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カテゴリ:テクノロジートピックス
●51もあるAF測距点は使いこなせるのか?
D3とD300で初めて搭載された機能でその真価が未知数なのが、「51点AF」と、1005分割RGBセンサーを活用した「シーン認識システム」、階調補正機能の「アクティブD-ライティング」だろう。 銀塩カメラのキヤノン「EOS-1v」は45点のAF測距点を備えるが、D3とD300はそれを超える51点のAF測距点を自由に選んでAF撮影が行える。「いくら何でも51点は多すぎでは?」「測距点を選択するのが面倒じゃないのか?」と筆者も考えていたのだが、それは杞憂にすぎなかった。カメラ背面のマルチセレクターで、思ったとおりに素早く測距点を移動して、任意の位置にピタリと止めることができた。 51点も測距点があるとは思えないほど、スムーズに任意の1点にAFを合わせられる。しかも、ポートレート撮影では、かなり思い切った構図に変えても、必ずほしい位置に測距点が来る。51点という測距点の多さ、しかも、それが画面内を広くカバーしているからこそ可能になったAFの自由度は、一度体験してしまうと、もう後戻りはできない感じだ。「測距点の選択が面倒なら、11点AFに切り替えて使おう」と事前に考えていたが、まったくそういう気にはならなかった。 ●格段に進歩したオートホワイトバランス 「1005分割RGBセンサー」は、D200にも搭載されている。ただこれまでは、適正な露出を導き出すための測光の役割を果たすセンサーだった。しかし、どうやらニコンは、このセンサーから得られる情報をもっと積極的に活用する方法について、開発を続けていたようだ。「シーン認識システム」は、その成果のひとつと言えるだろう。1005分割RGBセンサーからの測光情報、色分布の情報などを利用して、被写体のパターンをカメラが判別。撮影シーンを自動認識して、露出(AE)、AF、オートホワイトバランス(AWB)を最適に制御する「シーン認識システム」を完成させたのである。 試用した範囲では、AE、AWBとも、その精度が確実に向上していると感じられた。カメラ任せでまったく不安や不満を覚えることはなかった。D200との比較では、特にAWBが格段に進歩した印象を受けた。逆光で緑の草木に囲まれた屋外のポートレートという、ふつうなら色かぶりしやすい条件でも、かなり正確に肌色を再現できていたのには正直驚いてしまった。 ●仮にモデルが動いても、捉えた瞳を外さない「3D-トラッキング」 51点のAFと、このシーン認識システムを駆使して実現しているのが、D300の「3D-トラッキング」機能である。ピントを合わせた対象が移動しても、AF測距点が自動でその対象を追い続けてくれる、という機能だ。従来の動態予測+AFロックオン機能にシーン認識が加わって、さらに進化を遂げたもの。 ポートレート撮影では、人物の瞳にピントを合わせるのが鉄則。多点AFのカメラでは、構図を決めてからAF測距点を手動で動かして瞳の位置に合わせるのが常道だ。それが「3D-トラッキング」を使えば、最初に瞳にピントを合わせれば、あとは構図を変えても、被写体となる人物が動いても、AF測距点が自動的に瞳の位置を追い続けてくれる機能だ。 しかし、初めて搭載された機能だけに、まだ完璧とはいかないようだ。ポートレート撮影で試してみたが、速い動きにはAF測距点の追従が遅れてしまうケースがあったし、瞳の位置を見失ってしまうことも何度かあった。どうやら等速移動するケースには強いが、方向も速さも不規則に動きを変えるようなケースはやや不得手のようだ。高速に移動する被写体にも追従できるようになれば非常に便利な機能だ。今後のブラッシュアップに期待したい。 ●撮って出しでOK、満足のいくJPEG画像 「アクティブD-ライティング」は、撮影画像の極端にアンダーな部分だけを自動的に補正してくれる機能である。ニコンのコンパクトデジカメや、D80、D40、D40x、RAW現像ソフトのCaptureNXなどに搭載されている「D-ライティング」が多少進化した程度のものだろう、とタカを括っていたのだが、どうやら従来のD-ライティングとは根本的に処理過程が違っているようだ。 シャドー部の持ち上げ方が、実に自然になっているのである。中間部やハイライト部には影響を与えず、うまくシャドー部だけを拾ってくれている。トーンカーブやヒストグラムを操作するような感じだった、これまでのD-ライティングと違い、アクティブD-ライティングは、ピクセル単位で輝度を判別して効果を適用しているような印象がある。撮影後にCaptureNXでD-ライティングを施すよりも、確実に自然な仕上がりが得られることは間違いない。筆者としては自信を持って、「D300では、アクティブD-ライティングは『弱』でオンにしたまま」を基本設定にして問題なさそうだ。 JPEG撮って出しでの、D300の撮影画像の傾向だが、これも非常にバランスがとれている。D200は、よく言えば素材感のある画像、悪く言えばフラットで眠い印象の画像だと思う。一方、D80やD40/40xで撮ったJPEG画像は、かなりメリハリが強くてハデな印象だ。コンパクトデジカメからステップアップした人や、とくに画像補正などしないでプリントして楽しみたい人向きの画像だと思う。 D300は、ちょうどその中間にあるような感じ。自然な発色のリバーサルフィルムに近いようなJPEG画像だ。そのままなら、プロビア100FやエクタクロームE100G、必要なら少し補正を加えてベルビア調やE100VS調にもできる、といった雰囲気を持ち合わせている。これまでニコンのデジタル一眼レフのJPEG画像に何となく不満を感じていたような人でも(筆者もそうなのだが)、D300のJPEG画像なら、かなり満足できるのではないかと思う。 ●高感度ノイズは、D200よりも断然優秀 最後に、高感度撮影時のノイズについても触れておきたい。D300では、標準感度がISO200になり、最高感度はISO3200(さらに1段増感してISO6400まで設定可能)となった。D200の標準感度はISO100なので、単純に考えても1段分は高感度撮影に強くなっているはずだが、画素数アップがそれにどう影響しているかが気になるところ。 高感度撮影時のノイズは、被写体や撮影条件、また、どの程度までを実用域と考えるかで判断は異なってくる。あくまで筆者の印象を語らせてもらえば、D300の高感度ノイズの少なさは、D200やD80以上だが、600万画素のD40にはわずかに及ばない、といったところだろうか。 D40は、ニコンの歴代デジタル一眼レフの中でも突出して高感度ノイズが少ないことで知られるが、D300は、D40の倍の画素数(それだけ画素ピッチが狭い)にも関わらず、非常に健闘していると思う。ポートレート撮影では、ISO400ではまったく問題なし、ISO800でもそれほど気にならなかった。筆者がD200で行うポートレート撮影では、ISO200までが限界で、ISO400は緊急避難と割り切るほかなかったことを考えると、D300の高感度は「かなり使える」と感じた。 ●自信をもって合格点を出せる D300について、ほかにも試用してみて実感できたことなど、語りたいことは山ほどあるのだが、これ以上は際限がなくなりそうなので、結論だけを述べておこう。正直なところ、筆者は、「DXフォーマットのデジタル一眼レフはもういいだろう。これからの主流は、やはりFXフォーマットのD3のほうだ」と考えていた。 しかし、D300を使えば使うほど、その考えは誤りだとわかった。極めて上質なファインダーと液晶モニタ、ぴたりと決まるAF・AE・AWBの性能、使用時のあらゆるフィーリング、そして撮影画像のクオリティ。D300は、どれをとっても合格点の「いいカメラ」だと感じた。まさに「D300は、D200の衣をまとった、D2Xsの後継機」なのだということも強く感じた。発売が楽しみだ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年10月19日 13時55分08秒
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