フォルツァ モルドーロ vol.4
船長の宝物『ありのままに問い、ありのままに応えるのが自然に対する、せめてもの礼儀ではないのか。』モルドーロは、ある男に伝えた言葉を想いだしていた。二十数年前、島で漁師をしていたころ嵐にみまわれ寸でのところを海賊船に助けられた。それから二年すっかり海賊家業が板についたモルドーロへ船長ペケソが、こう切り出す。『世界の果て』 を一緒に観に行かないか。地球が丸いのは周知の時代であるしかし、何事もじぶんの眼で確かめないと気がすまない性分のペケソは大真面目で語る。モルドーロは幾らか自分と似た性格の持ち主である彼に対し一刻、間をおいてこう 切り出す『ペケソ、眼に見えているものだけが全てではないよ。』『この星が円く繋がっていることはしぜんと体が感じ取っている筈じゃないのかい。』『ましてや、海の上』『ありのままに問い、ありのままに応えるのが自然に対する、せめてもの礼儀ではないのかね。』『「世界の果て」なんて観るものじゃないよ。』低く、やさしい声がペケソを諭す(さとす)しばらくしてペケソは、昇り始めた朝日をしずかに見据えながらおおつぶの涙をながしていた。モルドーロは、朝日に輝く宝石のようなペケソの涙をしばらく黙って見ていることにした。 @ピッカ案の定海賊仲間から『泣き虫ペケちゃん』という新しいあだ名を付けられることになる