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カテゴリ:医療の本
最近、医療サービスの限界を感じており、これから40才までの3年間をかけて、医療業界に関して集中的に研究することにした。
最初にたまたま手にした本は、真野俊樹氏の本である。 日本の医療はそんなに悪いのか? <読書メモ> ○今後の医療産業 ・混沌としている医療改革の中、今後の医療福祉施設の経営が困難な時代を迎えることは間違いない。 ・しかし、医療費全体のパイが膨らむ以上、産業は拡大しビジネスチャンスが生まれる。 ・米国でも雇用の受け皿として、1990年に医療産業従事者が200万人程度であったが、98年に600万人になった。 ○医師の収入(メディカル・プリンシパル社のデータ) ・卒後10年の内科(35~40歳)で年収約1500万円が基準で、人気のある地域では100万円下がるか、当直込の給与となり、人気の無い地区では当直料別となる場合が多い。また内科でも患者の多い消化器内科で上下内視鏡他、検査手技があると100万円アップになる。 ・外科は基準が約1600万円。当直料別、家賃補助等の手当てが充実し、避地になると1800万円以上。 ・産婦人科は他科と比べて高く、2000万円以上は確実。 ・アルバイト代 夜間当直:勤務病院では一晩1~2万円。よその病院では一晩2万5千円~8万円 昼間:時給1万円程度。 ○医学部のキャリアパスの単一性 ・日本の医師のキャリアの採集目標は医学部教授か大病院の院長 ・米国ほど専門医の地位が高くないので、医学博士と医師がはっきり区別されていないので、日本の医師の殆どが医学博士を取得する。 ・米国の医師は専門医でもPh.Dを持っていないケースが殆どでキャリアパスが多様 一般医:シニアレジデントでPCP(Primary Care Physician)の訓練を受けるかオフィスを持つ 専門医:専門医になるためのフェローにーなって専門訓練を受ける 基礎研究:基礎医学のPh.Dを取り、経営、政策に携わりたい場合 →MPH(Master of Public Health)、MHA(Master of Health Administration)、MBA(Master of Business Administration)、その分野のPh.Dを取る ○医師の需給問題 ・厚生省は1984年に「将来の医師需給に関する検討委員会」を発足、93年には「医師需給の見直し等に関する検討委員会」を発足させ、98年の提案では2020年までに医師の新規参入を10%程度削減する必要があると報告。 ・しかし、地域偏在と科目偏在は存在している。 ○米国の医療の大きな変化 ・1970年代からの病院の隆盛に伴う医療費の高騰→マネジドケアの出現→1983年DRG/PPSの導入、1993から1994年にかけてのクリントンリフォームの失敗、および1990年代前半から続くマネジドケアの隆盛→ここ数年に渡るマネジドケアへのバッシング ○マネジドケアの医療管理手法 1.診療報酬支払い方式の定額化 2.診療内容のモニタリング 3.医師・病院の選別 4.医療サービスへのアクセス制限 5.健康増進・予防医療の重視 ・DRG/PPS(Diagnostic Related Groups/Prospective Payment System)は1の中の1つにしかすぎない ○クリニカルパス ・米国ではDRG/PPSの導入に対して、医療機関側が優れた工程管理手法であるクリニカルパスで対抗 →管理会計制度と結びついて経営管理手法として広がった。 ・日本ではコメディカルを中心に、医療業務の標準化、在院日数短縮、質の担保の処方として広がった。つまり工程管理に優れた仕組みを経営的な観点とは無関係に取り入れた。 ○病院規模 ・大病院(一般には200床以上をいうが、医師の現場感覚では400床以上) ○医療サービスにおける情報の非対称 ・患者と医師に知識差がある為、医療行為を理解し確認することは不可能であり、行為を実行したかどうかを確認することも不可能 →解決策は患者側の知識を上げるしかない。 医療機関選択の為の良質な情報を多く入手する 米国では1999年に既にインターネット上での情報収集の4割が医学医療情報収集となっている(USA Today紙) ○医療情報の格付け ・欧米では第三者による評価・格付け機能が普及 ・Health on the Net Foundation(スイスのNPO) →提供された医療情報の専門家介在の有無をチェックし、パスしたサイトに認証を与える ・日本では医療情報は認証が行われていないので玉石混合の状態で、特に診療情報は公開度合いが少なく、健康管理上、重要な「個人の健康履歴」は一元管理できていない。 ○医療の広告 ・日経新聞社の全国の病院を対照とした調査では、広告規制の「原則自由化」について74.3%が賛成。 (日経新聞2001年10月27日付) ・健常者が欲しい医師情報:専門科目33.1%、手術経験29.8%、研究暦17.6%、年齢5.7%、学歴4.9%、性別3.5% (吉田秀雄財団の協力によるアンケート調査、1655人、回収率45.7%) ・情報提供の認識差(医療経済研究機構が関西の9民間病院で1958人に調査) 医師は情報を出していると認識しているが、患者は情報に満足していない。 内服薬の情報、手術や大きな検査に関する情報認識には差がないが、注射や点滴、入院費用に対しての認識差が大きかった。 ・米国では1998年に「患者の権利法」が成立、インターネットからの豊富な情報で武装したE-Patientが出現。 ・日本では、医師や病院情報の発信について、インターネットは広告規制の範囲外。 ・広告は一定の効果はあるが費用がかかる為、広告規制の緩和は諸刃の刃。広告が全面解禁となれば広告を打てる資金が必要になる。 →一般用医薬品のケースでは、広告費が原因で、医療用医薬品主体の製薬メーカーでは一般用医薬品部門の殆どが赤字で再編を余儀なくされている。 ○米国医療の仕組み ・マネジドケアの代表的な形態 1.HMO(Health Maintenance Organization):加入者6750万人(1999年) 加盟していない病院・医師からサービスを受けることができない。人頭払い等の規制の強い支払い方式。 2.PPO(Preferred Provider Organization):加入者9780万人(1999年) 出来高払い方式を採用し、一定の割引率もある。組織に参加していない病院・医師からのサービス提供に対しても償還を行う。 3.POS(Point of Service) HMOとPPOの折衷様式。参加医師によるゲートキーパー制度を厳密に施行しているが、ゲートキーパー受診後に参加意思以外のサービスを受けることが可能。 4.メディケア:65歳以上の高齢者と永久的な障害を持つ患者が対象、加入者4000万人 1983年からDRG/PPSを導入し、最近ではHMOに管理業務を委託している場合が多い 5.メディケイド:低所得者が対象で各州が管轄、加入者3000万人 6.その他の残りは、以前の米国型保健、加入者500万人。医療費は出来高払い ○病院組織 ・米国の病院には財務、人事といった独立の組織がる。特に財務については、米国の病院には株式会社として資金調達が可能であり、非営利病院でも病院債の発行が可能。 『日本の医療はそんなに悪いのか?』 真野俊樹著 薬事日報社 2002年2月12日第1刷発行 2000円 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年04月11日 18時28分01秒
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