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じゅびあの徒然日記

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2006年12月05日
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精神科をやっていると、時々患者さんの勤務先から、奇妙な診断書を書けと言われることがある。
もちろん勤務先が直接言ってくるわけではない。最初は患者さんを通して言ってくる。
決まった書式もなく、病院の用紙でいいので、診断名と、のんでいる薬の名前と量、いつになったら完全に治るのかだけを記載して、提出せよ、というやつだ。
患者さんは休んでいたわけでもないし、これから休むつもりもない。
この手の診断書は、まず精神科疾患を理由に、厄介ごとを避けて患者さんを解雇しようとする目的で勤務先が要求していると考えて間違いない。
冷静に考えてみよう。
風邪をひいて、あるいは血圧が高くて、あるいは糖尿病で薬をのみながら、しかし欠勤することなく仕事をしていて、投薬内容や量を書いた診断書提出を求められることが通常、ありうるか?
患者さんは、「職場で出せと言われたのですが書いてもらえますか?」と連絡してくるので、「そういった内容の診断書は、あなたに不利になる可能性があるがそれでも書きますか?」と尋ねる。
そうすると、「それは困ります。どうしたらいいでしょう。でも職場は毎日、どうしても出せと言うんです」と言われるので、そのような診断書は作成しないから、どうしても職場が病状説明を求めるのなら、あなたの診察日に上司を連れていらっしゃい、と指示する。
そうすると大概、職場からじかに電話が掛かる。「診断書を作成しないとは何事だ!」と。
だが、患者さんの前でしかお話しません、と電話での交渉を突っぱねる。
来院させて、「どういう目的の診断書ですか?」と尋ねると、処方内容や量、病名の診断書から、今後の勤務が続けられるかどうか、大概医者で無い人間が、判断する材料にすると言う返答。
「その判断をするのは、こちらですから、必要なら休職の診断書を出すわけです。現状では治療は必要なものの、問題なく勤務もこなせていますし、無理に休ませるという段階ではないです」と言い切ると、「今後絶対何も起こさないと言い切れるのか」とこれまた大概食って掛かられる。
「もしこの患者さんが何か起こしたら、普通に刑事責任が問われますよ。世の中で何か起こす人の大半は、正常とか健康と言われている人でしょう?」と私は決まって言い返す。
細かい処方内容まで、一般の診断書で求められるのはプライバシーに関わる問題だと思う。
そんなことまで職場に答える義務は無いから注意するように、と患者さんに言っている
いつになったら治るのかという質問も、いつになったら何も薬をのまなくてよくなるのか、再発しないのか、精神科の薬をのんでいる人間に仕事をされたら困るという職場の姿勢が見え見え。
やってきた上司に言う。「あなたは、自分は精神科の病気とは無縁だと思っていらっしゃるようだけど、あなただって、この私だって、明日かからないという保証はないんですよ。この患者さんだけが特別ではないんです。明日どうとか、半年後、数年後どうってことは、誰にも言えないんですよ。」

精神科の病気の場合、統合失調症でも、うつ病でも、神経症圏でも、自立支援が利用できる。
自立支援(以前は通院医療公費負担。こっちのほうが名称として分かりやすい?)というのは、厚生労働省が医療費削減を目指し、入院医療を減らす目的で、外来通院で患者さんにガンバって欲しくて、通院にかかる医療費負担を支援しましょう、というシステム。
だがこの診断書を書いていると、誤解して、「こんなもんが出る重い病気の患者に仕事をしてもらっては困る。どうして休職させないんだ。」と言ってくる職場がある。
障害年金の診断書ではないんだから、症状が重くなくても、まとまった期間通院する病気なら、出るんですよと言っても、なかなか理解されない。

職場で「精神科にかかれ」言われたので来ました、という患者さんの「職場」はこういう職場が多いので、実は初診の時点で身構えている私。
しかも、何度もしつこく「もうかかったのか」と尋ねておいて、かかったと聞くや否や診断書を取って来い、のパターン。

診断書一通でも、精神科特有の苦労があるのです。





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最終更新日  2006年12月05日 23時14分59秒
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