美容師の憂鬱―それでもお前はカリスマ志望か―
08/22の日記にあるように、私はパーマに失敗しました。しかし、数日経つと「パーマが落ち易い」という髪質が幸いし、随分マシになったものです。心の平安は余裕を生み出し、加害者の心情を慮るまでになりました。加害者と言っている時点でかなり余裕のないようにも見えますが、前の日記では「お前の血は何色だ」と言っていたくらいなので・・・。美容師というのは大変な職業だと思います。一時期、カリスマ美容師などという間抜けな脚光の浴び方をしたために勘違いされてしまいましたが、基本的には地味な重労働です。休憩時間以外は一日中立ちっ放しで、規則正しい時間に食事を取ることもできません。水と薬品を多く使うために手が荒れることも多いそうです。元ちとせは余りに薬品まけし過ぎたために、一度美容師を諦め郷里に帰った過去があるとか。さらには休日が一般の人と合わず、友人・恋人と疎遠になったり、一人前になるまでには就職後も遅くまで技術訓練を受けねばならない等、時間的な制約もあります。とまあ、ちょっと挙げてみただけで中々大変そうですが、私が何より大変だと感じるのはやはりお客への対応でしょう。美容師の仕事はただ髪を切るだけではありません。髪を切る時には当然、お客と接します。どれだけ腕が良くても、その時にゴルゴ13のような無言・無表情だとどうでしょうか?お客は緊張のあまり言いたいことも言えず、挙句の果てにはカット代金をスイス銀行の秘密口座に振り込みかねません。多くの客は高い技術と同時にリラクゼーション等の付加価値を求めて、わざわざ高額な美容室に出向くのです。ヴィダル・サ・スーンが自社ブランドのシャンプーや整髪料を売り出しサ・スーン・クオリティとかほざいていますが、ユニットバスで水漏れを気にしながら背中丸めて頭洗って、何がサ・スーン・クオリティだ、ということです。(上記の記述は私の体験からくるヒガミとは一切、断じて、決して、関係ありません)そういうわけですから、必然的に接客態度やカット中のお客との対話も大きなウェイトを締めるわけです。しかし、お客と一口に言っても年代・性別・職業・趣味嗜好・性格は様々です。私のような扱い易いお客ばかりではないでしょう。私など、仮に失敗してもブログで人でなしと書かれるくらいのものです。色々美容師さんの苦労話をカットされながら聞きだすのですが、態度が気に入らないと怒鳴り込まれたり、話題についてこられないと説教されたりすることもあるそうです。態度が気に入らないというのは本当に美容師側に何か失礼な態度があったのか、単なる言いがかりかは分かりませんが、とにかくまずは接客の基本を学んで対応するしかないでしょう。一番困るのは話題の引き出しをどうやって増やすかということだと思います。まずはスポーツや新聞の社会欄に載っているような話題が無難でしょうか。今なら楽なものですね。「オリンピック見てますか?」の一言で会話の花は咲きまくること必至です。他に季節ごとのイベントの予定を聞いてみるという選択肢が多用されます。例えば「もうすぐGWですけど、どこか行くんですか?」土曜日の昼間だと「これから、どこか遊びに行くんですか?」果ては「今年のクリスマスどうするんですか」など。これらは場合によっては客が涙ぐむ場合があるので、あまり軽率に使わないでいただきたいものです。特に最後の。私などは「この後の予定!?今日はこのためだけにわざわざ出てきたんだよ!後は家帰ってマンガ読んで飯食って屁こいて寝るだけじゃい!!」と漢(おとこ)らしく言おうと思いつつも「いや、まあ適当にその辺をブラブラして・・・」と中途半端に答えて、その夜枕を濡らすのです。しかし、中には客から話題をふってくる場合もあり、その時こそ真の実力が試されます。政治経済などは案外多いらしく、そのために勉強することも多いそうですが、到底カバーできない範囲の話題だったりそれ以外の要素で会話が成立しない場合どうするんでしょうか。例えばお客がテレパシストまたはチャネラーだった場合。お客は当然美容師に対して念話で話しかけてくるわけですが、それを聞き(?)逃せば「無視された」と怒りかねません。インドの山奥で悟りを開くか、ニュータイプとして覚醒するのを待つしかありません。例えば九州で就職してしまった場合。当然お客は九州弁を使ってくるでしょう。九州弁は、特に南に行けば行くほど解読不能です。九州の大学を受験した時、隣りの人が友達同士で何を話しているのか本気で分からなかったことがあります。鹿児島出身の友達は「大阪来ても方言使ったらええやん」と言う私に対して、少し寂しげに笑いながら「本気で鹿児島弁を使うときっと誰も分からないから」と私には到底真似できないイントネーションで答えます。インドの山奥で悟りを開くか、ニュータイプとして覚醒するのを待つしかありません。例えばお客がダムマニアだった場合。そんな奴は居ないだろうと思うかもしれませんが、ダムマニアは実在します。しかも相当数。ここをごらん下さい。googleのページランクもかなり高く、HIT数も相当なものです。かのタモリ倶楽部でもダムマニアは特集されKen(L'Arc~en~Ciel), 松尾貴史, 加藤明日美, 竹村公太郎(元国土交通省河川局長) という豪華メンバーでダムの奥深さ、味わい深さについて熱く語っていました。(他にもジャンクションマニアなど有り)インドの山奥で悟りを開いてもニュータイプとして覚醒しても無理です。こう考えると一人前の美容師への道のりはかなり厳しく、「美容師にならなくてよかった」としみじみ思うのです。人気blogランキングに参加してます。画材屋本舗は今何位?ご協力お願いします。あとお手すきでしたら上の三つもポチッと押してやってください。