私的読書記

安心社会から信頼社会へ

社会的ジレンマ

『爆笑問題のニッポンの教養』に出ていた教授の本です。番組を見ていて話しが面白かったので購入しました。「我思う、故に我あり」というデカルトの言葉が心と意識との一体関係についての私達の常識を代表しているが実際には私たちの心には私たちが自分で意識しないままいろいろな問題を解決するためのしくみが組み込まれている。自分でそう決めたつもりでも、実は深層心理や社会構造のなかではあらかじめそう決定するようなシステムが出来上がっているんだとか。この本を読んで日本人の心理や集団主義について少しは理解することが出来たと思います。説明がとにかく丁寧で、わかりやすいので読みやすく今まで経験的になんとなくわかっていたことが具体例と共に実証してくれています。

<対話>のない社会

カイン

10年後の日本

格差社会―何が問題なのか

格差社会―何が問題なのか岩波書店橘木俊詔格差社会の原因と格差が広がる日本に起きている変化を語る。不明年金問題など政府への不満が高まりつつある今読んでおきたい内容です。小泉元首相の「格差はどの社会にでも存在する」という発言は100％正しい。近年の格差が広がっているが、それは規制緩和・自由化などを行うことで政府が間接的に進めてきたことだと感じる。このまま格差が広がり階層の固定化が進むと間違いなくこの国にとってはよくないのではないか。格差社会についての知識を得た後は民主党のＣＭを思わず好意的にとらえてしまうようになってしまった！

21世紀の現実

「自由な時代」の「不安な自分」

下流社会　新たな階層集団の出現

下流社会　新たな階層集団の出現光文社新書三浦展下流とは単に取得が低いということではなくコミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲つまり総じて人生への意欲が低く結果として所得が上がらず未婚のままである確率が高い。ポイントは高度経済成長期以降の比較的豊かになった時代に産まれた若い世代。どんなことにも例外はあるだろうがデータに基づく事実だけに説得力があり現代社会を見直す新たな視点となる一冊。

陰日向に咲く

陰日向に咲く幻冬舎劇団ひとり人間には日常と非日常の使い分けが大事らしいと聞く。この人はそういうことがわかっているのかもしれない。そこにいたら、きっと私もそう思うであろう人間観察の鋭さを感じる。テレビで話す彼の人間性がところどころに現れているようだ。芸能人でありながら内面を隠さない劇団ひとりは今最も興味深い人物のひとりだ。俳優・作家・芸人と多方面で活躍する人にはやはり才能があるのだと思う。まだまだ０から１を生み出していって欲しい。劇団ひとりのこれからに大いに期待したい。

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ幻冬舎山田悠介なんという有り得ない設定！聞いてた噂ほど面白くなかったです。イマイチ緊張感が足りないし、どこをとっても中途半端でがっかり！話がご都合主義で内容は薄いので読みやすい(笑)スラスラーっと最後まで一気に読めました。作者が当時19歳だったことを確認して納得。

人生の教科書「よのなか」

人生の教科書「よのなか」筑摩書房藤原和博・宮台真司 「よのなか」の教科書前半はハンバーガー１個の値段あたりの人件費や材料費はいくらかなど身近なモデルをいくつも挙げて、誰にでもわかりやすく説明し後半では社会に対する問題提起から、現代社会が出来上がった必然性に気付かされる章間のコラム？が興味深く宮台真司さんの現代社会の捕らえかたには深く“ウンウン”と頷いてしまう

夜の果てまで

夜の果てまで角川文庫盛田隆二北大卒業と新聞社入社を目前にして全てを捨てて人妻と駆け落ちした青年自分にとって大切なものはなんなのか、そのために全てを犠牲にできるかこの青年の生き方は魅力的に思えてしまう不倫したほうも可愛そうだけどされた方はもっと惨めだ不倫の増加は止まらず民法772条の改正の議論といい他人の人生にとやかく言う権利はないけれど禁止されているから余計に魅力的なんですかね言葉にしない個人の勝手な思い込みから起こるすれ違いどうして言ってくれない！それがあなたのため？自分の為だろが！｢自分が一番かわいい、誰だってそうだろ？｣このフレーズは極論だけど的を射ていた喪失と再生の終わらないテーマ読み込んだら面白そうな本でした

光の帝国　常野物語

光の帝国集英社文庫恩田 陸不思議な能力を持つ一族の物語蒲公英草紙・エンドゲームと並ぶ三部作で不思議な能力が人の出会いを橋渡していきます。謎解きが終わらず続編を詠む気にさせてくれます。現在上映中の『蟲師』のように少し神秘的で古い日本へつながるイメージでした。あとがきの恩田陸さんの考え方は好きなほうです。他の女性作家の作品とは少し違う感じがするんです。

塩の街

塩の街メディアワークス有川 浩有川浩版ナウシカ。塩が世界を埋め尽くす塩害の時代、人間が塩化してしまう滅亡の危機にある東京という突拍子もない設定です。　　　　など図書館シリーズで本屋大賞を受賞した有川浩さんのデビュー作品。作者の有川浩さんは「ひろし」ではなく「ひろ」と読むそうで女性の方です。世界が崩壊に向かっていくなかの人間模様を描く。物語後半の山場への力強さは読んでいて気持ちよかったです。以前に読んだ空の中も面白かったですよ。

博士の愛した数式

博士の愛した数式新潮社小川洋子この博士の考え方が好きです。じつに潔い！興味深い！ほんわかした雰囲気や80分しか記憶が続かない世界観に引き込まれました。映画は吉岡秀隆さんが出演しているからか四日間の奇蹟のような雰囲気で優しく素直な描写に癒されましたよ～。

あしたはうんと遠くへいこう

あしたはうんと遠くへいこう角川書店角田光代『ときどきどこかへ行ってしまいたくなる。　いやなことなんかなにもないのに。　そこへ行けたらなにもかも解決するような気がして。　自分が変わらなければなにも変わるはずないのに。　本当のことなんてとてつもなくありきたりで安っぽくてばかげたことだ。　私自信に私はこっぴどくきらわれるだろう。』　自分本意で素直気ままに行動するくせに芯がないからグラグラの人生。　恋愛に依存して自分では成長しようとしない、恋愛すればなにもかも変わると思っている。　恋愛なしには生きていけない女の15年の物語　あしたはうんと遠くへいこう　けれど、どこにも行き着けない不毛で阿呆うなエンターテイメント小説

東京小説

東京小説角川書店林真理子、椎名誠、藤野千代、村松友視、盛田隆二、コリーヌ カンタン大都市には多様で複雑な表情がある。そこに集まり、住む人々と、街並みや建築物が作り出す表情である。大都市の表情を描く。地方に住むものの東京への憧れ。東京だって地方出身者の集まりなわけだけど、それでも東京生まれはどこか違う。紙一重のドライなところはどうしたってなれるものじゃない。地方の町へ行けば価値観の幅があまりない、東京っていう大都会で暮らしている人の価値観は様々だから、変わり者にはやさしい街だ。都会は溢れる人や物の背景に隠れて、時より劣等感や淋しさをのぞかせる。本書はもともと、フランスの出版社による企画「街の小説」シリーズの一環。フランス人の目に映る東京はどのようなものか。フランス語版と日本語版の同時刊行である。（松平盟子）

スカートの中の秘密の生活

スカートの中の秘密の生活幻冬舎文庫田口ランディ一見繊細にみえて、実は逞しい女性のエッセイ女は本能と心が男よりずっと近しいものなんだってことがこの一冊で納得できる！最近自分で自分を商品化している女性が多い気がします。若いうちだけ、と若さを売りにして、しわの数や肌の白さを気にしすぎているようなそれって性で割り切れるものですか？自分の商品価値がなくなってからはどうやって生きていくのだろう。歳をとることをなんでそんなに怖がっているんだ。自分のことは自分でおとしまえつけてなんぼだろ。どこの国でも自分の価値は自分が決めているのだ。また出た！地位も名誉もお金もあるオジサマが好きな人！本能と理性ってなんだろう。人間的てホルモンに左右されて生きている。気分ひとつとってもドーパミンやセロトニンなんかで決まってるわけだし個人差？性差？ホルモンの出やすさの差？女だからとか男だからとか言い訳にしてほしくないけどそこを認めないとセクハラ扱いされる世の中です(笑)

占い師の娘

占い師の娘角川書店野中 柊優しくて温かい雰囲気の本で梨木香保さんの『西の魔女が死んだ』に文章の感じと内容が似ていた。野中柊さんの本はあまり書店ではみかけない、本棚にしまわれたままの『あなたのそばで』も読んでみたい。

ラッシュライフ

ラッシュライフ新潮社伊坂幸太郎人生という大きな流れの中で追い詰められた5人が懸命にもがいています人生は運命で決まっているのか、それとも自分で勝ち取るのか、それすら運命なのかラッシュライフ――豊潤な人生とはなんなのか時系列がまんまじゃなく、一気に読まなかったので理解に苦労しましたそのためか「おおっ！」というような大きな感動はできませんでしたがたしかにミステリーの醍醐味がつまっていました。

卒業式まで死にません―女子高生南条あやの日記

卒業式まで死にません―女子高生南条あやの日記新潮社南条あや1999年3月30日一人の女子高生が自殺しました。これは死に至る三ヶ月間、彼女の日記を本にまとめたものです。この本は読まなくてはならないというような使命感で買ったんですがテーマが軽いものではないだけに読みはじめるのに時間がかかってしまいました。彼女はどこにでもいる電話代を気にしたりダイエットしたりやっぱり普通の女の子です。ただ他人より感受性が強かっただけ。自分の存在価値に悩み自己表現の場と自分を理解してくれる人を探していたんだと思います。 『不安や抑鬱を心に抱きながら、そういう自己を自ら慰め励ます能力に乏しい。いわば心という容器が小さく、かつ容器の壁が薄い。不安や抑鬱は恐ろしい空虚感や孤独感を伴い自己に代わって慰め支えてくれる人を必要とする。そういう対象が得られないと彼らは強烈な見捨てられた感情を持つ。それは自己の一部が喪失するような破滅体験である。』 うまくごまかしたり自分を甘やかせず生きるのに不器用だったんです。 香山リカさんの解説はこんなに的確なのに…。 これだけわかっていても救えないこともるんですよね。 こちらで日記が見れます。

2006年読んだ本

今年読んだ本をまとめて見ました。　きみに読む物語 　パイロット・フィッシュ 　アジアンタム・ブルー 　奇跡を信じて 　天使の卵 　東京タワー 　クロノス・ジョウンターの伝説 　天国の本屋 　いま、会いにゆきます 　弘海 息子が海に還る日 　恋愛寫眞 もうひとつの物語 　四日間の奇蹟 　娼年 　機関車先生 　春の雪 　メッセージ・イン・ア・ボトル 　オー・マイ・ガアッ！ 　奥様はマリナーゼ 　さよならは恋の終わりではなく 　 忘れないと誓った僕がいた 　空の中 　ナラタージュ 　100回泣くこと 　その日のまえに 　恋愛中毒 　MOMENT 　ノルウェイの森 　ひとめあなたに… 　エディプスの恋人 　終末のフール 　神様からひと事 　ライオンハート 　椿山課長の七日間 　Sweet Blue Age 　チーズはどこへ消えた? 　今はもういないあたしへ… 　となり町戦争 　プリズムの夏 　「さよなら」が知ってるたくさんのこと 　 君と会えたから・・・ 　Good Luck 　ファースト・プライオリティー 　太陽の塔 　別れの後の静かな午後 　孤独か、それに等しいもの 　MISSING 　ALONE TOGETHER 　OL10年やりました 　人生は一度だけ。　わたしのためにできること 　きっとあなたにできること 　ヤミナベ・ポリスのミイラ男 　心がだんだん晴れてくる本 　泳ぐのに、安全でも適切でもありません 　もしも私が、そこにいるならば 　草原の輝き 　いつか、僕らの途中で 　愛がなんだ 　泣かない女はいない 　ベター・ハーフ 　あなたと、どこかへ。 　幸福な食卓 　ショートカット 　スイッチ 　流れ星が消えないうちに 　九月の四分の一 　シングル・ブルー　人は見た目が9割　超バカの壁　風の谷のあの人と結婚する方法 　蛇を踏む 　ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 　私が語り始めた彼は　リピート 　イニシエーション・ラブ 　きみがいた時間ぼくのいく時間 　対岸の彼女 　ドナウよ、静かに流れよ 　さよならにもルールがある 　孤独について 　いま就職をどう考えるか 　後悔と自責の哲学 これからもいろんな本を読んでいきたいと思っています！来年もどうぞよろしくお願いします。

本の購入のしかた

やっぱり装丁が目にとまったり店員さんおススメの本があったりと実際書店にいってみて買うのが一番だと思うのですが（ブックカバーが付けてもらえるのは結構重要な要素！）、目当ての本がなかなかない、どんな本なのかあらすじを知りたい、読んだ人の感想が知りたいなど、いい本と出会うためにはネットを利用するのが便利です。中でも送料が無料なので楽天ブックスがおすすめです。しかしレビューが少ないのが残念。なのでアマゾンでレビューと本のあらすじをしっかり下調べしてから楽天で買うのがオススメです。1500円以上の買い物ならアマゾンも送料無料です。私はmixiも見てレビューが多いと人気なのかな～って思ってます。

東京タワー

東京タワーマガジンハウス江國 香織『恋はするものではなく、落ちるものだ。』私はこうはなりたくない、けれどなろうと思ってなれるものでもないと思う。好きになるほどつらくて…。自分ではどうしようもないんだ。結局どうしようもない。どうしようもならないこともあっていいんだよね。どこにもたどりつかない結果を求めない関係。空しさを伴う切なさに包まれた。

後悔と自責の哲学

後悔と自責の哲学河出書房新社中島義道そう決めたのは自分じゃないか。自分で決めたことなのに後悔する。「そうしないこともできたはずだ。」どんなに後悔しても過去をさかのぼって変えられないことを知っている。後悔とは未来に同じ禍を呼ばないように、生きていく技術なんだ。

いま就職をどう考えるか―精神的失業者にならないために

いま就職をどう考えるか―精神的失業者にならないためにPHP研究所加藤諦三給料か、多少なりともやりたいことへつながるものか。 苦労しても金がもらえない、同年代でボーナス2倍？ 貧しくても残りうん十年の懲役生活を少しでも有意義にするには？ 理想はあるが、自分が社会人としてどれだけ有用なのかなにせ経験してみないことにはわからない。選べる立場にあるとも限らないのだ。 精神的失業者にならないためにいろんな考え方に触れましょう。 就職できたところが自分に向いているところだ。要は気持ちですよ、きもち。 転職を考える前に気持ちの持ちようを変えてみるのはいかがでしょう。

孤独について―生きるのが困難な人々へ

孤独について―生きるのが困難な人々へ文芸春秋中島義道対人関係の難しさについて、これは答えが出ない。ただ自分のあり方については他人にとやかく言われることはない。 世の中は欺瞞と綺麗事だらけだ。だから表面上は取り繕っていても裏では切れている裏切りが横行するのだ。そんなドロドロな人間関係にはもうウンザリ。孤独は大きな選択肢だ。けどやっぱり死ぬとき孤独で死ねるかといわれると何も言えない。せめてそれまでわがままに生きよう。 『私も哲学病である。』

さよならにもルールがある

さよならにもルールがある角川書店秋元康、柴門ふみお互い納得いく別れ方ではなく、明日へ向かうエネルギー充電本。 始まりがあれば終わりがある。だからこそなのかも知れないですね。いろんなさよならがあるけどそのつらさをわかっているならせめてやさしいさよならがいいと思ってしまう。そのつらさ故に人は成長できるんです。 あ～なんかすっきりした。胸のどっかに引っかかってた答えが出たみたい。頭ではわかっているんだけど実際に経験してみないとわからないんですよね。人間として魅力的でありたい、大人でいたいです。

対岸の彼女

対岸の彼女文藝春秋角田光代昔のように他愛のないことで盛り上がれる友人 大人になった今こそ本当の友達が必要だと作者はいうが 仕事、家庭、子供で忙しくやることは山ほどある 忙しいと余計なことは考えなくてすむのはいいがそれだけでなく 仕事場での人間関係と家族の他に友人の占めるポジション 大人になってもなにも変わっていない 人との距離と関わり方、立場の違う人間だって誰もが悩んで自分を探していくんだなぁと改めて思い知らされます

きみがいた時間 ぼくのいく時間-タイムトラベル・ロマンスの奇跡-

きみがいた時間 ぼくのいく時間 -タイムトラベル・ロマンスの奇跡-朝日ソノラマ梶尾真治クロノス・ジョウンンターを読んだときは 熱い気持ちになったんだけどそれほどの衝撃はなかった。 クロノス・ジョウンターの伝説より感動少なめ心温まる話。 なのにこんな気持ちにしてくれるのはどうしてだろう。 これでクロノス・ジョウンターとはけりが付いたかな。 人の思いが時間を越えて起こす奇跡に一票。

イニシエーション・ラブ

イニシエーション・ラブ原書房乾くるみ絶対という言葉を私は嫌いだ 絶対という言葉を使われるとその一言が嘘っぽくなる 絶対なんてことは世の中には存在しない 彼女のために大手を蹴って地方企業に就職したにもかかわらず、社会人一年目から東京での本社勤めとなり遠距離恋愛中に魅力的な異性の同僚が現れ学生から社会人へ成長していく 環境が変わって好みの相手が現れればあっさり捨てられてしまう という話だと思っていました、ところが… 女の子って怖いですね イニシエーション・ラブが人間を変えてしまうのかもしれない きっと誰もが経験するリアリティ 最後の二行で『えっ!?』と声を出してしまう 一度読んだだけではわからない 二度目に読んだときにはまったく違った話が見えてくる 確かに問題作だ、こんなミステリーもあり！ うまい、面白い、オススメです！

私が語りはじめた彼は

私が語りはじめた彼はフィールドワイ三浦しをんいつの時代も人を思う気持ちは純真だ 二千年以上前、皇帝は地が裂け天の落ちる日が来るまで寵姫と通じた家臣を忘れることはなかったという 心に冷たく太い杭を打たれても、それはいずれ溶ける でもぽっかり空いた穴はいつまでも残るでしょう 愛に対する裏切りの傷は誰かを愛することでしか癒やせない 不倫したものはいつか不倫される、不倫が不倫を呼ぶ 何年にも渡る少しずつ繋がっている不倫の行く末 不倫が及ぼす周りへの影響を客観的に見ることができる 当人たちは気付くことのないことなんだろう

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶新潮社大崎善生九月の四分の一とは対照的な女性が主役の四編 忘れられない印象的な出来事を引きずって生きている彼女たち 過去になればどんなことも許される、笑って話しをする日が来る 誰にも理解されなくても自分の心の支えになるような出来事に出会ってみたい 九月の四分の一から20年後のキャトルセプタンブル いつか行ってみたい、いつか立ってみたいその広場に 他の作品より少しだけ甘い喪失感と 少しだけ優しく人間臭い気がする さよならの速度には気をつけましょう

蛇を踏む

蛇を踏む文芸春秋川上弘美芥川賞を受賞した日本昔ばなしのような不思議な雰囲気を放つ川上ワールド 蛇を踏む・消える・惜夜記を収録

シングル・ブルー

シングル・ブルー集英社唯川恵人間だから気分のいい日もあれば誰とも話したくないほど落ち込むこともある いつからこんな性格になってしまったのだろう 私は私が友達にしたくない人No.1だ！ 人並みの生活をしているはずなのに満たされない 得体の知れない不安と一人残されていく焦燥感を感じている人へ 生き方？人間関係？なんじゃそりゃ！ なんでもかかって来いと思える味方がここにいた！ さぁ、この本で一息入れましょう！

リピート

リピート文藝春秋乾くるみ過去に戻って人生をやり直す もし、あの時、って考えは誰にでもあるはず 戻っても一度経験した記憶はなくならないし 今までの自分は意味をなくしてしまうんじゃないか というのは私の考えですが タイムスリップには難しいところがたくさんある 単にやりなおせるなんてことじゃない 本の世界に引き込まれて一気に読んでしまった 読み終えた後には怖くなる 運命からは逃げられない！

九月の四分の一

九月の四分の一新潮社大崎善生文章が肌になじんでくるしっとりとした静謐さ 誰かの思い出をたどっているような、モノクロさ 誰かにわかってもらえなくても自分の大切なもの 寂しくて静かでそれを受け止められたなら なにかにつけて意味を探してしまうこの頃 どんな気持ちで生活していますか？

流れ星が消えないうちに

流れ星が消えないうちに新潮社橋本紡高校時代から続く三人の三角関係 死んだ加地の親友の巧と加地の恋人だった奈緒子 加地のことが忘れられない二人の視点が切り替わるので わかりやすいし読みやすい もういなくなってしまった人のこと もう確かめようのないことを気にかけながら 大人になっていく二人が強く思えた 装丁とタイトルがきれいです

SWITCH

スイッチ宝島社さとうさくら帯の「平成にニッポンの『ライ麦畑でつかまえて』です」という 柴門ふみさんのコメントが目に留まった 自分は他の人とは違う、他人を見下す一方でその人達がこなす普通のことすらできていない 毎日繰り返すルーティンに疑問を持ちながらもそこから抜け出せない 加齢臭と脂のにじみでるおじさん、世間話と子供の話には事欠かないおばさん、そういう人たちを敬遠しながらもいつか自分もそうなっていくことをどこかで受け入れている おいしい・可愛い・嬉しい・幸せ、そんな安っぽい言葉にはヘドが出る 愛想を振り撒いて誰からも受けがいい女は信用できない わかって欲しいことは何ひとつ理解されず、やってしまったミスを本質として見られ、黙っていれば誤解される こんなにも生きるのに不器用なんです いい会社に勤めていい給料もらって お互い社交辞令や表面上の付き合いで関係を保ち ヒエラルキーで評価される、そこから脱出したい！ 生き方に正しいも悪いもないし、何に価値を見出だすかは十人十色 審査員絶賛賞を特別に設けさせるほど面白い本です！

幸福な食卓

幸福な食卓講談社瀬尾まいこ父親を辞めて大学生を目指す父 家を出て行った母 頭がいいけど大学に行かず農業をする兄 と佐和子の四人家族の朗らかスローストーリー なんでも話せて頼りになる身内がいる 家族がいること、家族のあたたかさ 家族と一緒に暮らしていることがうらやましくなった一冊でした

あなたと、どこかへ。 eight short stories

あなたと、どこかへ。 eight short stories文藝春秋片岡義男、甘糟りり子、林望、谷村志穂、角田 光代、石田衣良、吉田修一、川上弘美軽くてさらりとした日産TEANAスペシャルサイト発信 8人の短篇の名手が書き下ろした少し大人で ティアナだから引き立つ生活の中の8つのシーン 車のなかでは不思議と会話が弾んでしまうし 偶然同じ時間に同じ道を走っていると思うと たまたま居合わせた他人の車なのに親近感を感じてしまうこともある ラジオをつけて自分に向けられたメッセージを受け取るのもいいかも！ ドライブって特別なシチュエーション お洒落をして少し遠くへ出掛けよう！

ベター・ハーフ

ベター・ハーフ集英社唯川恵恋愛小説のように甘くなく読みごたえのある内容でした 絶対なんてものはなく 心変わりするのは明日か明後日か、はたまた来年か 夫婦って何だろう 一緒にいて、お互いに都合のいい存在で、情がわいてくる その情は夫婦を演じる時間からうまれるのか 法律で縛られた関係が持ち出したものか 気持ちが薄れたとき、余裕がなくなったとき問題が持ち上がる その問題をやっとの思いで解決したとき もはや離婚する気力は残っていない それでも情と法律は未だ歳を重ねた二人を結び付けていて 子供がその結び目になってくれる 男女両方の視点からこれだけの内容が書けるもんですか！ 感心して呆れてしまいます まったく、女は逞しい！

新編クロノス・ジョウンターの伝説

新編クロノス・ジョウンターの伝説朝日ソノラマ梶尾真治クロノスジョウンターにまつわる4つの物語の短編集。 大切な人の死、その命をもし取り戻す方法があるとしたら、もう二度と会えなくても、しなければならないことがある。 どの話もいいが個人的には「吹原和彦の軌跡」がお気に入り。 映画化されましたがストーリーはまったく別物です。原作を是非読んで欲しい。最後は読んでよかったなと思える。 作者は星雲賞を４度も受賞している。代表作は『黄泉がえり』

愛がなんだ

愛がなんだ角川書店角田光代全力の片思い、角田光代さんを好きになった本 こんなに物事を強く思えたらつらいだろうけど、幸せなんだろうな 夜半に無性に人に会いたくなる種類の人は読んでみてはいかがです？ 過剰だと思ったり共感したり同情したり 恋人を身内のように考えるか 一番親しい他人と考えるか 好きになってごめんなさいと、あやまんなきゃいけないような気がするときもある 現在の状況に気付けたら 少しは前進できますよ

いつか、僕らの途中で

いつか、僕らの途中でポプラ社柴崎 友香、田雑 芳一社会人と院生、京都と山梨 手紙から読み取れる二人のそれぞれの生活 挿絵と手紙で綴られる他にはない種類の本です どこかにいそう、実在しそうな二人 言葉には表されていないが信頼というか絆を感じました 二人の距離なのか手紙が届くまでの時差のせいか 淡白ですが、絵はいい雰囲気です

もしも私が、そこにいるならば

もしも私が、そこにいるならば小学館片山恭一「一週間で、すべてのことが起こった。 自分の一生は、あの一週間のためにあったのかもしれない」 繊細な人間の30年分の過去が清算される 完璧に忘れることはできません 忘れたつもりになっても何かの拍子に思い出されてしまう 30年分の気持ちが詰っているはずなのに 短編なのでさらっとしすぎている気がしました

OL10年やりました

OL10年やりました集英社唯川恵唯川さんのエッセイにはいつも元気付けられます。 そりゃいろいろありますよ、いろんな人が集まってるわけですから。 3日3ヶ月3年と辞めたくなる病にかかっていろいろ悩む前に読んでみてください！ 勤続年数とともに立場・周囲との関係が変わっていきます。 そうそう、こういうことですよね～。 いや～私だけじゃなかったんだ、な～んて思えちゃいます。 自分の悩みが小さく思えてきた、人間観察的な視点も面白いです。 読み終えた後のこの爽やかさはなんでしょう！ 今まで読んできたエッセイのなかで一番のおすすめです！

ファースト・プライオリティー

ファースト・プライオリティー角川書店山本文緒31歳の31の最優先なこと。 短かさがかえってちょうどいい感じです。 31ものファーストプライオリティーがあっという間で私にはもっと他人のファーストプライオリティーが知りたくなりました。 一番大切なのは、なにをする時間ですか？ 人が見れば笑ってしまうようなこだわり 大事なものだけで生きていけるのか？ みなさんそれぞれこだわりをもってるんですね。 31歳の私はどんなだろうか。 社蓄とカラオケに考えさせられました。

孤独か、それに等しいもの

孤独か、それに等しいもの角川書店大崎善生気持ちを伝えられたと思っても 相手にはどのくらい伝わっているのだろうか いったいどのくらい分かり合うことができるのか 孤独からは逃げられない 過去と伴に人は人の中でしか生きられない 喪失と再生・生と死、大崎善生さんの作品は それを優しさと穏やかさが包んでいる ピアスをあけることについて 失うことってマイナスなイメージしかなかった ピアスをあけると大切なものを失ってしまうのか その開いた空間に運び込めるものがあるのか 今まで私は前者の考え方しかできなかった 失いたくない、何をするにも怖くて躊躇っていました 何も失うことなく欲しがるなんて欲が強すぎたんですね