これもモデルは、おそらくカミーユ・クローデル。黒は、ブロンズ。光を吸収し、重厚な味わいに。白は石膏または大理石。光を跳ね返し、やわらかなニュアンスを加味する。実際、ロダンの胸像は、男性はブロンズ、女性は石膏または大理石の作品が多いという。
展覧会は、ロダンとカミーユ・クローデルの胸像で始まる。ロダン像は、カミーユ作のブロンズ、カミーユ像は、ロダン作の石膏像。こちらは、型とりのためのつぎはぎが残っている。このつぎはぎが、ロダンとの愛憎に精神を病み生涯を終えたカミーユの人生を暗示しているようで、痛々しい。
なんだ、ロダンって、じいさんじゃない、こんな年寄りに狂うほどに焦がれてしまうなんて、どうしたのよ、カミーユ!と、思うけれど、ブールデル、マイヨール、荻原守衛そして当のカミーユと、ロダンの弟子は、みな個性豊かに花ひらいている。残されたロダンの作品も、すばらしいものばかり。たまたま男と女であったために、精神だけではなく、肉体のくびきをも背負ってしまったのだろうか。「地獄の門」のパオロとフランチェスカのように。
今回の展示物は、パリのロダン美術館の所蔵品を中心としての構成であったが、そこに色濃く漂うのは、カミーユ・クローデルの影であった。黒と白が相反し、また相補完するように、ロダンにとって、カミーユは、やはり、ファム・ファタル、特別な存在であったのだ。