テーマ:海外生活(7775)
カテゴリ:英国
英国を舞台にした映画で、子供の頃からいつも不思議に思っていたことがある。
それは、必ずといっていいほど出てくる「ヒマな居候」の存在である。 例えば「マイ・フェア・レディ」に出てくるピカリング大佐。あの人は何でずっと教授んちにいるんだろう。三食ごちそうになっているが、何で教授はそんなに金持ちで、何でピカリング大佐はそんなにヒマなの? 子供心にいつもそう思ってた。 「名探偵ホームズ」のワトソン博士の存在もやはり私にとっては不思議きわまりない。 医者だと言っておきながら、いつもホームズの事務所に入り浸っていて、ロクに医者らしい仕事もしている形跡がないのだから。 確かどちらも退役軍人(ワトソン博士は退役した軍医)。年金で生活しているからヒマで悠悠自適なのだ。 どちらも奥さんはどうしてるのかな、とまた別の疑問も湧いてくるのだが・・・(笑) でもこういうやや貴族的な有閑階級が英国には沢山いて、彼らの存在が英国人の生活を面白くしているのは確かだろう。そして、この伝統(?)は現代も続いていて、そういうライフスタイルを貫いている人たちは、結構沢山いるのだ。 実は英国で知り合った夫婦と、その回りにいる人たちが、それを地でいっている人たちだった。 旦那さんは有能な証券アナリストだったが、かなり若くして(40代だったと思う)財を築き、セミリタイア。 はやくも有閑階級の仲間入り。 で、彼は何かクラブ組織のようなものに所属して、毎日そのクラブの人たちとスポーツをしたり旅行をしたりパーティをしたりと社交三昧の生活。 そのクラブは世界的な組織なので、そこに入っていると、世界じゅうどこに行っても孤独ということはないそうな。電話一本で、見ずしらずの人のところに泊めてもらえるという。 自分たちもそうやるので、彼らも客人がくれば当然のように泊めてもてなす。 そしてそうやって客人をもてなすことを心からエンジョイしている。 なかには、それをいいことにずっと他人の家を転々としながら居候生活を続けている猛者もいるらしい。友人夫婦のところにちょくちょく転がり込んでは、友人を悩ませているある男性は、すばらしい社交マナーを身に付けていて、英国人に言わせると、彼は絶対に上流階級の出身だというほど品のよい英語を話すのだが、金はなく、まともな仕事をしようという意欲もなく、なんとかそのチャーミングな人柄でもってうまく人にとりいり、居候生活をしているらしい。(しかも国際的レベルで。つまりいろんな国を渡り歩いているらしい。) ここまで行くとやはりちょっとすごいけれども、でも基本的に英国人は仕事をしないということに対してあまり罪悪感ももっていないし、またひとのうちに泊まるとか長期滞在(居候)する、ということについて、あまり遠慮というものはないような気がする。 これはきっとそういう社交文化の伝統があるからだろう。そのかわり、マナーはしっかりしていて、迷惑をかけたり、嫌な思いをさせたり、ずうずうしい振る舞いをしたり、ということがない。 こういう社交術を身に付けている英国人は、だからとっても旅上手である。 長期で旅行をした人の話をきくと、たいてい「友人を訪ねて」というフレーズが入る。 その土地に住む友人を訪ねる旅というものがベストであることを、彼らは良く知っているのだ。友人(どの程度の知り合いであれ友人は友人)宅に泊まり、食事をご馳走になり、案内してもらう。それが最も安上がりな上に、その土地を一番よく知る方法でもあり、さらにパーティなんかに顔でも出せたら新しい知り合いも増えるし、そこからまたどんどんつながっていく。 そういう楽しさを一度知ってしまったら、高いお金を出してホテルに泊まって、通り一遍の観光しかできないような、そんな旅はバカバカしくてできなくなるに違いない。 旅というと買い物に走る日本人だが、これからの時代は、こういう「人と触れ合う旅」を求めるようになってほしいものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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