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ニッポンとアメリカの「隙間」で、もがく。

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2015.12.30
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『用語の説明』
BPS(Boston Public Schools):ボストン市公立校区 又は ボストン市教育委員会
AWC(Advanced Work Class):BPSにある4年生から6年生向けの進学クラス


では、7年生からの学校選びにあたり、いったい娘にとってどんな学校が合っているのか、夫と改めて話し合ってみた。

この3年弱の間、娘はAWCによって確かに学力は伸び、今後大学に入っても役立ちそうな勉強のやり方の基礎さえ身についた。AWC自体はメリットはあったと思う。でも、子供にとって学校は勉強の場だけではない。その点ではAWCのどちらの学校も親子共々不満はあった。娘が去る事になったP小学校の方がずっと「良い」。だから、4年遅れて入学した息子を今でもそのP小学校に通わせているぐらいである。

では、私達はP小学校をなぜ「いい学校」だと思っているのかを整理してみた。日本とは共通する面も違う面もあって面白いんじゃないかと思う。

(1) 学力の維持向上に力を入れている。
当たり前のことではあるが、勉強はおろそかにしないで欲しい。でも、そのために具体的にどんな努力をしているのかが大事だと思う。公立校は子供を選べない。学区一のワルが入って来る可能性もある。学力もさまざまな子供が入って来る。それが当然、平均点で表示される各校の学力レベルに影響する。特にアメリカの場合は、英語が母国語でない子供もいるわけだから、その子達の試験が悪いから「成績の悪い学校=悪い学校」と決め付けるわけにも行かないだろう。それについて、教職員が一丸となって取り組んでいるかどうかがポイントとなると思う。試験の結果だけではなく、昨年度より試験の得点率が伸びたというような実績が上がれば、それはその小学校の頑張りを示すことになるのではないだろうか。

P小学校は、毎年実施されるMCASやPARCCといった統一試験の成績の向上を具体的に目標として掲げ、達成した。(私はこの点についてはあまり注目していなかったので、具体的にどのように学校全体の学力を向上させたのかは正直分からないのだが。)
また、教科書を学ぶ形式の勉強だけではなく、作文の発表会や、大統領選の年はクラスで二党に分かれての模擬選挙、「説得をする」というテーマの作文では、クラス全員が校長に宛てて「クラスでハムスターを飼いたい」という手紙を理由付きで書くなど、総合学習的な勉強もたくさんあって身になる。特に、五感全てを使って学ぶタイプの娘には合っていたと思う。

(2) 主要教科以外の教科も充実している。
初めてBPSの学校選びをした際にびっくりしたのは、同じ公立校でも、美術・音楽・体育・理科など、算数と英語(国語)以外の科目が小学校によってあったりなかったりすることであった。さらに、P小学校では過去に一度、予算の関係で美術や音楽の時間がカットされたことがあった。残念だが、アメリカの公立校ではこういった、突然の予算削減策は珍しくない。しかしその後、校長の努力もあって、新たに音楽や美術の教師を採用し、教科の充実にも力を入れている。音楽のコンサートでは、英語の歌だけではなく、ヒスパニック系の生徒が全校の9割近くを占めるという状況を生かし、スペイン語の曲や、生徒の出身の民族舞踊などを披露して、観に来た親達が喜んで大いに盛り上がった。

(3)遠足、学校行事などが充実している。
P小学校の一年は、新学期まもなくしての秋祭り、冬のホリデーコンサートや映画上映会、学年末には生徒の出身国を紹介するカルチャーデーなど、学校側と親子が集う機会がたくさんあり、親子にとって楽しい学校になっている。また、遠足も年に数回行なわれる。

(4)子供の学力や性格を把握し、愛情を持って接してくれる。
P小学校は各学年2~3クラス、全校で300名ほどの小さな学校であることも関係しているのかもしれないが、校長が子供ひとりひとりの名前を覚えていて声をよくかけているのには驚いた。小中高を通じて私の名前と顔を知っていた校長先生なんて、一人もいないんじゃないかと思う。校長だけでなく、各担任の先生も、娘の良いところも悪いところもよく分かっていた上で、娘を可愛がってくださっているのが感じられた。娘は少々難しい性格なので、それに理解を持った上で、娘の良いところを伸ばしてくれると助かる。また、私が用事で学校に行った時は、今でも転校した娘の様子を必ず聞いてくれる。

(5) 校長の存在感が大きい。リーダーシップが強い。
P小学校の校長はとにかくどこにでも出没する(笑)。毎朝登校時にはカフェテリアの入口に立って一人ひとりに声をかけ、学校行事の時は必ず顔を出す。校庭の雪かきも率先してやる(笑)。息子が「校長先生はイイ校長先生なんだよ」と言ったことがある。なぜ?と問うと、「皆に何かをしてもらいたいとき、先生も手伝うから」と答えた。当時、まだ1年生だった息子にも、校長先生は子供にとって身近で、学校のために「頑張っている」のが分かるというのは素晴らしいことではないだろうか。この学校では、様々な事情から校長がたびたび代わり、今の校長が就任した当時は、その半ば強引なやり方に教師陣のとまどいも保護者の不満も大きく、決して順調満帆というわけではなかった。しかし、数年にわたる粘り強い校長の努力が周囲の理解を促し、実を結びつつある。

また、この一連の話の冒頭でも少し触れたが、アメリカ(少なくともボストン)の学校では校長の権限が非常に強く、校長いかんで学校ががらりと良くも悪くも変わったりする。上の人を周りが立て、後は下の衆がアリの集団のように細かく気を回し合いながら皆で頑張る、といった雰囲気と物事の進め方の土壌の中で育った身にとってはあまりピンと来ないのだが、アメリカというのは、大統領制という政治の世界でも見られるように、強力なリーダーシップの下にその他大勢が動くと物事が上手く行くようで、学校もその例に漏れない。

(6)校長以下教職員が一致団結して、学校を良くするために取り組んでいる。
私が、この点についてP小学校側の努力を非常に強く感じたのは、保護者の学校への関わりを大きくするための取り組みだった。

先ほども触れたように、P小学校はヒスパニック系の生徒が全体の9割を占める。そのため、親はスペイン語話者の移民が多く、英語がほとんど分からない人も多い。言葉が通じない上に、アメリカの教育制度もよく分かっていない人も多いから、学校への関心が薄かったり、関心があってもどういう風に関わっていいのか良く分からない。それをどう変えて行くか、という点について、PTAと学校側が何度も話し合った。保護者会にはスペイン語の通訳をつけようとか、当日の朝に保護者会の開催を知らせるチラシを配ろうとか、いや、でも、もしかしたら母国での教育を満足に受けられなかったためにスペイン語も読めない保護者もいるんじゃないかとか、色々な意見が出た。校長も就任当時は挨拶程度のスペイン語しか出来なかったが、学年末までには事務的な連絡ならスペイン語で話せるようになった。新規の教員募集の際には、積極的にスペイン語と英語のバイリンガル教師を採用した。年度初めの各クラスの説明会で、スペイン語で説明が始まると、多くの保護者の顔がぱっと輝くのが分かった。学校全体が、「状況がよく分からないから興味も持てず関わらない」といった悪循環から少しずつ抜け出し、様々な場面で、参加する親の姿が増えた。今年度はPTA要員が少なく苦労しているなど、年度によって波はあるが、ここまで努力を続けているのは素晴らしいと思う。

(7)専門性を持った教職員構成の下、分業化が進んでいる。
「専門性」とそれによる「分業化」というのは、アメリカのあらゆる世界での基本といえる。たとえば医療業界などはその最たるもので、こっちは身一つで病気にかかっているのに、「いやあ、ここから先はボクの専門じゃないからあっちの医者に行って。紹介するから」などと言われてしまう(笑)。その代わり、その専門医はその分野ばかりを「この道一筋ン十年」とやっているので、扱っている症例も豊富で安心確実、という面もある。それと同じで、教育界でも、教師は教科を教える、カウンセラーは心の問題や発達について扱うなど、専門性と分業化が進んでいる。その中でもアメリカ独特だと思われるのは、対外関係を専門に担当する職員がいることだろう(ただし、必ずいるというわけではない)。アメリカの学校は、地域との連携も密接で、外部から専門家を招いたり、ファンドレイジング(資金集め)行事の際には外部の関連機関の協力を得るといった機会がちょくちょくある。P小学校には、それを一手に引き受ける職員がいる。Community Field Coordinatorと呼ばれるこの職員は、もともとはP小学校の教師だったが、今の校長が就任してから1年後にこの職が設置され転向した。こうした仕事は準備など多岐にわたり、教師が子供達の勉強を教えながら両立できるような仕事ではない。それを専任の職員が指揮を執ることにより、作業の円滑化と教職員や保護者の負担の分散化というメリットがある。P小学校の学校行事が充実していたり、子供の学力が向上しているのには、この要素も大いに貢献しているのかもしれない。

さて、これに対し、AWCのあった小学校の方に限っていえば、勉強も算数英語以外はぱっとせず、ダンスの時間があったぐらいで音楽も美術もなく、コンサートといった学校行事もほとんどなかった。決して悪い学校ではなかったが、娘がわくわくするような学校ではなかった。親にとっても、子供が4年生になって急に新しい学校、新しい先生、新しいPTAという環境で単に「馴れていな」かったのかもしれないのだが、それを差し引いても、さして魅力は感じられなかった。まず校長先生がどの人なのか1年間ぐらいはっきりしなかったし(笑)、先生もばらばらで、一部のPTAの母親達が楽しそうにイベントなどをして盛り上がっていたが、生徒や保護者全体のニーズについて、校長をはじめ教職員もPTAも把握していないようだった。担任の先生も、朗らかな人ではあったが、娘の性格も、ちょっとしたトラブルなどクラス全体で起きていることも、よく見ているようには感じられなかった。

そう。
読み書き算数だけじゃなくていろんな教科があって勉強も頑張るけど、ただただ勉強勉強と追い立てるのではなく、クラブ活動や楽しい学校行事、遠足もいっぱいある。校長以下教職員がそれぞれの専門性の下に一致団結して、ひとりひとりの子供達のニーズをきちんと捉えた上で愛情をもって接してくれる。

当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、そういう学校に娘を通わせたい。

という点で、夫と私は意見が一致した。
その上で、学校選びを進めることにした。 

その5:学校紹介フェアへ』へ続く





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最終更新日  2015.12.30 09:31:45



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