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おいろーぱ野郎

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2005.11.20
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カテゴリ:das Kino
 30年程前に製作された映画 "戦国自衛隊" のリメイクが行われ、各国映画配給関係者からの買い付け希望が引きも切らないと何かの記事に書かれていた。
 秋の日本出張の際、機内映画プログラムに その "戦国自衛隊1549" とOriginal版の両方を見比べてお楽しみ下さい という企画があった。
 長く異郷にいると、出来はともかく、日本が舞台の時代物?を懐かしみたい心境に至る。ささやかな期待を胸に、椅子の背据付けマイクロサイズ液晶パネルに向った。

 平成SF TVドラマっぽい装いで始まるこのリメイク版。特殊演習中の自衛隊小隊(だか中隊だか)が消え、その地面が円形に消え去り、戦国時代の草原と置き換わる。そこには騎馬武者のおまけが一騎落ちている。この出来事を契機とした時間の歪が原因で 日本のあちこちで穴が開き始めた。特にそれが顕著にあらわれた富士山がSFXにより醜く描かれる。
 タイムスリップものは(よく出来た作品を除き)えてして醒めた目で見がちなのだが、まあこの程度なら許そう。

 原作とOriginal版映画のあらすじをおぼろげながら知っているので、リメイク版がそれらとは別路線であることに この後の場面から気付きはじめる。
最初に消えた自衛隊小隊は戦国の世で城を構えるまでの勢力に発展し、未来からの追跡者である特殊部隊をものともしない。降伏した後、主人公は仲間と共に城へと連行され、望んで戦国大名に姿を変えたかつての上司と対峙し、彼らの野望とそれを成立させるテクノロジーが露わにされる。

 関心の糸はここで切れた。 SciFi系映画の嘘は紙一重の可能性を持つ虚飾の数々に覆われ、受け手の寛容さという名の眼鏡を通過して成立する。嘘はつき通すから錯覚を正当化する。それなのに、誰がどうやって建てたのか想像もつかない 城の隣に並んだ20世紀的石油精製所の煙突や、誰がどう作業したか予想不可能の 地中深く掘られた穴などが画面から登場してくる。騙せない嘘は効かない麻酔のように性質が悪い。
 鼻白む思いで眺めていると、今度は大根役者の猿芝居と日本のファミリーレストランで注文できそうなお子様ランチのような殺陣が、焼酎の一気呑みよろしくノリで盛り上がれとばかりに次々と押し込まれる。
 準主役級の侍と姫君との伏線は大河ドラマにあるような平和な明るさを僅かに演出するが、それだけだ。

 そりゃあ江口洋介と鈴木京香を観たいだけの理由で映画館に向う人だって世の中にはいるだろう。鹿賀丈史の顔を見なければ料理が喉を通らない鉄人だって居るやも知れぬ。
 所詮好みの問題に過ぎないものにくだくだ悪態をつくのも子供じみてて我ながら情けないが、環境資源浪費とSFXに費やす金があれば、少しはどこかに寄付しろと言いたくなる。なにせこのリメイク版制作費は15億円だ。作ることで業界にカネが落ち、ニッポン経済は微視的に潤うとはいえ、作らないほうが世の中の為ということもある。

 過去に紛れ込んだ現代人が現代社会の堕落を思い知り、それを破壊して歴史を一からやり直そうとするこのリメイク版は、倭製大作娯楽映画の品質低下を露呈するばかりでなく、"戦国自衛隊"という名を受け継いだ点で、「ご先祖様」に対しおのれの堕落具合を開陳する皮肉な結果に相成った。 
 作り手側のレベルダウンが作品そのもので代弁され、過去(=Original)を温めた結果、現代(=リメイク版)が否定された という皮肉なオチがついたわけだ。
 関係者達はこの酷さに気付いていないのか。いや、気付いていても、ちかごろの聴衆にはこの程度の内容で充分とうそぶくのだろうか。


補足:
 これを買い付ける外国諸国の映画Dealerが、侍の出てくる異国文化情緒を除き、子供すら騙せない内容の無さで満足するとは思えないのだが。。。
 いや、もしかするとそんなものかも知れない。例えば "BatmanBegins" の某出演者が「(あんな駄作の)撮影の為 切った木が可哀相だ。」とコメントしたらしいが、まさに至言(=自分も観たから判る。)
 娯楽品質軽視の風潮は倭が国だけに限らないのかも。





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Last updated  2005.12.15 11:15:23
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