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カテゴリ:諸事雑感
今日(こんにち)さま
俳優の小沢昭一さんが東京・四谷の街を歩いていると、お稲荷さんの前あたりから妙な話し声が聞こえてくる。 何かと思えば、先代の林家正蔵さんが誰もいない所で落語を演じていた。 たずねると、「神様に聞いてもらっている」、正蔵師匠はそう答えたという。 作家関容子さんの近刊、対談集「再会の手帖(てちょう)」(幻戯書房)のなかで小沢さんが語っている。 その回想に添えられた小沢さんの言葉がいい。 「言わば今日(こんにち)さまに捧(ささ)げるってことで…」。 その日一日を守ってくれる神様、おてんとうさま――「今日さま」という昔懐かしい言葉に久しぶりで出会った。 夏目漱石の「坊っちゃん」にも、下宿のおかみさんが「それぢゃ今日様へ済むまいがなもし、あなた」と語る場面があった。 以前は誰もが耳にもし、口にもした言葉だろう。 林道整備に密室の談合あり。球団に裏金あり。電力会社に事故隠しあり。冷凍食品の大手企業に売上高の水増しあり。 そういえば神様に一席聞かせた先代ならぬ売れっ子の当代にも、所得を隠した、隠さない、の騒動があったような。 世の中が一斉に夜行性の魔法をかけられたかのように、おてんとうさまや今日さまを忘れた出来事がつづく。 関さんの著書には「また逢(あ)いたい男たち」と副題がついていた。 また逢いたい、逢わねばならない言葉たちもある。 (2007年4月26日付読売新聞東京版「編集手帳」より全文引用) <hidechan1229:オーガニックハーブサプリメント専門店eサプリ東京店長> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年04月27日 14時23分49秒
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