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腎臓にも「ラジオ波」療法－臓器切らずにがんを焼く－

腎臓がんで左側の腎臓を摘出した東京都内の男性（７５）は２００３年１月、右側の腎臓にも直径２・５センチのがんが見つかった。右腎の摘出も勧められたが、人工透析が必要になる。これを避けるため、腎臓を温存しようと、電流でがん細胞を焼く「ラジオ波焼灼（しょうしゃく）療法」を岡山大病院（岡山市）で受けた。４年半たった現在も腎臓がんは再発せず、元気に暮らしている。（科学部・高田真之）

　ラジオ波による治療は、太さ１・５ミリほどの電極針（長さ１５～２０センチ）を患者の体外からがんに刺し、周波数の低いラジオ波の熱（６０～１００度）で焼いて死滅させる方法。手術と違い、臓器を切除しないうえ、傷口も１センチ程度と小さくてすむ。入院も数日間から２週間程度と短い。

　肝臓がんの治療法として普及してきたが、０２年５月、腎臓がんの患者に国内で初めて岡山大が実施した。

　同大大学院教授の金沢右（すすむ）さん（放射線医学）は「患者の手術に対する抵抗感は大きい。手術による摘出や部分切除より体への負担が軽く、何度も繰り返し治療できる利点がある」と強調する。

　ただ、まだ新しい治療で、治癒率など長期の治療成績が分からない。岡山大では、冒頭の男性のように片側しかない腎臓にがんができた場合や、腎臓がんが多発する遺伝性の難病など、手術を施すと腎機能を失う患者を対象とする場合が多い。同大は、これまでに３４人の患者に実施した。

　治療法は、肝臓がんの場合と同様だ。背中に局部麻酔した後、画像装置で腎臓がんの位置を確認しながら、ラジオ波発生器とコードでつないだ電極針を背中から刺す。針の周辺０・５～１・５センチの範囲が焼ける。電流が流れやすいように、太ももには電極のシールを張り付ける。

　焼く時間は、がんの大きさや形によって異なるが、約２センチのがんなら１回当たり１０分強で、２か所に針を刺す。痛みはあまりない。がんが大きいと焼け残りが生じる場合があり、５センチ程度以内のがんが対象となる。がん細胞は消失するが、凝固壊死（えし）と呼ばれる焼け跡は残る。

　患者に優しい治療法だが、血管や組織に針を誤って刺し、出血などの合併症を引き起こす可能性もある。これを防ぐには、病巣の位置を正確に把握することが重要だ。

　肝臓がんの治療では、超音波装置の画像を見ながら行う場合が多いが、岡山大病院はＣＴ（コンピューター断層撮影）を使っている。超音波だと、焼く際に生じる気泡で患部が見えなくなる場合があるが、ＣＴではそれがなく、より確実に見ることができる。

　ラジオ波は血管に近い部位で使うと血流で温度が下がり、病巣を十分に焼き切れないことがある。そのため、細い血管が集まり、尿がたまる腎盂（じんう）や尿管が近くにある部位には向かないという。

　岡山大は０１年５月、肺がんにもラジオ波治療を始めた。これまでに３１９人と世界有数の実施例がある。腎臓、肺とも、まだ保険適用されていないが、同大では検査などに保険がきく先進医療に指定されており、１回の治療に１３万円かかる。金沢さんは「治療成績でも、外科手術と同じ成果が得られるよう進めていきたい」と話している。

※腎臓がんへのラジオ波焼灼療法を行う主な病院
岡山大（岡山市）（電）０８６・２２３・７１５１
北海道大（札幌市）（電）０１１・７１６・１１６１
三重大（津市）（電）０５９・２３２・１１１１
京都府立医大（京都市）（電）０７５・２５１・５１１１

（2007年8月3日 読売新聞）

おまけ＜今日8月4日は何の日？＞
1947年のこの日、最高裁判所が発足しました。1958年には、京都大学登山隊がヒマラヤのチョゴリザの初登頂に成功しました。

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