標を追尾可能である。

「敵ミサイル本艦右舷に命中。柳一曹、負傷」

 小栗が叫ぶ。ミサイルが着弾したものとしてシミュレーションを進める打ち合わせとなっていた。だが、負傷者「役」の柳はその事を知らされておらず、素っ頓狂な声で反応してしまった。

「はぁ?」

 これがまずかった。小栗は気が抜けた返事を訓練への意識がなってないと判断し、
「きさまだ―――っ」
と、柳の鉄帽の上からがこッと殴りつけ、哀れ柳一曹は気絶してしまった。
「看護長に連絡。応急処置急げ」



 さらに機関室では被弾時の浸水の対処―俗にダメコン(ダメージ・コントロール)と言う―の訓練が行われていた。浸水箇所に布地を当て、それを丸太で押し込み補強する。数名の乗組員が一斉に布を当てる。それを見ていた上官が叱責した。

「お前ら学校で何習ってやがった。当て方が逆だ」

あわてて当て直す。上官はさらに彼らを急かした。

「ぐずぐずしていたら海の底だぞ」

焦った一人が丸太で手をゴンと打ってしまった。





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最終更新日  2005.07.29 19:26:05
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