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じゅびあの徒然日記

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2007年02月26日
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先日、患者さんたちに元気をもらったという話を書いたけれど、その続き。
今日もある患者さんに感謝。

私の患者さんの一人が予約外でやってきて、交通事故に遭ったと言う。
何年も不登校で引きこもり生活を送ってきた彼との出会いは2年前。
巻き込み型の確認強迫が主症状で、家族を振り回していた。
入院を勧めても彼は拒否し、外来での治療が始まったが、少し何か気になると(それ自体が、病気の症状なのだが)、薬の副作用ではないかと母親を確認によこす。
私の外来の有無、出勤日か否かに関わらず、連日母親が病院に現れる状態。
家族も疲弊してしまい、外来予約日に彼が訪れると私は言った。
「もうあなたの年なら大人なんだから、自分のことは自分でしなさい。薬のことで訊きたいことがあるのなら、自分で来て自分で話しなさい。いつまでもお母さんにやらせてはいけません。それから、通院間隔最小単位の1週間がもたない、ということは外来ではやれないということだから、入院しなさい。」
そんな症状だったから、入院してからもなかなか大変だったが、退院してデイケア、作業所と毎日のように通い、いつの間にか模範的な患者さんになっていた。
高校を受験しなおしてもう一度勉強をする、という目標も出てきた。

交通事故と言っても、状況を聞くと相手の過失のほうが圧倒的に多いようだ。
事故を起こした、あるいは事故に遭った、という経験のある人なら分かるが、その瞬間はパニクって頭が真っ白になってしまうもの。
その状況下で警察の到着を待ち、パニクりながらも事故の説明をしたと言う。
うちの息子は悪くないからビタ一文払わん、と怒る父親をほうって保険会社にも連絡し、自分で状況を説明したそうだ。

もちろん、事故に遭ったのはいいことではないし、怪我はなかったかと心配もしたが、一方で「入院したときあんなだった彼が、健康な人でも動転してしまう状況下で、家族の助けもなく、警察や保険会社相手に交渉を進めた」ということに私は驚き、感動した。
だから「自分ひとりでそんなことまでできたなんて、成長したねえ。」と彼に言った。
すると彼が、言うのだ。
「僕がここに来て入院する前、じゅびあ先生が言ったでしょう?もう大人なのだから自分のことは自分でしなさい、いつまでも何でもお母さんにさせていてはいけないって。僕の胸にはあの時の先生の言葉がずっとあるんです。だから僕は先生にお任せして治療を受けよう、そうしないと自分はずっと変われないと思えたし、自分のことは自分で先生に話さなきゃいけないって思ったんです。それでなかったら、今僕と先生の間の信頼関係はなかったと思う。」
...ああ、また感激。私は正直にその思いを彼に伝えることにした。
「そんなふうに言ってもらえると、私はこの仕事をしていてよかった、と思えますよ。とても、励まされます。私のほうが、ありがとう」
彼の目がいつの間にか、潤んでいた。
来たときは、怒りや不満以外の感情表現がほとんどない、無表情な患者さんだった。
まるで、別人。

やはり、私は職場に恵まれなくても、患者さんには恵まれているらしい。





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最終更新日  2007年02月26日 19時27分49秒
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