人間関係がわずらわしいから独房に入りたい--こんな動機から近年、わざと規律違反を犯す受刑者が青森刑務所(青森市)で増えている。関係者によると全国的な傾向とみられ、作業をなまける「怠役」で懲罰を受けた全国の受刑者は、最近5年間で3倍近くに増えている。
青森刑務所は収容定員702人。独房と雑居房(定員6)はほぼ同数で、刑期8年未満の累犯受刑者を収容している。
同刑務所関係者によると「ある日突然『仕事をしたくない』と刑務作業を拒否し、懲罰として独房に入りたがる人が4~5年前から目立ってきた。多い時には1週間に数人はいる印象」という。現状では独房が足りないため、独房内に簡易ベッドを押し込み、2人を収容してしのいでいるのが実情だ。
一般的に、規律違反すれば刑期満了前に仮釈放される可能性は低くなる。独房に入れば面会が禁止され、新聞や雑誌も読めなくなる。同刑務所の柳沼秀昭・首席矯正処遇官(企画担当)は「刑務作業の報奨金も減るのに『それでもいい』と半年も独房に居座る人もいる」と証言する。
独房入り希望者は雑居房での人間関係に疲れている人が多く、年齢的な特徴はないという。同刑務所関係者は「そもそも受刑者には人間関係を持つのが苦手な人が多いが、近年はプライバシーに関する権利意識が強まってきたのかもしれない」と分析している。
独房入り希望者の増加を裏付ける統計はない。しかし法務省がまとめた「懲罰事犯別懲罰人員」によると「怠役」で懲罰を受けた受刑者は、01年の4798人(総数比13.9%)から06年の1万3236人(同22.1%)に急増していた。
法務省矯正局は「人が増えれば受刑者のストレスも当然増える。独りでいたいという人が増えるのは推認できる」と、背景に刑務所の過剰収容を指摘する。同局によると、全国の刑務所の収容率(今年7月末、速報値)は103.7%で、6人部屋の雑居房に8人を収容するなどしている。
5月、日本で初めて民間資金導入で開所した刑務所「美祢(みね)社会復帰促進センター」(山口県美祢市・定員1000人)は人間関係のストレスに配慮し、受刑者の9割以上が「単独室」で生活できる。龍谷大学の浜井浩一教授(犯罪学)は「(既存刑務所も)独房を増設したり、カウンセリングを積極的に行うなど、受刑者のストレスを緩和させる施策が必要だ」と話している。【後藤豪】
刑務所のあり方も変化の時なのかもしれません。海外では刑務所内で結婚して子供を持つ方もいるそうです。どうすれば社会復帰の手助けが出来るのか……。
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