地中アンテナに替わるもの
地震学や地震地質学,測地学の進歩に伴い,長期的地震予知,中期的予知に関してはそれなりの進歩が見られる。しかし,短期的予知はその重要性にもかかわらず、まだ道は遠いようだ。各種観測網(地震,地殻変動等)が整備されつつあるにもかかわらず,短期予知に成功した例はない。現時点では,短期的地震予知は当面不可能であるという悲観的見解が支配的である。過去の地震発生により,ULF 電波が予知に有効である事は分かっている。しかし、大多数の地震予知は不可能であるという思い込みから,未だに手つかずの分野である。地震の1ヵ月程度,前になると蓄積されてきた圧力がある限界を超える。この際,岩石内に多数のクラックが発生する。そのとき、圧電効果などにより電荷生成が起こり,パルス状の電流が発生し,それらのパルス電流の複合により電波が放射される。初期にはクラックの数が著しい速さで生成され, 1 週間から 2 週間前後までの第 1 の磁界強度上昇が起こる。その後、クラックのサイズは大きくなるが,電波放射としては鎮静化する。そして,数日前よりはクラックのサイズの上昇が効き,第 2 の強度上昇となる。更に,本震数時間前に急上昇を示す。このパターンはその後のいくつかの地震に対しても同様であることが判明している。ULF電波の通常の受信範囲は,観測点より 100km 程度と考えられている。しかし,微弱電波の受信を可能とする信号受信解析が大がかりである。予想される地震のマグニチュードを現時点にて特定できないが,少なくとも ULF 波は大きな地震(マグニチュード6以上の)に対して感度がある。震央までの距離は100km程度問題なのはその受信設備である。地中電磁波受信の為に地下数百メートルの観測井戸を必要とするが,実際には掘れない。浅発かつ陸に近い地震ではより高い頻度で VLF 帯電磁場の異常が観測されている。岩石内のクラック発生は地中アンテナに強く受信され、空中アンテナでは受信できない場合が多く見つかっている。地震前に広い地域で応力が増大し,震央から離れた広い地域の地表面付近でも微小破壊などが発生して電磁波を放射するとラドン等による電離や荷電粒子が空中に放出され,地震前に空電を誘発する。落雷による地電流が岩盤の破壊を誘発して地震が発生する。また,前線の通過などで空電が増えるとともに,集中的な降雨が活断層帯に増水をもたらし,地震を誘発する。小型の地震HF 放射を伴う地震のマグニチュードは 4 以上で,観測点から感度がある震央までの距離は50km程度である。観測井戸も数十メートルと浅く実用的である。このHF帯の電磁気変動の発生に関しては,地震の前駆段階に放電現象が生ずるのではないかとしている。この原因は,岩石の破壊の際,放射性物質が放出・電離し,それに伴う放電が生じた為と考えられる。近年は HF,VHF 帯の電波雑音の測定が多くの機関にて始められている。ちなみに地中アンテナにこだわらない簡単で効果的な方法が有るとしたら・・磁石の共振を利用すればアンテナも不要になる。