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今日はあいにくの雨。長い冬を潜り抜けてようやく花開いた北国の桜も、雨に濡れてうつむき散りはじめる。晴れた空の下に枝を伸ばし、誇らしげに咲く桜はもちろん美しくて好きだけど、こんな低く垂れ込めた灰色の雲の下に、ぼおっと灯った薄紅色の灯りのように咲いている桜もまた美しいなと思う。
桜の運命もいろいろだなあ。晴天の穏やかなお天気に恵まれて、長く人々に愛でられて散る桜もあれば、やっと咲いたかと思うと風雨にさらされてすぐに散ってしまう運命の桜もある。 そんなことを考えながら車を走らせていると、先日見た大河ドラマの再放送を思い出した。大河ドラマを見て泣くなんてことは、ほとんどなかった私だが、先日はうかつにも落涙してしまった。 それは主人公である樋口兼続(のちの直江兼続)の主人である上杉景勝と、その兄弟である上杉景虎が跡目相続をめぐって争った「御館の乱」で景虎が追い詰められて自害するという回。兄弟といっても二人はどちらも謙信の養子であり、景勝は謙信の姉の子で、景虎は北条氏からの人質として暮らしていた身である。 その二人が自分たちの気持とは別のところで動きはじめた戦のなかで傷つき、ふたたび心を通わせて手を取り合うために景虎の実子を景勝のもとに人質に出すが、出発してまもなく何者かに殺されてしまう。景勝の仕業と考えた景虎は再度戦を仕掛けるが敗北し、落ち延びた城の城主の謀反に遭って自害を余儀なくされる。 そこに兼続らがかけつけ、景勝の仕業ではないことを釈明し、再度生きるよう説得するが決意は固く妻(景勝の妹)とともに自害してしまう。最期に景勝への信頼を取り戻し、兼続らかけつけた家臣たちを労い感謝する眼差しを一人一人にむけて。 その最期を聞いて、景勝もまた涙を流す。養子同士であるがゆえに、心の底では手を取り合って謙信の目指した理想郷を築きたかったのかもしれない。景虎は幼少から人質としていろんな国を転々としていて、人を信じる心を失いかけていた。 だが、謙信はその身を思い、自分の養子にして自分の姪を娶らせ、自ら名乗っていた景虎を与えるほど大切にしていた存在だった。景虎もその気持に応えるべく、身を律して生きていたのだろう。そんな様々な想いと、目に見えない力によって敵対していく悲しさにやりきれない気持になった。 謙信は戦乱の世には珍しく「義」を重んじ、「利」を求めての戦はしなかったという。戦国時代、謙信の生き方はもしかしたら野心旺盛な武将たちには理解しがたいものだったのかもしれない。時代の風潮にそぐえぬ不器用な、まっすぐな男たちが確かに生きていたのだ。 いつの世にも、いろんな環境の中で様々な色の、様々な運命のもとに咲き、散っていく桜がある。雨に濡れても、風に吹き散らされても、やはり桜は美しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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