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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
毎年秋が深まると、最大の仕事のひとつが入院患者さんへのインフルエンザワクチン接種である。
多くの患者さんが病棟の中で生活をしている以上、外からインフルエンザウイルスを持ち込まれたら、あっと言う間に集団発生してしまう。 職員はもちろん全員接種だが、慢性期長期入院の患者さんが多いような病棟では原則全員接種して頂きたいし、それ以外でも65歳以上の方々には、オススメして接種にご協力いただいている。 まず、確保すべきワクチン数の確認のため、1ヶ月ほど前に、患者さんたちに同意を取る。 意外にこれが一苦労なのだ。 「去年もやったから知っているよね?」 「そんなん知らん。」 「うつると大変だから、やっておこうよ。」 「そんなんやりたかないね。」 「そんなこと言わないで。あなただけじゃないよ。みんな、やるしさ。」 去年問題なく協力してくれた患者さんが、何にも覚えていない(^^;)。 統合失調症の患者さんたちだから、無理に頼み続けると時には怒って興奮しだしたりしてしまう。 無茶なこと言ってるわけじゃないのに、そんなに無意味に怒んなくてもいいじゃん。 1回の診察で同意が取れないときは、また日にちを空けて、忘れた頃にお願いし倒す。 こうして、どうにか締め切りまでに本人の同意を取り、今度は家族に料金を連絡しご協力頂く。 めでたく接種にこぎつけたはずなのだが、接種日にちょっと熱っぽい人、外出してしまう人、土壇場になって拒否する人。 こっちも外来などにかからない時間を選んで手を空けるのだが、なかなか1日2日で終わらない。 1バイアルで1ml。成人一人あたりの接種量は0.5mlなので、偶数になる人数ずつ行う。 実は接種そのものよりも、その前の説明、トークが疲れるのだ。 ●●××さんでいらっしゃいますね。(氏名の確認) 今日の体温は、36.5℃ですね。本日の体調はいかがですか? (問診票を確認し)現在当院で出されているお薬だけをのんでいるということですね。 本日、ワクチンを接種させていただけると思いますが、簡単に説明させていただきます。 既にご存知かもしれませんが、お聞きくださいね。 このワクチンはインフルエンザウイルスに対するワクチンです。 毎年今季流行するウイルスの型予想に基づいて製造されたワクチンを接種しています。 残念ながら、予想が外れてしまえば、せっかく接種しても無効になってしまう場合がございます。 インフルエンザワクチンの有効率は1回の接種で80%程度と考えてください。 つまり、5人接種すれば4人には免疫効果が期待できるということです。 5人のうち1人は、残念だけど接種しても免疫効果が出ないという方がいらっしゃいますので、絶対にあなたがかからないという保証はできません。 しかし当病棟のように、たくさんの方が同じ空間にいらっしゃる環境下で、5人のうち4人に免疫効果が見込まれれば、外からウイルスを持ちこまれる可能性、1人発症してもそれが一気に蔓延する可能性をぐっと低くすることが出来ます。 それが、集団予防という考え方です。 当院では去年も一昨年もワクチン接種を実施して来ましたが、院内でのインフルエンザ発症はゼロでした。 それだけの実績もありますし、今年も同程度の効果が期待できると考えて実施しております。 先ほど申しましたように、ワクチンはインフルエンザウイルスに対する予防効果を期待するものであり、それ以外のウイルスによる通常の「かぜ」には全く予防効果がございませんので、ご了承ください。 局所の腫れや痒みが出ても数日で治まりますので心配ありませんが、あまり掻かないでください。 重篤な副反応は接種後30分以内に出やすいので、もし気分が悪くなったら早めに看護職員に伝えてくださいね。 他に軽く風邪をひいたような熱感や身体のだるさも感じられるかもしれませんが、いずれも明日くらいで消えると思います。 以上の説明を聞いて、本日の接種を希望される場合は、「接種を希望します」を○で囲み、右側に署名をお願いしますね、あっ、ここですよ....。 (バイアルを見せて)本日は▲▲▲のインフルエンザHAワクチン、ロット番号は★★★☆です。 最終有効年月日は、2007年10月×日ですので、確実に有効期限内のものを使っていますので、ご安心ください。 (注射器を見せて)接種量は、0.5mlになります。 どちらの腕にしましょうか?筋注ではないので、腕がまくれればよろしいですよ。 では接種していきますね。お薬が入るシカーッとした感じがありますが、異常ではないですよ~。 じゃ、終わりますね~。あっ、今はそんな一生懸命揉まなくていいですよ。 お風呂も入って大丈夫ですからね~。 これだけ、20回くらい連チャンで喋ると、舌が歯で擦れて、炎症を起こしてしまった。 中には、どのウイルスの型なのか全部教えろという強迫的な患者さんもいるので、その都度説明。 インフルエンザ予防接種をちまたで受けると、1バイアルの半分の価格にシリンジ代を足したより、ずいぶん上乗せされているけれど、これって皮下注の技術料というよりこのトーク代なんだろうな。 私は勤務医だから、これやったからって、儲からないけどね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月22日 20時33分22秒
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