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Emy's おやすみ前に読む物語

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Sep 26, 2009
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カテゴリ:連載小説
めっきり秋らしくなってきましたね。acoです。
皆様お変わりありませんか?
新型インフルエンザの流行で外出も気が進まないときは、
おうちの中でじっくり物語を読むのもいいものでは・・・。
てなわけで、ぜひ再開する『片想いの体温』をお楽しみいただければと思います♪
振り返ってみたら、もらっていた原稿の「手代木先生の話」の、
ずいぶんと中途半端なところまでしか更新していなかったことが
わかって(><)・・・失礼しました。
なので、その回の始めからきちんと載せさせていただきます。
その分ちょっと・・だいぶ長めですが、ご容赦くださいませ。

お話の続きは・・《咲花》で泣いた喜春ママを抱きしめてしまった手代木先生、
それを目撃してしまった夏恋ちゃん、柏田君に告白されて揺れるルミちゃんや
その弟の功介クンの複雑な姉に対する想いが交錯している辺りから始まります・・・




************************************

『片想いの体温』~手代木先生の話~


本庄が目の前で涙をふいているけど、抱きしめたいとは思わなかった・・・。
もしも、本庄が僕に抱きついてきたら
「えらかったよ。」
とでも言って、頭をなでてやるくらいの事は喜んでしたと思う。


「・・・先生。 柏田君はずるいよね。」
泣き止もうとする明るい声。
「うん・・・。正直、俺は男だから、
 柏田の気持ち、分かっちゃうところあるんだよな。 
 でも、柏田だけじゃない。男はみんなずるいよ。」
「ふ~ん・・・。男はみんなずるいんだ。」
「でも、女はそれ以上にしたたかだよ。」
「・・・。」
「そこが恋愛の醍醐味なのよ。」
「・・・先生は、好きな人いる?」
「えっ!」

本庄宅の玄関前に着く。

「そんなに驚く質問ですか? 彼女いるんですか?」
「今はいないよ。」
「・・・嘘つき。」
本庄の泣いた瞳がふざけたようににらむ。
「嘘じゃないよ。俺は正直者だぜ。」

――玄関の扉が開く。
本庄の高校生の弟だろうか?
背は180cm位だろうか。目線の高さが僕と同じ位。
さすが本庄の弟。モテそうな、イイ顔をしている。

「――どうしたの?」
「・・・笑い声、聞こえたから。」
「笑い声聞こえたからって・・変なの。
 先生、弟の功介(コウスケ)です。
 ――こちら、手代木先生。」
「・・・こんばんは。」
気のせいだろうか。
弟の目が一瞬鋭く見えた。
「・・・。」
「功ちゃん、どうしたの?」
「どうして先生が家まで来るの?」
「志望校の事とか、相談に乗ってもらって、送ってくれたの。
 ――先生、今日はありがとうございました。」
玄関に近づく本庄の顔が、明かりにさらされる。
「――じゃ、明日。」


自転車に乗ろうとした時、
「先生、今日は本当にありがとうございました。
 バレー部の男子にも・・・。」
「はい、伝えておきます。」
見送られて、自転車を走らせる。



3分くらい走って、商店街に入ろうとした時、
「手代木先生!」
呼ばれて振り返ると―――
本庄の弟が自転車で追ってきていた。
自転車を止めて待つ。 
追いついた弟は、かなり息を弾ませて
「先生、ちょっといいですか?」
と、やっと言葉に出す。
”ん?”

2人で自転車を走らせ、商店街を抜けて
少し離れたファミリーレストランに入る。

オーダーを頼む。
「コーヒ-。」
「僕も。」
「腹減ってるだろう。なんか食えば。」
「先生も食べてください。」
店員を待たせたままメニューを開く。
急いで、なんだか気取った名前のカレーライスを注文する。
「僕も同じで。」
店員がはずしても、何も話さない。
”しかたない・・・。”
「どこの高校なの?」
「F私大の付属です。」
”すごいっ。”
「頭、いいんだな。」
「・・・別に。母がF私大だったから。」
息を弾ませて追ってきた割には、ぶっきらぼうで話しにくい。
「・・・で、何?」
「・・・帰宅した姉の顔が、泣いていたようだったから。」
「へぇー、ずいぶんお姉さん想いだな。」
「・・・何の話をしたんですか。」
「大学の話とか、志望大学を変えるかもって相談とか――。」
「どうしてですか? 都内の大学に行かないんですか?
 あなたがいるからですか? 先生が引きとめたのですか?」
カレーライスが運ばれて、少しの間、話が途切れる。
店員がはずすといきなり、
「姉を引き止めないで下さい!
 姉はやっと家を出られるんです!
 ・・・ずっと友達とも遊ばず、部活もやらないで、
 僕たちを見てくれたんです。」

”何を興奮してんだか。”

「とにかく、冷めないうちに食おう。」
「・・・姉に何も言わずに来ました。メール送ってもいいですか。」
ことわりを入れてからメールを打つのは、
本庄が教えた礼儀なのだろうか。
弟が携帯をテーブルに置き、カレーを食べ始める。
何も話さず、ガツガツと・・・。

「・・・さっきの大学の話だけど、具体的な話は何もしてないよ。」
「・・・先生は姉の事、どう思っているんですか?」
「本庄みたいないい女を、どうとも思わない男はいないだろ。」
「・・卒業したら、姉と付き合うんですか?」
「さぁ、どうかな。」
「・・・姉に、都内の大学を勧めてください。」
「それは、俺がどうこう言う事じゃないよ。
 本庄が決める事だろ。」
「・・・。」
「それに、本庄の好きな男は俺じゃないよ。」
「じゃ、誰なんですか? 知ってるんですか?」
「さぁ・・?
 ただ、俺じゃない。」
「・・・。」
僕の答えがかなり意外だって顔をした後、
考え込むように黙った。


「本庄が自分でこっちの大学選んだら――」
「だから、それじゃ困るんです!!」

一瞬、時が止まるような大きな声で言い放つ。
周りのテーブルの人が、覗き込むようにこっちを見る。

「・・・すみません。」
「・・・。」
「・・・姉が家を出てくれないと、困るんです。」
先の勢いはどうしたのか、今度は僕と目を合わさないよう
下を向いたまま、小さい声で話し出す。

「僕は、姉が―――、
 姉が・・・、 好きなんです。」

――最初は僕を”先生”と呼び、そのうち”あなた”に変わる。
”どんな奴”とも言われてしまった。
誰にも打ち明ける事を許されない、姉への想いが
溢れ出てしまって、もう冷静ではいられないのだろう。

下を向いて口唇を震わせる彼に、もちろんこの状況の分からない店員が
コーヒーのおかわりを聞いてくる。
「お願いします。」
僕が代わりに答える。

男兄弟で育った僕には、姉への想いは正直よく分からない。
ただ、彼が大人なら、コーヒーより酒を飲ませてやりたい。
素面だと質問するほうも答えるほうも切なくきついが、
もう少し吐き出させて楽にしてやりたい。

「立ち入って聞くけど・・・、いつごろから好きなの?」
「・・・子供の頃から頭がよくて綺麗な姉が自慢でした。
 2年位前だったかな・・・。
 中学生の弟が、姉と一緒に風呂に入った一番下の弟を
 からかったんです。
『まだ姉ちゃんと風呂入ってんのか、
 姉ちゃんおっぱいでっかいだろ』って。
 僕はそのやり取りを聞いて頭がカーッと来て、
 中学生の弟をブン殴りました。
 その後は男3人、もうメチャクチャで・・・。」

男3人の兄弟げんかはどんなものか、僕にもよく分かる。
「――その夜、姉から
『学校で友達に意地悪言われて泣いて帰宅したの。
 だから少し甘えさせてあげようと一緒にお風呂に入ったのよ。
 私の胸の話は、笑わせようとした冗談じゃないの』
 って・・・。
 でも・・・、僕にとってはこの冗談がきっかけで
 姉を意識するようになってしまって―――。」

・・・僕は、どんな顔をしてこの話を聞いていたのか。

「すみません、こんな話をして・・・。」
急に我に返ったように謝ってきた。
「・・・それで?」
「それで――。」
「その大好きなお姉さんが、高校を卒業したら
 俺と付き合うって話になって、”どんな奴”か顔を見てやろうって?
 なのに、姉さんの想いは俺じゃないって聞いて
 今度は気持ちをぶちまけたくなったか。」
「・・・すみません。 八つ当たりかな。」
「いいよ。気持ちは分かる。
 俺だってついこの間、感情が抑えられなくて、
 やっちまった事あるんだから。」
「――後悔してますか?」
「・・後悔はしてないよ。ただ、迷ってる。」
「僕も・・・ こんな話、先生にしてよかったのか迷ってます。
 誰にも言わないで下さい。」
「誰にも言わないよ。」
「・・・姉が家を出なかったら、どうしよう。」
「マジな話、そうなったら、お父さんだけに
 本当の想いを話して、お前が家を出ろ。」
功介の顔が、晴れたような表情になる。
たった一つでも逃げ道が出来て、ホッとしたのだろう。

ファミリーレストランを出る。
自転車置き場で、功介が自転車のスタンドを上げながら
僕に聞こえるように、独り言をつぶやく。
「やっぱ・・柏田先輩なのかな。」
「少なくとも、俺と君じゃない。もう追求は止めろ。
 相手が誰だって、気に入らないんだから。」
「・・・はい。先生、ごちそう様でした。ありがとうございました。」

そう言うと、心の内を話す前とは別人のような顔で
自転車を走らせて行った。
そうなると、僕も誰かに心を軽くしてもらいたかった。

あの日から《咲花》には行っていない・・・。
喜春さんには会いたい。
でも、渡良瀬を変に刺激するのも嫌だった。
自転車を走らせ、帰宅の途中《雪丸》が目に入る。
初子さんの
『・・・喜春は、正直難しいよ。知れば知るほど。』
を思い出す。
『ボクちゃん』と呼ぶのが気に入らない。
”入ろうか・・・。”
実際、酒も飲みたかった。
ただ、僕は1人で居酒屋に入った事がない。
緊張する。
それに、本当に仕事中の初子さんが僕の話を聞けるのだろうか。
しかし、このままでは《咲花》への解決策も見つからない。
”1時間だけ。・・・いや、入ってすぐ出てもいい。”
僕は《雪丸》に自転車を止める―――。







『初子さんの話』へつづく・・・。



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お疲れ様でした~~。
久しぶりに読んでいただいて、ありがとうございました!
皆さんの脳裏に『片想いの体温』の色々なシーンが蘇っていたなら
幸いです。
私はemyちゃんにもらった新しい原稿を一足お先に読みながら、展開にワクワク!
どんどん載せていきますので、どうぞ次回をお楽しみに♪♪♪(^-^)







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Last updated  Sep 26, 2009 03:21:51 PM
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