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カテゴリ:楽園に吼える豹
「は~~、こんなレストラン、前を通ることも一生ないと思ってたけどな」
レストランの高級感あふれる外観を目にしつつ、レオンは感心したように言った。 「けど、何だってあたしらまで………」 店先で待機を申し渡されたアスカは不満たらたらである。 上着を着ているとはいえ、今日は冷える。風邪でもひいたらどうしてくれるのだ。 「だいたい、デートにGSとか秘書を連れてくんなよな」 ぶつくさと恨みがましい不満は幾度となく繰り返される。 横にいたユキヒロは苦笑している。 「な~に言ってんだアスカ。デートなんかじゃないに決まってるだろ」 訳知り顔でレオンが言い切るものだから、アスカは怪訝な顔になった。 「何でそう言い切れるんだよ」 「俺らを連れて来たのがその証拠だ。公私混同の甚だしい“主人(マスター)”ならともかく、あの二人にはGSを私物化しないだけの良識はある」 つまり、自分のデートにGSを連れてくるような馬鹿な真似はしない。 そう言われてみればそうだ、とアスカも納得はした。 何せ彼女は、バカンスにGSを同行させ、挙句荷物持ちまでさせる“主人(マスター)”を持った経験があるものだから、ピンとこなかったのである。 「…じゃあ、仕事ですか」 ユキヒロ・カガリが口を開いた。 「だろうな。誰かと秘密裏に会うんだろ、きっと。何の相談かは知らないけどな」 その時、店先に一台の黒塗りの高級車が止まった。 頑健な体つきをしたボディーガード数人に囲まれて、長身の男がこちらへ向かってくる。 ブラウンの髪に、薄茶色の瞳。 若く、顔はそれなりに整っていたが、神経質そうな容貌は他者を容易に寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。 「―――!!」 その男がアスカたちの目の前を通り過ぎた時、アスカは思わず息をのんだ。 そして素早く視線を下に向ける。 彼と視線を合わせないための苦肉の策だった。 目くらい合ってもどうということもないのだが、今はそれさえも気まずくて出来ない。 一行が完全に店の中に姿を消したのを見計らって、漸くアスカは顔を上げた。 「…どうかしたか?」 アスカの異変をいち早く察知したレオンは、さりげなく尋ねる。 「あ、いや」 別に、なんでもない。返ってきた答えはそれだけだった。 (何でもないわけないだろうが) それ以上は問い詰めなかったレオンだが、アスカが嘘をついていることは明らかだった。 まるで騙せていない。 その証拠にユキヒロも気遣わしげな視線を投げかけている。 他人と視線を合わせることを避けるなんて、およそ彼女らしくない振る舞いである。 それに、今通った男。レオンは彼にどことなく見覚えがあった。 (誰だったかな……) つづく 人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*^▽^*) ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年11月24日 14時40分41秒
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