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2006/08/15
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昆虫巡査シリーズ1作目である,

平野肇の「昆虫巡査-蜉蝣渓谷殺人事件-」(1993)

を読んだ。

読み始めてすぐにぐっと引き込まれ,中盤も快調に読み進み,後半から最後になって,「どうかなあ?」と感じさせられた作品だった。

釣りライターの矢張双が取材先の九州の小さな村の渓流でぼろ布のからまった人間の白骨を見つける。

それを報告した相手が向坊一美巡査で,主人公の「昆虫巡査」なのだが,180センチ近い身長でがっしりした体躯,丸顔に無精ひげ,勤務中であるにもかかわらず,ラガーシャツにジーンズ姿でプロレスラー風,実際挌闘に強くもある。
そんな外見に似合わず,昆虫の研究を一生の課題としているというギャップが楽しいし,祖父が警察署長であったのに,本人は巡査以上への昇進を望まないという「ギャップ」もキャラクターに魅力を添えている。

彼が死体の衣服についていた種々の虫の死骸から死亡推定時期を推理する場面は新鮮だったし,見つかった死体が,事故死→他殺→当初思われたのとは別人という流れも,ベタで想像がつきやすいものではあったが,おもしろかった。

村の人たち,特に繁じいやクルミ・カズ,だけでなく,警察関係者,水商売・暴力団関係者にいたるまで,「温かい目線」で書かれていて読みやすかった。

それにもかかわらず,後半から最後にかけて「???」となってしまったのは,語り手である矢張双がいったん東京に帰り,東京の部屋を引き払って,(半)永住のつもりで村に戻ってきたあたりからの展開についていけなかったからだ。

「昆虫巡査」をモデルに小説を書きたいという矢張の動機はわからなくはないし,彼をワトソン役とする今後(次作以降)の展開に必要なものであるかもしれないが,どうしても,「唐突」感がぬぐえない。

また,向坊が立ち向かった相手にしても,「三代の怨念」を晴らすにはあまりにもあっさりと片がつきすぎてしまったきらいがある。

彼が,若手の刑事や派出所巡査,さらには村の青年団を巻き込んで「救出作戦」を実行するのも,そういうむちゃな展開自体は嫌いではないのだが,この本の流れとしては強引すぎる気がした。

以上なぜか辛口だったが,全体の「におい」は好きだし,虫や魚についてのウンチクも楽しいし,ということで,続編を読んでみようという気にはなっている。

平野肇の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (平野肇)からごらんください。

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Last updated  2006/08/15 12:27:51 AM
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