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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
精神科の患者さんの中には、職を転々としている人が数多く存在する。
もちろん、疾患のために転職を余儀なくされた人、職場の側からリストラされた人もいるが、いわゆる性格的に長続きしない人、職場の人間関係がうまくいかないとすぐに辞めたくなってしまう人がたくさん含まれている。 職場を転々とした挙句、「続かないので生活保護を受けるのに、診断書書いてください」と初診でおっしゃる若い人、は極端としても(実際に疾患があって通院治療を続ける気なら、話は違ってくるが、こういった人は一度診断書さえゲットしたら、二度と来るつもりがなかったりする。本当に病気で仕事が出来ず、一定期間治療をしても改善が見込めないのか、という判断は、簡単には出来ないし、治療を受けるつもりがなかったらなおさら出来ない)、どの仕事をしても、どの職場も自分には向いていなかった、などとおっしゃる。 話を聞いていて、「興味が持てて、楽しくて、やりがいもあって、自分の苦手な上司も同僚もいなくて、自分より仕事のできる新入りが入ってくることもなくて、みんな話を分かってくれて、お洒落で、社会的地位も高くて労働時間や賃金の条件もよくて、いつも決まりきった仕事でなくて、創造性があって、個性が活かせて、という仕事や職場がそんなにあるだろうか?」と思う。 多分、その考え方で行くと、どの仕事も合わないだろうな、と思わざるをえない。 というより、やる前から自分に合う仕事、なんて絶対ないと思う。 で、確かにこう思うので、多くの医者は、今の仕事を辞めようとしている患者さんにこう言う。 「まあ、そう言わずに、もう少し続けてみたら?」 「せめて、次の仕事の目処がついたら、辞めてもいいけど、あまり焦って決めないようにね。」 「辞めるのはいつでもできるけど、次が思うようにあるとは限らないよ」 だけどね。 一番職を転々としているのは、アンタたちだよ、お医者さん。 医局派遣か何か知らないが、数年であっちこっち動いているのは、誰さ? ちょっと嫌なことがあると、どうせじきに変わるからいいやとか、医局に異動希望を出せばいいやとか、思ってるよね。 確かに私だって職場の愚痴をこぼすことあるよ。 でもそれを聞くと周りの医者たちは「よくそんなところでガマンしてるね。僕だったらすぐ替わるのに」とか言っちゃってさ。 職場で嫌なこと、上司が気に食わないこと、他の医者にむかつくこと、看護師の陰口に腹立つことなんて、いくらもあるさ。 でもね、私がそれを理由に替わったら、患者さんたちに迷惑がかかる、例えばそのむかつく他の医者が次の主治医になって、自分の患者さんたちを診るようになったらどうなるか、って考えると、簡単に辞められないんだよ。 世の中には、人格的な偏りのある患者さんを、なんとか療法をやります、と称してたくさん集めている精神科医がいる。 私があの人たちを見ていて、腹が立つのは、さんざん偉そう言っといて、最後に診きれなくなると放り出して、逃げること。 紹介状を書いていきなり押し付けられたって、そういう患者さんたちは、前医を心から信奉し、それまでの方針を継承して欲しいと願っている。 入院でお願いします、と言われることもあるが、それまで外来で何年もやってきた末にこうなるって、自分の治療の失敗じゃないのか。 同じようにやってください、と言われたって、考え方も違うし、真似はできない。 で、自分は転勤して逃げる。何度も自分の患者さんをゼロからリセット。 特に××保健センター、みたいな一般の患者さんを診ない施設に異動しちゃえば、どんなに患者さんたちが追いすがろうと、逃げられる。 さんざんいじって、症状をさらに開花させて、診きれなくなって逃げるなら、最初からやれません、と言うか、深い部分には触らずに社会適応を維持するべきじゃないのか。 こういう精神科医に限って、「私のカウンセリングでよくなります」などという安請け合いをして、治療の失敗を認めない。 それどころか、他へ送って途端に何かが起きると、まだ転勤前だからと相談に行った家族に「そちらの医者の言動に原因があるんじゃないんですか」などとしらっと言う。 こっちは一応医者の世界の仁義として、本音ではいろいろ思っても、表立った前医の批判や、患者さんがこれまで受けてきた治療の否定をしないようにしているのに。 職を転々としている連中が、自分のことは棚に上げて、患者さんには職を変えないように言っている。 医者にはそんなこと言う資格、ない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年12月13日 06時51分20秒
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