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テーマ:連載戯曲(36)
カテゴリ:哀歌
守 ぼーっとしている
圭介 おーい! 守 ・・・ 圭介 おい!聞いてるのか? 守 ん?ああ・・・。 圭介 仕事、うまく行ってないのか? 守 ・・・いや、そう言う訳じゃないんだが・・・ 圭介 らしくねえよ。言いにくいのは分かるけどさあ・・・。 守 ・・・ああ、そうだな。・・・俺が悪かった。 圭介 いいよ、別に。で、どうしたんだよ。 守 うん・・・いや順調だったんだよ。本当に。あれから色々あったけど本当に順調だった。最初はさ、普通に出版社に勤めて上がってきた原稿チェックして直してみたいなことばっかりで自分で書くことなんてぜんぜん出来なかったんだけど、だんだんと記事も任せてもらえるようになってきて、まあ、記事ったってどこそこのラーメンは旨いとか、今お勧めのデートスポットは・・・みたいなのばかりだったけど、俺の書いた記事見て読んだ人から感想が届いたりしたんだぞ。発行部数も少ない、こう言っちゃなんだけどしょぼい雑誌だよ。それなのにさ。 圭介 凄いじゃないかよ。 守 でも・・・ 圭介 ・・・・ 守 でもな・・・ 圭介 どうしたんだよ。 守 実は・・・ 圭介 どした? 守 何度か口を開こうとするが挫折し、何度目かの挑戦の後 守 ・・・・・・・・会社が・・・潰れた。 圭介 え? 守 たたみかけるように早口で 守 いや~、ほら俺って宵越しの銭は持たない主義じゃん?貯金とかも全く無くてさ。まあ、保険は下りてるんだけど、俺、基本給は安かったもんだから全然成り立たなくて・・・。 圭介 そっか・・・で? 守 え、いや・・あの・・・・・しばらくですね、俺をここに・・・ 圭介 ああ、いいよ。別に。 守 ええ!まだ最後まで言ってないのに! 圭介 家賃払えないんだろ?いいよ、別に。落ち着くまでいれば。 守 ・・・ありがとう。 圭介 いいって別に。幸い彼女がいるってわけでもないし。 守 いないの? 圭介 いないって。 守 ああ、それだけが心配だったんだよ。 圭介 それだけなのか?他にもあるだろうがよ。俺が4畳半のアパートに住んでたらとか・・ 守 え?あ、ああ、それなら大丈夫。俺、場所取らないから。 圭介 実は俺も家がないとか・・・ 守 心強い味方だ。 圭介 101匹のワンちゃんと暮らしてるとか・・・ 守 それなら尚更、俺1人増えたところでどうってコトないだろ? 圭介 ま、そうだな。 守 ああ、そうだ。 圭介 守さあ、それならそうと早く言えよ!なんかもっと別のこと想像しちゃったじゃねえかよ! 守 別のことってなんだ? 圭介 例えば、借金があるから金を貸してくれとかさあ。 守 借金のほうが良くないか? 圭介 いや~貸せる額ならいいけど、俺だって貯金ないし・・。それか、実は病気でもう長くは生きられないとかさあ。 守 ちょっと動揺し、ぎこちなく笑う 守 そ、そんな馬鹿な。 圭介 そうなんだけどさあ。確かに守は殺しても死なないと思うけども、そういう想像を一杯しちゃったってコトだよ! 守 悪かった。 守 雰囲気を変えるように明るく 守 ・・・で、どのくらい彼女いないんだ? 圭介 いいじゃねえかよ。別に。 守 いいじゃねえかよ、教えてくれたって。 圭介 うるさいなあ、ずっとだよ。 守 だから、ずっとがどのくらいかを聞いてるんだよ。 圭介 ずっとはずっとだよ!これ以上聞くなら出て行ってもらう。 守 もう聞かない!興味ない!全くない! 圭介 ならいいが・・ま、今日はとことん飲もう! 守 俺はいいけど圭介、明日仕事じゃないのか? 圭介 俺?俺は今フリーだから。明日は午後から打ち合わせがあるだけで、あとは特に何もない・・・いや、ないわけではないけど、急ぎじゃない。 守 フリー!?なんだ!その悠々自適な響きは! 圭介 いや、そんな良いもんじゃないよ。仕事無いときは全くないし・・・80%以上が運だね。 守 そんなもんか? 圭介 ああ、俺は小説を書く時間が欲しいから、フリーをやってる様なもんだから。 守 やっぱり書くのか? 圭介 まあ、夢ですから。 守 夢か・・・いいな。 圭介 なんだよ、守だってあるんだろ? 守 急に真面目な顔になり 守 そうだな・・・いや、特にないかな。普通に生きていければ。・・・・爺さんまで。 圭介 爺さんか・・・。そりゃ夢が叶ったのか分かるまで相当かかるな。 守 ちょっと笑って 守 ・・・だな。 暗転 【挿入歌:truth of silence】 つづく やる気変動アイテム使用中!!クリック1つでランキング上昇!? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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