石井 好子 「パリ仕込みお料理ノート」
本のタイトルが気に入って何気なくこの本を買った私は この石井好子という方が どういうかたなのか全く知りませんでした。 なんという無知。 1922年8月4日生まれの現役のシャンソン歌手で 日本シャンソン協会会長、神戸大使(おー!)でも いらっしゃるとのこと。 そしてお料理研究家としても有名で、楽しい本をたくさん 出しておられるまだまだ現役のかただそうです。 1952年に渡仏し、パリでシャンソン歌手としてデビュー。 だから現地フランスでの料理のお話が面白い。 それから和食について、いろんな国の人から 教わった料理についても。 ご自身のお得意料理(スープ、煮込み、和も洋も色々)や 海外の料理のレシピもたくさん出てきます。 (今では誰でも知っているタンシチューやパエリヤなども 彼女がこの本を書いた時代には、珍しいものだった ようですね) 自分の作った料理だけで開く 楽しいパーティのメニューも紹介されています。 ご主人を亡くして悲しみに暮れるイギリス人の友人のためにゆでたジャガイモをすりつぶして牛乳で煮込み、塩コショウで味付けたスープを作り、その友人が泣きじゃくりながらスープを飲んでくれたこと。まだパリに来て間もない頃、 オペラ歌手の卵の砂原美智子さんと お互い将来に不安を抱きながら セーヌ川の川岸にすわりこんで食べたおにぎりの思い出。 (砂原さんが病気の時も和風スープを作ってあげた、親切な石井さん)言葉が全く通じないのに、笑いあい、泣きあうことが出来た ロシアの貧しい合唱団との交流の話。 とてもわがままで気難しくてサディスティックだけれど 素晴らしい歌を聴かせる大歌手の話。 愛と歌と孤児の救済の為に生き、人種差別と戦った黒人歌手、ジョセフィン・ベーカー。そんな彼女の本の中からなるほど、と思った一節を紹介します。 食べ物に興味を持てることはしあわせである。 たいして知らない人とだって、食べ物の話なら気軽にできるし、 人の陰口をきくわけではないから、あとくされもない。 「あれがおいしい」 「これがおいしい」 とたあいないことをいいあっているうちに、何か友情を感じて くるのだからありがたいものである。 石井さんにとっては 食べることが好きということは、人との触れ合いが好き、 ということなんでしょう。 そんな石井さんの生き方がステキです。 (いつまでもお元気でいらしてください) ↓これも面白そうです。私も食べること、「料理を教え、教えてもらうこと」で 随分外国で友達を作りました。 イギリスの片田舎でおばあちゃんに素朴なケーキの焼き方を 教わったり、 カナダのニューファンドランド出身のオジサンに 焼き豚の作り方を教えたり。 楽しかったことと美味しかったこと。 そのふたつが重なっている思い出は、 きっと誰にとっても、とても幸せなものです。