しばらく前に現代の怪談:「耳なし法一」を
ご紹介しましたが、今日は「法一」より恐ろしい
現代のお岩さんのお話です。
このところの暑さも、なぜかお盆の入りを迎えて
一段落。日が落ちると吹いてくる風に
涼しさを感じる夜が続いていた。 その一家は毎年お盆になると
夫の先祖のお墓参りのため、車で約1時間半の距離にある
田舎町に行くのが恒例であった。 ところが今年はいろいろな事情が重なって
墓参りに出かけられなくなった。 そう言えば6月にあった夫の亡父の命日にも
別の予定が入ってしまい、実家の仏壇にさえ
お参りに行くことがなかった。 気になりながらもついつい生きている者の
都合を優先してしまう一家であった。 丁度明日は盆の送り火、と言う晩になって
妻は右目に違和感を覚え始めた。 鏡で見てみたところ、一見異常はなさそうだった。 違和感は消えなかったが、見た目に異常のないことに
安心して妻は夫に目の事を
相談することはなかった。 翌日の朝、田舎に行っていれば
朝早くから「おしょうろ」さんと呼ばれる
ご先祖様があの世に帰る時に持たせる
おみやげとお弁当を持って、先頭の人の鳴らす
鐘の音を聞きながら川縁に揃って歩いていく時間に
妻は目覚めた。 確かに目覚めたのだが、何故か目が良く見えない。 どうしてなのか? 起き抜けで目が霞むことはよくあることだ、と
妻はしばらくベッドの上でぼんやりと壁を見つめていた。 数分後、妻はどうやら「右目」の視力だけが
落ちていることに気づく。 いや、視力が落ちていると言うより
物が見えにくい、と言った方が良いかもしれない。 妻は自分の目の異常が
何か深刻な病気の前兆かと心配になり
横に寝ていた夫を揺り起こす。 夫「ど、どうした~?」突然起こされた夫は驚いた。
妻「なんだか目が見えにくいの。どうしてだろう?」
夫は寝ぼけ眼をこすりながらも
妻の目の異常を確かめようとした。
すると、寝ぼけ眼で半開きだった夫の目が、
だんだんと恐怖で見開かれた・・・。
夫「な、なんだ、これは・・・?」
夫が見た妻の顔はどうなっていたのか?
「自分で鏡を見た方が良いぞ」と妻に告げる夫。
一体自分の目はどうなってしまったのか・・・?
嫌な予感が頭をよぎる。 それでもこのままにはしておけない、と妻は思いきって
鏡の前に立った・・・。
次の瞬間、
「ああぁ!こ、これは一体何???」
妻の右目は見事に腫れ上がり、
瞼は半開き状態だったのだ。 まさにこれを「お岩さん」と言わずして、何と言おう。 内科医の夫は冷静に妻に告げた。 「これはメバチコやな!!!」と・・・。(>_<) メバチコとは関西弁で「ものもらい」、
医学的に言うと「麦粒腫」のことである。 でも、この異常な「腫れ」はタダのメバチコではあるまい、と
妻は思った。 これはきっとご先祖様のお墓参りをサボった「バツ」だ、と。 しかし、妻には疑問が残った。 何故、直接の末裔である夫に「バツ」が下らず、
妻である自分に下るのか?・・・と。 異常に腫れた瞼の為
、視界不良状態で家事をこなす妻は
恐るべしご先祖様のお怒りに、来年こそは
必ず「お墓参り」に行こう、と心に思うのであった。 ご先祖様、ごめんなさい!<(_ _)>ペコリ
|