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カテゴリ:楽園に吼える豹
【これまでのあらすじ】
GSとその“主人(マスター)”を狙う事件が相次ぐ中、レオンはユキヒロとともに捜査を開始する。 『Blue Rose』で張り込みを続けていたところ、レオンは不審な女、リズ・ターナーに声をかけられる。 彼女はレオンを害そうと近づいてきたアドバンスト・チルドレンだった。 レオンの姿がないことに気づいたユキヒロは慌てて後を追うが、同じくアドバンスト・チルドレンであるイルファンがその前に立ちはだかる。 ユキヒロとは比較にならないパワーを持つ彼に対し、ユキヒロは苦戦を強いられるが・・・!? 「ぐっ!!」 またしてもユキヒロの体は、コンクリートの壁に叩きつけられた。 全身に激痛が走る。 満足に息ができず、何度も咳き込んだ。 イルファン・アンドロポフは余裕しゃくしゃくといった表情で彼を見ている。 いつの間にか口の端が切れていた。ユキヒロはじわりと滲む血を手の甲で拭う。 それだけ絶望的な状況に陥っても、なぜかユキヒロの両目には強い光が宿っていた。 それがイルファンには気に食わない。 彼は、完璧に自分に屈服した相手をじわじわと痛めつけるのを好むのだ。 どこから見ても格下の相手に睨み付けられるなど、彼にとっては屈辱以外の何物でもなかった。 「お前まさか、俺が適当に痛めつけたら満足して帰るとでも思ってんじゃねえだろうな? 死ぬんだぞ、お前は。今ここで」 何度殴っても立ち向かってくるユキヒロに、イルファンはイラつき始めていた。基本的に短気なのだ。 ユキヒロは荒い呼吸を繰り返しながら、敵を強く見つめている。 「……申し訳ありませんが、それだけは絶対に嫌です。 僕だけならともかく、レオンを置き去りにするわけにはいきませんから」 言い終わるや否や、彼は素早くナイフを取り出し、そのままの勢いで投げつけた。 が、ナイフはイルファンの右二十センチのところを素通りしていった。 避けられたのだ。しかも。 (こいつバカじゃねえか!? 柄の部分を先にして投げやがった!) あれではたとえイルファンにヒットしたとしても、ダメージなど与えられない。 いや、よしんば刃がイルファンの体に当たったとしても、彼の鋼鉄のボディをナイフが突き通るかは微妙なところだった。 だが外れたあとも、ユキヒロの目線は直線を描くナイフからそれない。 投げられたナイフの柄は、ユキヒロが狙った的に見事に命中した。 その瞬間、けたたましいサイレンの音が『Blue Rose』全体に響き渡る。 ―――非常ベル。 イルファンが気付いた瞬間、突然体が上方からものすごい力で押さえつけられた。 支えようとする間もなく、巨体が床に押し付けられる。 突然のことに焦りながらも、満足に動かせない体をよじって視線を上に向けると、イルファンは驚愕した。 「ぼ、防火シャッターだと……!?」 起き上がろうともがいてみるが、分厚いシャッターはびくともしない。 アドバンスト・チルドレンとはいえ、サイボーグではないのだ。機械の力にはかなわない。 「お前、まさか最初からこれを狙って……!?」 まさか、イルファンの立ち位置まで計算に入れて、殴られていたというのか。 完全にしてやられた。 ユキヒロは荒い息を繰り返しながら、背後の壁に体を預けた。 レオンを助けに行かなければ。 そう思うのに、体は鉛のように重く、ユキヒロの意思に反して力が抜けてゆく。 けたたましい非常ベルの音が遠のく中、ユキヒロはゆっくりと意識を手放した。 つづく 人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*^▽^*) ↓ 更新が大変遅くなりまして、申し訳ありません<(_ _)> 皆さんもう前の話など忘れていらっしゃるだろうと思ったのであらすじなど書いてみましたが、自分の作品にあらすじを書くということが思いのほか恥ずかしくて苦労しました(笑) ユキヒロは何とか難局を乗り切れましたが、レオンはどうなるでしょうか。 続きはなるべく早くアップできるようにします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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