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読んでは止め、棚に放置し、を繰り返しようやく読み終えた一冊のPaperback "Hornet's Nest." まだUK出張していた頃、Heathrow空港内の本屋で買ったんだっけ。
自分が勤め人になったころ、Patricia Cornwellの作品が ”検屍官シリーズ(所謂 スカーペッタもの)”として日本で話題になりはじめた。同僚にも愛読している人がいたが、何事にも流行を追うのが大の苦手だったので自分は無関心だった。 数年前のUK出張の際、ほんの暇つぶしでスカーペッタもののひとつ"Unnatural Exposure"のPaperbackを試してみたことがある。売れっ子だけあって良く書けているなと感じたが、後半の取って付けたような大仕掛けが興ざめさせ、残念ながら特に騒ぐような内容ではなかった。 Hornet's NestはそのFBI女性検屍官スカーペッタものではなく、個性的な、というより娯楽小説的な、(婦人)警官達と新聞記者達を中心に据えた別シリーズなのだが、こちらの方が格段に楽しめた。 ただ、本作はCharlotte/USを舞台にした>警察もの<で、>推理もの<というわけではない。 著者に敬意を表し、あまり偉そうにケチを付けたくはないのだが: /90年代の要素(ゲイ、女性のPosition Up、AIDS、等々)も取り入れてはいるのに70年代のUS警察ものTVアクションシリーズのように平坦で先の想像がついてしまう展開はこの手の書き物を好む読者には淡白すぎるだろう。 /女性を高いPositionに(過度に)登用する趣向が現実離れしていて、フィクションといえども そりゃないだろ と感じさせる (女性署長と二人の女性Deputyねえ、、、。) /Virginiaの飼い猫の行動の長い描写やHammerと銀行元締との深夜ドライブなど(次作以降の前振りなのかも知れないが)必ずしも必要とは思えない幾つかの場面。 /登場人物の行為に絡み、ビールや煙草や日用品の品名そのものが多種類登場する不自然さ (最近の商業志向US映画でよくあるサブリミナルなタイアップ広告の意図があるとしたらちょっと蔑まさせてもらうが、日本の”なんとなく、クリスタル”を意識したのかな と大目に見てあげようか。) では、それらを考慮に入れた上で何が楽しめたかというと、この作品の真のハイライト、ナレーションである。 登場人物のセリフや動作や状況設定にナレーションを通じてかぶさるPatriciaCの世界観/人間観、そしてシニカルで卓越したユーモアのセンスがニヤリとさせる。また、少しきわどい?性的な描写や、逆に男女関係の機微を女性的な繊細さで表現するなどPatriciaC自身のこの世の諸事に対する態度を想像する楽しみがそこにある。主人公が誰なのか定かでないのも、彼女自身の視点が中心であり、彼らはその表現媒体に過ぎないからか。警察ものを書こうとしたのではなく、設定した舞台と役柄を通じ(ある意味、自分の楽しみのために)彼女自身を表現しようとしたのかと想像できる。もっとも、カネの絡む世の中でそんな悠長な事は意図的にやってられないだろうが、売れっ子作家には息抜きも必要だ。 この抜け目ないユーモアのセンスと洞察をどのように咀嚼したのか、邦訳者の手腕に興味が湧くので、次回日本に寄ったら日本語版購入を検討しよう。邦題は "スズメバチの巣"らしい。 しかしこの作品、US Amazonの書評欄では読者Reviewの結果がえらく悪い。星2つって、PatriciaCの著作中最低ランクじゃないか。。 本作に推理小説を求めるなら食い足りない、それはわかる。でも彼女自身スカーペッタものと同じ土俵に存在するのを意図的に避けたのだろうから、そこを汲み取れば作品そのものの真のポテンシャルはもっと高くていいはずだ。 ところで、同じくUS Amazonによると、自分の読んだスカーペッタものの"UnnaturalExposure"は星3.5と低い評価だ。という事は自分はPatriciaCの作品世界のコアにはまだ到達できていないってことか? じゃあ次は星4.5のCruel and Unusualを急いで読まなきゃ、、、なんて具合には いそいそと考えられないんだよね。いいんだよ、他人のReviewは他人のものなんだからさ。それに遅読だからいつ読み終わるかわかんないし。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.11.27 19:34:36
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