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カテゴリ:絵画.・アート
1月16日、アンドリュー・ワイエス氏が亡くなった。 12月に行なわれたBunkamuraザ・ミュージアムの展覧会では お孫さんと元気に語り合う91歳の氏をヴィデオで拝見していたので まだまだお元気に活躍されるものと思っていた ご冥福をお祈りします。 と、いうものの、ワイエスが日本で知られるようになって、随分久しい 氏も、常々「時分の絵画は日本で理解されることの方が多いのではないか」 と周囲に話していたという。 Bunkamuraザ・ミュージアムの「アンドリュー・ワイエス--創造への道程」 (現在名古屋市の愛知県美術館で開催中) は、なかなかに興味深いものであった。 一つには、あまりの多作のためいままでわたしの興味を惹かなかったこの画家の 手法が油絵ではなく、テンペラ・ドライブッシュ・水彩という手法であったこと そして、さらにその創作技法が 下書きとしておびただしいスケッチを描き そのスケッチには人物の存在が含まれていて けれど、作品世界として確立されたものからは その人物の存在が省かれていること。 残っているものは昔日の面影を残す「モノ」で構成された風景であるのだけれど その風景は「人」の不存在という存在を含めた風景であること その作業が延々と行なわれていくことがワイエスの創作の道程であると 代表作の一つとされる「クリスティーナの世界」 ここからクリスティーナを「消して」しまった野原と、丘の上に立つ「オルソンハウス」を ワイエスは繰り返し描いている。 住人はすでになくなり、ハウスは朽ちて行きつつあり けれど、わたしの心の中には、過ぎし日は鮮明に刻まれている とでも言うかのような、延々とした営為であった。 展示品の多くは 埼玉県朝霞市にある「丸沼芸術の森」にある「オルソンシリーズ」と ワイエス夫妻のプライヴェートコレクションから構成されていて 従来の「アメリカン・リアリズム」という概念を打ち砕くかのような ワイエスの内面に迫る良い企画であったと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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