自由の中央
12月。少し肌寒い本堂には、100人ほどの人が居る。密度は高くても、やっぱり外は真冬。雪がヒラヒラ降っている。お坊さんのお経の最中、俺はずっと魂の抜け殻だった。すぐ横に、基央が居ても、知夜ちゃんが居ても、大切な…友達ではない、家族でもない、大事な人は、冷たいお墓の中…。「…ぉ…ゅ…由ぉ…由央??」ハッと気がついた時には、みんなが本堂から出ようとしていた。「由央、大丈夫か?」「大丈夫かって…彼女の法事で元気でなんかいれないって。」「元気でいろなんて言ってないだろ。魂ぐらいここにいさせろよ。」「…わかんねぇ。出来るかどうか。」「じゃーせめて、泣きそうな顔するな。」「え…?」「由央、涙が溜まってるよ?」そっと頬に手を伸ばした。その時、涙はおちてきた。あー、俺泣けるんだ。涙も出ないぐらいツラくて、表情とか感情なんか、無くなりかけていたと思ってたのに。香音、今どこにいるんだよ。あの、長い髪を…その、透き通った瞳で…俺の前に来てはくれないだろうか…。