テーマ:暮らしを楽しむ(388353)
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いくぶん涼しくはなったものの、まだまだ蒸し暑い風が吹いたりしている庭でふよふよと緑の葉っぱを揺らす「つりしのぶ」 最初に彼女(?)と出逢ったのは小学生のころ。今は亡き伯父が夏になるちょっと前に、うちの軒先にぶらさげてくれたのだった。まだ幼くて「夏といったらあさがおかひまわりでしょ」と思っていた私にとっては正直「?」な存在だった。 「これはしのぶというんだよ。こうして水をたっぷりやっておけばずっと生きてるから。」といいながら伯父は水をざーざーかける。毎朝だらだらとしたたるほどに水をもらって、しのぶちゃんは緑の葉っぱをそよそよ揺らす。 だけどしのぶちゃんは、おじぎ草みたいにおじぎしてみせるわけでもなく、あさがおみたいにきれいな花を咲かせるわけでもない。ざぶざぶ水をかけてもらって、緑の葉っぱを伸ばしているだけである。 そんな子供にとってはちょっと魅力に欠けるしのぶちゃんのことを解ってきたのは、大人になってからのことだった。テレビで銭形平次を見ていた私の目に、しのぶちゃんが飛び込んできた。 「ほう、つりしのぶかい。江戸も夏だねえ。」なんて台詞を言いながら、腕を組み、縁日で売られているしのぶをニコニコ見つめる平次親分。ええ?しのぶってそんな昔からあって、しかもお江戸の夏を彩る人気商品だったの。 そういえば伯父は歴史読本とかが大好きで、いろんなことを知ってたっけ。 今何気なく夏を彩り、見る人すべてを魅了してやまない打ち上げ花火も、実は飢饉や疫病で亡くなった人への供養として打ち上げられたものだったことも、伯父が教えてくれたのだった。 「目から涼む」なんていにしえから伝わる知恵と風流を、伯父は幼い私に教えたかったのかもしれない。 あれから30回くらいの夏を経て、伯父ちゃん、私はやっとしのぶちゃんの秘めてた風流をちょっとだけ解ってきた気がするよ。 風に揺れる緑の運ぶ涼やかさを、感じられるようになってきたよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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