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カテゴリ:楽園に吼える豹
「また、顔合わせることになっちまったなぁ」
その口調とは裏腹に、叔父が現在の状況に危機感を抱いていることに、藤堂は気付いていた。 度重なるGSの不祥事。 彼らの中に宿る猛獣の遺伝子が犯罪の契機となっているのではないかという憶測が飛び交い、GS制度は機能不全に陥っている。 一連の事件を受けて、GS廃止派のマクレラン陣営からだけでなく、GS制度を推し進めてきたサーディーン派からもGS制度存続に疑問の声が上がり始めていた。 混乱の中決まったことといえば、結局しばらくの間GS全員を自宅謹慎処分とするということだけだった。 よからぬ行動を起こさぬよう、GSはランクを問わず武器を取り上げられた。 反発は当然ながらあったようだが、武装した警官数十名に囲まれ勧告されたのでは要求をのむほかなかったのだろう。 その結果、藤堂の警護にはゴウシ・草島がつくことになった。 「全く身勝手な連中ばっかりだな。あいつらのこと、これからどうするつもりでいるんだか」 ゴウシはアスカ、レオン、ユキヒロが、GSとして存在するよう強いられたことで、少なからず彼らの人生が狂わされたことを知っている。 無責任な大衆は、また彼らを排除しようというのか。 手の平を返したようにGSを疫病神のように扱う人々を身勝手だと思うのは藤堂も同じだったが、GSは絶対に罪を犯さないと言い切るだけの根拠は持っていなかった。 人間である以上、彼らだって犯罪を犯す可能性はある。 が、藤堂は一連の事件に疑問を抱いていた。 GSが犯罪を起こしたことについては別に驚かない。 立て続けに犯罪に走る者が出たとしても、「そういうこともある」と言わざるをえないからだ。 だが引っかかるのは、彼らのことごとくが、自身が凶行に及んだことをまるで覚えていないと言っていることだ。 これは一体何を意味するのだろう。 猛獣としての本性が姿を現し、その時だけ記憶をなくしているのだと言われればそれまでだが、なぜ今になってその本性が姿を現すのだ? 「藤堂元帥、入りますよ」 ノックの音と共に、女性の声が聞こえた。既に聞き知った声だ。 「どうぞ、京極副長官」 藤堂の返事を待って、声の主は部屋の中に入ってきた。 ユイ・京極はいつもクールな表情だが、今日の彼女はどこか切迫した雰囲気を醸し出していた。 「あ、じゃあ俺は…」 何か緊急事態が起こったのを敏感に察知したゴウシは、自分から席をはずそうとする。 「いいえ、その必要はありません。どうせすぐに分かることですから」 冷静さを保とうとしつつも、驚愕と焦燥の色が伺える。 この鉄のような女性をうろたえさせるほどの事態とは何だ。 「またガーディアン・ソルジャーが犯罪を起こしました。今度の犠牲者は…国防長官です」 「な!!?」 彼女が重苦しい声で伝えたのは、藤堂でさえ驚きを隠せない事実だった。 「よって、今から私が国防長官の臨時代行を務めます。 あなたは副長官に就任ということになりますので、そのつもりで」 (どういうことだ!? こんな立て続けに…!) これは偶然なのなのだろうか。 言い知れぬ不吉な予感に、藤堂の心はわなないた。 つづく 人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*´∇`*) ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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