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2007/06/13
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カテゴリ:読んだ本(時代)
「火怨」(日記は→こちらから)にコメントをいただいたayafkさんのオススメで,

熊谷達也の「荒蝦夷」(2004)

を読んだ。

780年に蝦夷の勢力が多賀城を一時陥落させるという事件が起きる。

「火怨」が780年の事件をきっかけにそれ以降阿弖流為(あてるい)が蝦夷を率いて大和朝廷軍と戦っていく話なのに対し,「荒蝦夷」は780年の事件で終わっている。
その意味では,作者が違い,したがって設定や視点に異なるものがあるにしても,「荒蝦夷」を「火怨」の前日譚として読んでも楽しい。

「火怨」では鮮麻呂と表記され,きっかけを作り影響力を残した人物ではあるが表には出てこなかった伊治公呰麻呂(あざまろ)が,「荒蝦夷」で阿弖流為の父親として,また,猛々しく知略に満ちた情け無用の「生きた」人物として描かれているのもうれしい。

阿弖流為とともに河内で処刑されることになる母礼(もれ)は,「火怨」では阿弖流為の妻の兄という設定だが,「荒蝦夷」では母の妹で恋仲になりそうなのか! 蝦夷の長老的存在で呰麻呂の後ろ盾にもなっている伊佐西古は「火怨」の最初のほうで引退した父親のほうだな! 「火怨」で,最初は「若造」と阿弖流為を馬鹿にしつつも,最後まで行動をともにすることになった諸絞はこんな登場の仕方をするのか! 坂上田村麻呂はどちらでも「かっこよく」かかれているなあ! など,「火怨」との違いや共通点を思い浮かべながら読んでいくのも楽しかった。

もちろん,以上はたまたま「火怨」を読んでいたからの比較で,道嶋の一族でありながら多賀城の近衛兵の隊長になっている若い道嶋御楯が,最初は呰麻呂,次に母礼に利用される苦悩と,それを助けてくれた自分より若い坂上田村麻呂に結局は利用されることになるであろう皮肉,非情を貫いて生きた呰麻呂が最後の最後に陥れられた謀略などなど……「荒蝦夷」単独でもじゅうぶんに読み応えがある。


熊谷達也の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (熊谷達也)からごらんください。

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Last updated  2007/06/13 08:44:03 PM
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