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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
昨日、本人の同意による入院について書いた。
今回は、入院治療が不可避であるが、本人からどうしても同意が取れない、もしくは確認不可能な場合の入院で代表的な場合、「医療保護入院」について書く。 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律では、以下のようになっている。 第三十三条 精神病院の管理者は、次に掲げる者について、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。 一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの 二 第三十四条第一項の規定により移送された者 2 精神病院の管理者は、前項第一号に規定する者の保護者について第二十条第二項第四号の規定による家庭裁判所の選任を要し、かつ、当該選任がされていない場合又は第三十四条第二項の規定により移送された場合において、前項第一号に規定する者又は同条第二項の規定により移送された者の扶養義務者の同意があるときは、本人の同意がなくても、当該選任がされるまでの間、四週間を限り、その者を入院させることができる。 3 前項の規定による入院が行われている間は、同項の同意をした扶養義務者は、第二十条第二項第四号に掲げる者に該当するものとみなし、第一項の規定を適用する場合を除き、同条に規定する保護者とみなす。 4 精神病院の管理者は、第一項又は第二項の規定による措置を採つたときは、十日以内に、その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。 第三十三条の二 精神病院の管理者は、前条第一項の規定により入院した者(以下「医療保護入院者」という。)を退院させたときは、十日以内に、その旨及び厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。 第三十三条の三 精神病院の管理者は、第三十三条第一項又は第二項の規定による措置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。ただし、当該入院措置を採つた日から四週間を経過する日までの間であつて、当該精神障害者の症状に照らし、その者の医療及び保護を図る上で支障があると認められる間においては、この限りでない。この場合において、精神病院の管理者は、遅滞なく、厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。 22条の3の規定というのは、昨日述べた任意入院のことである。 またこの法律内の「保護者」は以下のように規定されている。 第二十条 精神障害者については、その後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は保護者とならない。 一 行方の知れない者 二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族 三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 四 破産者 五 成年被後見人又は被保佐人 六 未成年者 2 保護者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、次のとおりとする。ただし、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人又は保佐人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。 一 後見人又は保佐人 二 配偶者 三 親権を行う者 四 前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者 3 前項ただし書の規定による順位の変更及び同項第四号の規定による選任は家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)の適用については、同法第九条第一項 甲類に掲げる事項とみなす。 第二十一条 前条第二項各号の保護者がないとき又はこれらの保護者がその義務を行うことができないときはその精神障害者の居住地を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)、居住地がないか又は明らかでないときはその精神障害者の現在地を管轄する市町村長が保護者となる。 以前は身寄りがすぐ見つからないと市町村長同意による医療保護入院というのが非常に多かった。 「俺の保護者は市長さんのはずなのに、市長さんは1回も来てくれない」と嘆く長期入院患者さん があるが、市長さんは患者さんのことを知らない上、入院した時と今とでは市長さんは別の人。 現在はできるだけ市長同意を減らして、任意後見に切り替えようというのが時代の流れ。 任意後見がつけば、司法書士さんや弁護士さんが、保護者となって患者さんの財産の管理から重要事項の決定などを代行して行なってくれる。 任意後見についてもいずれ説明するつもり。 今は家族も多様化しているので、この保護者というのも、微妙。 配偶者のいる患者さんの場合、いくら実親が連れてきたところで配偶者以外は保護者になれない。 だがこれは基本で、離婚を前提に娘が実家に戻っているとかいう場合は、難しい。 こういった場合本人は意味不明のことを言っているので、親が(娘をこんなにした、と思っている相手と)離婚させたかっただけ、ということもありうる。 離婚調停まで進んでいれば、調停を行なっている「相手」が、患者さんの利益になるような入院を決定すると考えるのにはっきり無理がある。 意味不明なことを言っている娘が、あちこちで婚姻を繰り返し、どうも娘が言うには今の配偶者は服役中らしい、と連れてきた親が言っている、なんてのはもうこっちも訳が分からない。 結婚しているかどうかを戸籍謄本で確認しているわけではないから、嘘をつかれればそれまでだ。 病院の身元確認というのはせいぜい、写真入でもなく、家族親族関係も記載のない保険証。 結婚はしていないと、患者さんが「妹」を連れてきたため、保護者にして入院させたところ、全て手続きが済んだ後から、「妹」はそのへんの飲み屋のおねーちゃん、と判ったこともあった。 確認したが、これは仕方が無い、ということで騙されてしまった病院に罰則はないそうである。 騙した側は、罪に問われるかもしれないのでご注意を。 患者さんが未成年者の場合、親権者が二人いれば両親ともの同意が必要で、これは自動的に親権者=保護者。 だが20歳になった途端に、片方の親を扶養義務者にして家庭裁判所の選任を受ける手続きが要る。 20歳の誕生日前後に入退院を繰り返されたりすると、親御さんは何が何だか判らないようだ。 アパートの住人がおかしなことを言っている、と大家さんが「善意で」病院に連れては来たものの、大家さんは、ひたすら患者さんを置いていきたいだけ。 こういう例は、かなりある。大家さんとしては、近所からの苦情も出て、困っているわけだ。 身寄りが無いのなら家庭裁判所で選任手続きを取るから保護者と、身元保証人になるつもりはあるかと訊いても、「私は何の関係も無いのに、迷惑をこうむってきた。なんでそんなことまでしなくちゃいけない。ここまで連れてきただけでもありがたいと思ってもらわなければ」と言われる。 ありがたいと思ってもらわなければ、と言われても、出て行った担当医としてはありがたくない。 アパートを貸した時に、連帯保証人などつけているはずなので、遠かろうとなんだろうと連絡して、保護者と必ずセットで連れてきてもらわなくては入院させようがない。 時々、遠方の人が警察に保護され(この逮捕でなくて保護、というのも私は本質的には理解できない。犯罪を犯していないのに警察に身柄を拘束されていいのか。)、すぐに身内に連絡が取れないとか、「やっと母親と連絡が取れたが息子とは絶縁したから知らないと言っている」という理由で、「市長同意、生活保護をつけて、医療保護入院をお願いしたい」と指示されることがある。 こういう時、警察といえども公務員、やはり目の前の仕事を早く片付けたいのだなと思う。 今のご時勢、小学校の前を徘徊しただけで通報されるので、そこで警察にちょっと訳の分からないことを言えば、すぐ保護されどこかの精神科へ入院という話になる。 警察の方には悪いが、「まず保護者に連絡をつけ、身柄を渡してからにしてください。その後保護者が受診させたい、と連れてくるのならお断りはしません。もし引き取りにも来ないのなら、保護責任者遺棄の罪に問われます、と警察なら言えるのではないですか」と説明し、お断りしている。 後から保護者が出てきて、「勝手なことをしやがって」と訴えられても困る。 また、「身内に絶縁されたから」と市長同意と生活保護をつけて入院できるのなら、世の中の精神病圏の患者さんの身内は大半が、実際はどうあれ、患者さんと絶縁したと言うと思う。 生活保護をつけたら、医療費の負担はすべて行政持ち。身内の経済的負担はゼロになる。 実際に見捨てたかどうかは別にして、とりあえず経済的負担はゼロ、身体の病気が発生したときの責任もゼロ、退院決定された時すぐに引き取る責任もゼロにしておいて、面会などだけ、自由にし、病院に保護者の選任をと言われても無視し続ければいい、ということになる。 警察には身内を引っ張り出す力があるが、病院には一度入院させてしまったらその強制力が無い。 刑法に触れることをして警察に捕まった人が、意味不明なことを言っている場合は、措置入院という別の形態になる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月21日 22時16分09秒
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