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じゅびあの徒然日記

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2006年11月20日
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精神科の入院、というのは、他の科の入院とは全く違うシステムを持っている。
精神科の入院だけが、医師法だけでない独自の法律で縛られているからである。

身体の病気なら、「あなたは○○という病気で、××の状態です。△△の治療をしたほうがいいので、すぐに入院をしたほうがいい。入院でないと治療できないです」と言われれば、少数の方がセカンドオピニオンを求めることはあっても、大多数はイチもニもなく入院しているのではないか。
もちろん、入院治療なんてイヤだなあとか、そんなに大事なのかとか、何とか外来でやれないかとか、入院なんて不安だとか、お金がかかるとか、いろいろ思っても、である。
通常自ら進んで入院をしたいという人はあまりない。入院が好きという人もあまりない。
だが、「先生がそういうのだから、それしかないね」と指示通り、万障繰り合わせて入院する。

ところが精神科の入院は、イヤと言う人を入院させることは原則、できない。
どれだけ医者が入院での治療が望ましいと本気で思ったとしても、「自分に病識(病気であるという意識)がなく、治療への理解も協力もなく、外来通院での治療が明らかに困難であると見立てられるどうしてもの場合」でないと、強制的な入院はさせられない。
たとえ診察室でだけ、患者さんがネコをかぶっていたとしても、おとなしく診察室に座って、興奮することもなく担当医と(一部奇異な言動があったとしても)疎通性のある対話ができ、見た目だけでも治療に対して理解を示し、本当は薬なんて捨てるつもりでも、「外来で薬ものみますけど、入院はイヤです」と言えば、入院させることはできないのだ。
まあ、ネコをかぶっている場合は、実は医者のほうも、診れば判る。
ずっとかぶり続けているのはご本人にも難しいので、たいてい日を改めて入院ということになる。

以下が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第22条の3と4にある、本人の同意に基づく「任意入院」というものである。
この法律と言うのは、精神障害者の人権を守る、という側面が強い。
もちろん、私だって患者さんの人権は守られるべきとは思う。

第二十二条の三  精神病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
第二十二条の四  精神障害者が自ら入院する場合においては、精神病院の管理者は、その入院に際し、当該精神障害者に対して第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせ、当該精神障害者から自ら入院する旨を記載した書面を受けなければならない。
2  精神病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(以下この条において「任意入院者」という。)から退院の申出があつた場合においては、その者を退院させなければならない。
3  前項に規定する場合において、精神病院の管理者は、指定医による診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、同項の規定にかかわらず、七十二時間を限り、その者を退院させないことができる。
4  精神病院の管理者は、前項の規定による措置を採る場合においては、当該任意入院者に対し、当該措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。


これって結構、誤解する患者さんがいらっしゃる。精神科の入院は、自分が希望すればいつでも入院できて、退院したいと言いさえすれば、いつでも退院できる、と。
身体の科と違って、精神科の患者さんの中には、「自ら入院したい人」が多くいらっしゃる。
何らかの理由で、家庭にいたくないとか、職場に出たくない、とか、学校に行きたくない、とか。
いる場所がないから、入院していたい、とおっしゃる。
また病院というところは、非常に保護された環境下。看護職員は呼び止めれば話を聞いてくれる。
たとえ、家族が話をあまり聞いてくれなかったり、話しかけるとイヤな顔をしたりしても、職員はそういうことはない。だから病院のほうが居心地がよくなってしまう、という患者さんもある。

入院適応を決めるのは以前にも触れたが、受診先の担当医。
担当医が入院は必要ありません、と判断すれば、いくら患者さんが希望しても入院にならない。
紹介の場合、紹介元担当医の「当分入院させておきたい」という意図が働くと、患者さんは当然入院させてもらえるものとすり込まれてやって来られるので、大変困るのは、以前述べたとおり。

書面で知らせろ、と法律にあるが、この書面ってのの内容も問題。
「任意入院のお知らせ」という書面には、こうある。
「あなたの入院は、任意入院でありますので、あなたが退院を申し出れば、退院できます。」
こういうことは、どう考えても身体の病気ではありえない。
身体の病気の治療では、医師が善意に基づいて治療を行なっていることが前提で、精神科医師だけが儲けのために治療をしたり、入院をさせたりしていることがありうる、とでも言いたげだ。
退院したくない患者さんなんていない。みんなみんな、退院したい。
私だって、退院なんて、できるものなら、一日も早くさせたい。
法律を厳格に運用するので、任意入院の患者さんが夜間休日に「退院したい」と言い出すと、すぐに退院させなければいけなくなる。
次の外来予約日も決まらず、退院後どうやって治療を続けていくかや、生活面や復職に関して主治医と話し合いもできないまま、だ。
せめて、退院したくなったら、原則退院できますが、まず主治医に言ってよく相談してみましょう、とか、夜中に退院したくなった時は、朝主治医が出勤するまでは、待ちましょうねとか、そういう常識的なお話にはならないのか。
上記の72時間お留め置きできる、というのは、あくまで患者さんが大暴れして「退院しろって声が聞こえてくるから退院するんじゃ」と言っているような場合。
指定医診察を行なって、保護者が来院して入院継続の同意を確認でき「医療保護入院(また次回に話す予定)」に繋ぐまでの、時間的猶予という意味合いだ。
普通に疎通のある患者さんが夜中に突然「退院したい、うちに帰りたいなぁ」とポツリと言ったら、もちろん看護師も当直医も説得を試みるが、「あのお知らせに、退院できると書いてあった!私は法律で退院できるはずだ。引き止めるとは何事だ!」と言われればすぐに退院させざるをえない。
これって、普通に考えて無理がない?

お知らせを渡しながら、仕方ないので一応自分の入院患者さんには、「法律的にはこうだから、これは私からのお願いなんだけど、夜中や休日に退院したくなっちゃった時は、何とか私が来るまでだけは、待っててよ。黙って帰っちゃわないでね。」とお願いしている。

ああ、書類仕事を片付けるのがイヤで、ついブログに逃避してしまった...。
ただいま、会議待ち。その前の別の会議が長引いて、開始が著しく遅れているのだ。
まだ、終わらんのか!?





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最終更新日  2006年11月20日 15時57分58秒
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