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2008年10月01日
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テーマ:本日の1冊(3698)
カテゴリ:
昨日のうって変わって、少々に夏に逆戻りした感がある大阪。
新月は過ぎ、晴れたけど、まだお月様の姿は見えないなあ。

では月棚の第五夜です。
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-我々は、月の女神を降臨させようとしてストーン・サークルを造ることはもはやないが、しかし今もその影響力を思い、月に我々の神秘を捜し求めている。- ダイアナ・ブルートン


個人的には、おまじないや魔法は決して絵空事ではないと考えている。
近代以前のその時代だけではなく、今現在もなお、その力は効を奏するものなのだ。
それは、自身の欲望を外部化し実現するための、一つの知恵であり、有効な方法なのである。同じように人間は神や仏作り出し、神や仏の望む形として国家や国家のマスタープランを作ってきた、と考えている。規模と緻密さが違うだけだ。

本書は「月の神秘」「月を越えて」「月の科学」という三部構成で、月に関する神話、文学、民俗、SF、巨石文化に関する考古学、月の探査など、多岐に亘って紹介している。
いわば「月の雑学」っぽい本だ。なので、著者(人類学・宗教学を専攻されているらしい)の意見や論があまり強く押し出されていない。
平たく言えば、文化史的に深い考察がなされているとは言い難いし、月に関する事例も網羅し尽しているとも言えないのだが、それはそれでいいように思う。
上記の通り、神話から科学まで広範囲にフォローされているので、大まかに月とヒトの関わりを追うにはもってこいだ。
好きなところからピックアップして読めるし、もっと深く知りたくなれば、別の本にあたればよい。
鏡リュウジ氏の文体は翻訳っぽくなくて読みやすいし、原著の間違いも丁寧に修正がなされていたりして、好感度高し。図版もかなりのボリュームがあって楽しめる。

お名前にダイアナという月の名前が冠されているからか、月の女神の部分はなかなか面白い。イシスから始まり、セレネ、ディアナ、アルテミスからマリアまで、一通りは押さえてある。さらにそこから、魔女、魔術といったフォークロアへと繋がっていく。
紹介されているおまじないや魔法は、人間が月の力をあらゆる方面に使おうとしている様が浮かび上がってくる。
月、または月神が持つ、死、水、再生、豊穣、出産、変化といった象徴が、人々の生活の中で月に何を託していたか、月がどれほど多様なイコンとして影響をもたらしていたかが伺える。

また、「月の言葉」も興味深い。
ほとんど英語の言い回しだけになるが、「月」が関わる慣用句は以外とたくさんある。
例えば、こんな風に。

 月の輝き:Moonshine:密造者(Moonshiner)によって作られた違法の酒。密造酒。
 月光の飛行:Moonlight flit:夜逃げ
 月の手下:minions of the Moon:→夜盗
 ディアーナの崇拝者:Diana's Worshipers:真夜中に騒ぐ者
 月を越えて:Over the Moon:何かに大喜びしていること

ここからも月をどんな風に認識していたか、イメージが汲み取れる。

さて最後にせっかくだから、月の魔法を一つ。

「金運を招く月の魔法」
 月が満ちていく期間に、皿(できれば銀の皿)に水を満たし、
 その中に月が映るようにする。
 手を水に浸し、それが自然に乾くようにする。
 そして金が自分の方にやってくるよう想像する。
 月がまた同じ形に戻る前に、お金は意外なところからやってくる。

うまくいったら、是非お知らせ下さい。


●『月世界大全』 ダイアナ・ブルートン/訳:鏡リュウジ 青土社 1996








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最終更新日  2008年10月01日 23時21分24秒
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