一昨日は、PRADO美術館展のあと、両国の江戸東京博物館にも赴き、開催中の「ナポレオンとヴェルサイユ展」も鑑賞した。ダヴィッドの有名な『マラーの死』『アルプス越えのナポレオン』があり、その他ヴェルサイユ宮殿に落ち着いた皇帝ナポレオンがその住まいを彩った数々の工芸品、宝飾品や、トリアノンの執務室の再現等が展示され、興味深いものであった。
思い出すのは、2001年の夏赴いたパリで、あいにくその日はルーヴルがお休みで、ガイドブックを見ると、唯一開いているのが、アンヴァリッドというところにある軍事博物館ということで、軍事オタクのわが亭主からゴーサインが出る。何の予備知識もなく赴いた(ガイドブックにも「軍事博物館」としか載っていなかったのだ)アンヴァリッドは、その昔ルイ14世が、傷痍軍人の収容施設を置いたところからその名があるのだが、軍事博物館の脇に、何とナポレオン廟があったのである。ギリシア風の柱の建ったドーム天井の建物の中に、さながら御神体のようにナポレオンの棺が中央に置かれている。セントヘレナで生涯を終えたこの不世出の英雄は、フランスの度重なる要請で、やっと故国にその亡骸が帰り、その棺は、生前にくぐることのなかった凱旋門を通って、このアンヴァリッドの墓所に入ったのだという。
その波乱に満ちた生涯は、死してなお、「髪の毛から砒素が検出された、実は暗殺された」だの、「帰ってきた亡骸は、背丈からしてナポレオンではない」、だのという数々のミステリーを残している。
折からの夏休みで閑散としたパリの街であったが、アンヴァリッドのナポレオン廟は人々がいっぱいで、この英雄の人気を物語るものであった。