ひねもすのたり牧場日記

母は最近体調を崩しがちで、訪問看護をお願いしている。ご飯がなかなか食べられなくて、ここ数日点滴をしている。以前ならご飯がダメでもプリンとか柔らかいものなら大丈夫だったけど、それも一口、二口食べてあとは「いらない」という。


それでも味噌汁とかおかゆとか、いろいろ食べさせようとしてみるけど、なかなか難しい。そんなとき牧場主が知り合いの人が食べられなくなって弱ったときに、赤ちゃんの粉ミルクを溶かして飲んで快復した・・・という話を思い出して、「一度飲ませてみたら」と言ってくれた。


それでドラッグストアへ。


だけど恥ずかしながら、私はいまだ出産の経験もなければ、身近に赤ちゃんがいたこともここ数年ない。粉ミルクを買うことすら、未知の世界である。


そこで自分の持てるありったけの知識を総動員。えーとまず、赤ちゃんコーナーで、丸い缶に入ってて、缶には赤ちゃんのにっこり笑った顔がアップで載ってて、おっきく「粉ミルク」って書いてあるはずだ・・・。


・・・ない。缶がないもの。赤ちゃんのアップも・・・ないなあ。粉ミルクっても・・・。
コーンスターチとか、ビーンスタックとか書いてるプラスチックの容器なら並んでいる。


？？？　・・・あ、０歳とか９ヶ月からとか書いてる。んじゃあこれってこと？


と、よく見るとちっちゃく「コナミルク」の文字を発見。えー、今ってカンカラじゃないのか～、びっくりだなあ。こんなことも知らんのか、私。成人式二巡もしてるのに。


頭の中で中島みゆきの『世情』が流れ始めた。「♪世の中はい～つもかわ～っているからあ♪　がんこものだけが～、悲しい思いをするう～♪」


今時は赤ちゃんの写真も載ってないんだあ。へええ・・・。


ん？この同じ並びにある箱はなに？・・・え？








中身こんなのが入ってて、これもミルクなんだ。このシチューのルーみたいなのが・・・。へええ！！　これを溶かして作るんだあ。



頭の中で『世情』が大音量でクライマックスである。


シュフレヒコールの波～、通りすぎてゆく～♪　かわら～な～いゆ～めを～♪


そしてひからびた自分が地層の中から発掘された図が浮かんだ。


いやあ世の中は日々進歩してるんだなあ。私の総動員された知識はいったい何十年前のものなんだか・・・。早い人ならハイティーンでもう知ってるだろうに、とほほ・・・。


なんて思いながら、その『シチュールー』を買ってきた。



こうして私の中の『粉ミルク』文明も新たな曙を迎えた。


母には少しずつ溶かして飲ませてみようと思う。