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じゅびあの徒然日記

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2007年04月22日
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カテゴリ:カラダの病気
死にそうになった経験、ってあるだろうか。
例えばすんでのところで車にはねられそうになった、とか。
いや、それは瞬間的なものだろうけれど、自分が死ぬかも、という恐怖にある程度連続した時間さらされた経験が、あるか、ということ。
飛行機に乗っていてトラブルに遭い、生きて帰れるか...と思ったときのような。

20歳の時に私は手術を受けている。
街中を歩いている時、突然の腹痛に襲われた。
腹痛だけではなく、強烈な吐き気。
耐え切れず、側溝に思わず吐いた(そのままにしてきてしまって、ゴメンナサイ...)。
吐いても腹痛は止まらない。
真夏の炎天下だったから、そのせいかと思ったけれど、景色が歪んで見えた。
その当時お付き合いをしていた医学部学生と歩いていたのだけれど、久々のデートで体調不良を訴え、帰りたがる私に彼はヘソを曲げ、私を置いて一人スタスタ歩いていってしまった。
待って、と追いかけることも出来ない激痛、思うように声も出ないほど。
生まれて今まで体験したことの無い痛みだったが、救急車を呼ぼうにも親に迎えを頼もうにも、携帯電話が当時は無かった。
駅まで行けば電話がある、と思ったけれど、電話をかけて、親が迎えにくるのを待つとすぐ出てくれたとしても15~20分。
その時間を立って待っていられる自信が無かった。
フラフラしながら駅にたどり着き、タクシーにへたり込んだ。
家までの15分、中で吐いてはマズイ、ということばかり考えていた。
そういうときに限って「今日は暑いですねぇ」なんて運ちゃんが愛想よく話しかけてくるが、私の返事は完全に上の空。
運ちゃんも察したのかそのうち黙ってしまった。
転がるようにタクシーを降り、インターホンを押して待つのももどかしく、私は玄関で倒れこんだ。
「お腹...痛い...すぐ、病院...」
只事でない私の様子に母はすぐかかりつけの医院へ連れて行ったが、診察の上大きな総合病院へ紹介された。

総合病院で診察を受けた結果、私は虫垂炎(盲腸)と診断されたが、その日は虫垂炎の患者が多く、私は3番目。
抗生剤の点滴を受けながら、手術の順番待ちとなった。
胸部はよかったが、引き続き腹部レントゲン写真を立位で撮っている間に、モーレツに頭がフワッとしてきた。
写真を撮るまで一瞬なんだからガマンしなきゃ、マズイ、と思いながら取っ手を握る両手に力をこめた。
「はい、息を止めて」
そう言われたところまで確かに覚えているのだが、研修医の先生に「じゅびあさん、大丈夫ですか」と声をかけられて気がついた時にはレントゲンフィルム台の下に崩れ落ちるように倒れていた。

5~6時間、待っただろうか。すっかり夜も更けた頃、私の手術が始まった。
予定手術時間は30分ほど、手術室を入ってから出るまでで、1時間ほどと聞いていた。
虫垂炎ということで腰椎麻酔だったから、私の意識ははっきりしている。
手術室内の会話も全て聞こえている状態。
手術が始まって間もなくのことだ。
何となく、なのだが周囲の雰囲気が急に変わったのが分かった。
それまで和やかだったのに、緊迫して、いやに騒々しい。
「××先生を呼んで」「輸血の準備をして」という会話の内容が、聞こえてくる。

...ちょっと、虫垂炎の手術で、輸血?
普通、そんなことあるわけないじゃないよ。
何かしくじったな。
どこか大きな血管でも傷つけたんじゃない?
ちょっと、あたし助かるんでしょうね。
このヤブ医者!

なんてことが次々頭をよぎった。
そうこうしているうちに、鳥肌が立って震えてしまうほどの寒さがきた。
吐き気がする上、だんだん息が苦しくなってきて、酸素マスクをかぶされた。
さっきの研修医の先生が「じゅびあさん、気持ち悪い?気持ち悪いね。酸素吸おうね」と声をかける。
大出血しているのだ、ということが、それだけで分かった。

あかん、あたし、死ぬんだ...。
なんでアッペの手術(虫垂切除術)で死ななきゃいけないの...。

お腹の中の、血液を吸引する音がする。
これって経験しないと分からないのだが、確かに麻酔で痛みは抑えられていても、吸引したとき、お腹の内側の壁が掃除機に貼りついて吸われるような何とも言えない気持ち悪い感じがある。

研修医の先生が「もう、終わるからね」と声をかけた。
30分って、こんなに長く感じるものだろうか。
どうやら縫合しているらしい。
とりあえず、何とか生還したようだが、体温を奪われ、異常に寒い。
歯の根が合わず、ガチガチと音を立てるほどだった。
意味なく、涙が次々に伝った。
顔面も冷え切って、自分の涙だけが妙に温かい。
ちらっと時計を見ると、手術開始から、2時間半が経過しているのが分かった。
その時、意外な言葉が私の耳に入った。
「オバリー、病理に回しておいて」

...オ、オバリー?オバリーって卵巣だよ?
どうして、ここでオバリーが出てくるのよ。
訊きたいけれど、口が利けない。

その夜私はICUに入れられた。
単に空床がなかったからである。
痛くても眠れなくても尿意を催しても、周囲に遠慮して看護師を呼べなかったのは、前の話の中で少し触れたとおり。
鼻から胃まで入れられたマーゲンチューブが喉に当たって、唾を飲み込むたびにゲッ、ゲッと反射が起きる。
私はいったい何だったの、と不安を残したまま、夜が明けた。
翌日一般病床に移されてから、私は衝撃の事実を知ることになる。





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最終更新日  2007年04月22日 21時52分32秒
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