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じゅびあの徒然日記

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2007年06月13日
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カテゴリ:うつ病
「うつ病」の意味が広くなって、1億総「うつ病」時代?みたいになってきた。

従来からの、狭義の「内因性うつ病」...つまり、理由があるわけではないけれど、脳の中で出る物質のバランスが狂って、気分が沈む...という人ばかりではない。

ICD-10、DSM-4(←ローマ数字)の診断基準に当てはまるものを、「うつ病」とするのなら、性格の問題が強く影響している場合や、何か明らかなストレス要因があって、それで気が滅入って眠れなかったり、意欲が出なかったり、人と会うのが億劫になったり、集中困難になったり、考えがまとまらなかったり...。
そういうのも全て「うつ」と診断されてしまう。
診断基準は、「症状が項目のいくつ以上当てはまる」というのが根拠になるからだ。
だから同じ診断基準に当てはまるからと言って、みんなが○○をのめばよくなる、というわけにいかない。

この頃やってくる「うつ病」の患者さんたちには、どことなく同じような人格傾向の人が多い。
生真面目で、几帳面で...に代表される「うつ病性格」ではなくて、どこか「回避的」なのだ。
最初からそうだったわけではない人でも、だんだん「回避的」になっていく。
仕事を休んでしまっている...と来院して、治療開始時に「休職の診断書」を医者が書いたとする。
休職の診断書を書いたこと自体は間違いではない。
だが、復職がとても、大変なのだ。
診断書の期限が迫るとそれまで落ち着いていたにもかかわらず「まだ自信が無い。とても行けそうに無い」と言い出す。
仕方がなく、追加で診断書を書く。
また期限が迫ってくると「仕事のことを考えて、不安で眠れなく」なり始める。

ある程度休職をすると、復職をするときに不安なのは、誰しも同じだ。
例えば産休明けの女性なら、誰もがくぐってきた関門。
「ブランクがあっても、仕事についていけるだろうか」
「以前と変化している部分は無いだろうか」
「周囲は温かく受け入れてくれるだろうか」
こういう思いもあるだろう。
「やたらに気を遣われても、居場所が無い」
「また元の環境に戻れば、うつが悪くなるのではないか」
でも、ここを乗り越えないと、元の生活には戻れない。
少しずつ、元の生活に近づけていく、その過程で、自信も生まれる。

難しいのは、休職が長くなりすぎると、本当に戻れなくなってしまうということ。
働かなくて食べていける収入がある人ならいいが、ほとんどの患者さんは、そうはいかない。
私たちの仕事は、患者さんが元の生活を取り戻す手伝いをすることだから、休ませるだけで戻せないのでは何にもならない。
以前の環境に戻ると、またストレスで「うつ」になるから、と言っても、新しい職場や業務に移るのも、大きな「賭け」で、もっとストレスになる可能性が高い。

教科書にあるように、「とにかくうつには十分な休養を」と言いさえすればよかった時代は、10年前に終わっているように思う。
そういうと患者さんは、「厳しい先生」と思うかもしれないが、休みなさい、と言って診断書を書くだけなら、医者はいくらでも書ける、簡単な話だ。

それだけ、「うつ病」も多様になっているということ。

私の患者さんで、こんな人がいた。
やはり復職を渋っていた人だが、「これで最後だよ。この診断書の休職期間は、復職のためだからね」と私は念を押した。
復職の数日前、「自信が無い。いよいよ行かなくてはいけないと思うと、死にたくなった」と泣きながら予約外で受診したが、「また愚痴は聞いてあげるから、行っておいで」と出した。
その彼女が今言う。
「先生の言ったとおりでした。ここで出なかったら、私の代わりに次の人が正社員になって、私のポストがなくなるところだったんです。」
「私は今まで仕事のことばかり、考えてきました。家にいるときもです。でも、仕事って、自分の好きなものを買ったり、好きなことをするために、お金を稼ぐ手段なだけ、と気づいたんです。」
「家へ帰ったら、自分をいたわってあげる時間を作るようにしました。アロマを焚いて、むくんだ脚をマッサージして。でも、そのオイルや、道具を買うにもお金がいるんですよね。仕事って、そのためにしているだけなんだって、考えられるようになったんです。」

そこまで自分で気づけたら、彼女はもう「うつ」から脱したも同然だ。





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最終更新日  2007年06月13日 22時26分26秒
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