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2007/06/22
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カテゴリ:北森鴻

北森鴻の「冥府神(アヌビス)の産声」(1997)

を読んだ。

脳死者からの臓器移植という重い問題が扱われてる(現実にも,「冥府神の産声」が出版された(4月)のと同年の1997年7月に「臓器の移植に関する法律」が制定されて臓器移植が認められる形にはなったものの,「脳死」については未だに多くの議論がある)が,作品そのものは臓器移植に肯定的な「脳死臨調の答申」が出る直前の状況をモチーフにした「フィクション」として読み応えがある。

臓器移植の推進派の最右翼である帝都大学医学部の吉井原義教授が夜の新宿中央公園で殺される。

5年前,脳死臨調の「移植容認」の流れに一石を投じるために書いた論文のため吉井研究室を追われ,医療ライターになった相馬研一郎は,吉井の死をきっかけに久しぶりに訪れた大学で,自分とともに吉井の後継者候補であった九条昭彦が2年前に大学を去ったことを知らされる。

製薬会社の営業マン時尾の依頼や情報提供もあって吉井の事件を調べることになる相馬は,新宿駅西口の「段ボール村」で不思議な少女「トウト」と暮らす九条を見つけるが……

といった話だが,「トウト」の存在,プロローグの手紙の謎,章末で書体を変えて語られる行為の真相なども含めてなかなかおもしろかった。

北森作品の特徴ともいえるおいしい食べ物があまり見られなかったし,全体的にちょっと「硬い」感じもしたが,デビュー作「狂乱廿四孝」で鮎川賞をとった次の作品ということで,しかたないのかもしれない。

ところで,ミステリを読んで犯人を考える場合,ときに「消去法」を使うことがある。
大きく動いている登場人物たちの中に「犯人候補」が見つからないとき,早い段階に出た地味な人物を疑うという方法だが,今回はこれが「はまった!!」と思ったのだが大間違い(笑)

とりあえず,吉井殺しの犯人は有元だったが,「窓」こと丸尾殺しについては相馬と同じ誤解をしてしまい,最後の1件についてはまったく気づかなかった。

こうやって気持ちよく騙してくれるから,「また別の作品を読んでみよう」という気にさせられるのだ(笑)


北森鴻の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (北森鴻)からごらんください。

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Last updated  2007/06/22 12:49:08 AM
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