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じゅびあの徒然日記

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2007年06月24日
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精神科に初診でいらっしゃる患者さんには、もちろん本当に病気の人が多いけれど、病気でないけど気になって相談に来る人も結構いる。
一方で、本人は病気じゃないと思っているけれど、家族や周囲の人には病気だと思われている人もいて、実際本当に病気、ってこともある。

頻度としてはあまり多くないけれど、今日は本人は病気だと思っていなくて、実際病気ではないけれど、家族が病気にしちゃってる(場合によってはしたがっている)というケースの話をしよう。

ある男性が家族相談で私の外来を訪れた。「妻がうつ病ではないか」という内容。
ご本人にいくら受診を勧めても、「私は病気なんかではない」と言って、連れて来られないとおっしゃる。
「妻は、家にいてもうわの空で、ぼーっとして。私の話を聞いていないことが多いんです」
「いつも無表情で。以前はこんなことはなかったんです。うつ病ではないでしょうか?」
よくよく私の方から質問してみると、奥さんは仕事を持っていて、毎日きちんと通勤し、業務をこなしている様子。
帰宅してから、家事も抜かりなく行ない、育児も外出もしている。
だが、男性に対しては無表情で冷たい対応。
心がどこかに行ってしまっているように、うわの空。
「外出する身なりなんかはどうです?」と尋ねると、以前よりキレイにして出かけ、夜遅くまで帰ってこないことも多いのだそうだ。
「精神科の病気って、外を徘徊してしまうようなこともあるんじゃないですか?」「家にいるのが辛くなってしまったんじゃないか」と言う彼。
....本気で言っているのだろうか。分かっていて気づかないフリをしているの?
でも、彼はいたって真剣な表情で、心底奥さんを心配してしまっているようだった。
まさか、あなたの奥さんは病気ではなくて、○○してるだけだと思いますよ、とは言えない。
結局、とにかくご本人を診ない限りは分からないから...とお茶を濁してしまった。
本当は、来るわけないって判っているけど。
一番の原因は、あなたが女心を分かっていないこと、と言いたいのを呑み込んだ。

ある女性が、夫に連れられて外来にやってきた。
妻がうつ病らしいので予約を取りたい、と電話をしてきたのは夫。
まずご本人だけを診察室へ招き入れると、ドアを閉めるなり女性が声を荒げた。
「私、離婚するんです。もう決めているんです。」
...面食らった。いや、もう決めているなら、私何も言うこと無いけど。
女性によれば、妊娠中から夫はネットで知り合った様々な女性と交際があり、子どもが幼稚園に入った今も、不特定多数の女性との交際が続いているという。
いくら止めて欲しいといっても止めないので耐えかねて、離婚をしたい、と言い出したが、「そんなことを言い出すオマエがおかしい」といって夫は話し合いのテーブルにもつこうとしないそうで、しまいには「オマエはうつ病だから、そんなことを言い出したのだ」と今日連れてこられたのだと言う。
「確かに夫の女遊びが分かって、私は暫く気分が落ち込んで、何も手につかなかった。今だって、夫のために家事をする気にはなりません。でも、それってうつ病なんですか?」
...それだけはっきり自分の意見が筋道立てて言えるってことは、違うだろうね。
交代で、夫を診察室に入れてみた。
「妻は以前と違って家事もやらないし、暗い顔をして、何かにつけてイライラして、話もできない。しまいには、離婚をする、と言い出した。そんなのは病気が言わせていることだと思って、相手にしていない」と夫が言う。
夫は妻が診察室で何を話したか知りたがったが、「直接奥さんに訊いてください」と言ってお話ししなかった。
「よくご夫婦で話し合ってくださいね」と帰したが、他に何とも言いようがない。

保健師と、遠方の兄弟姉妹多数で連れてこられてしまった、おばあちゃんがいた。
おばあちゃん、と言ってもさらにその母親が存命していて、自宅で介護をしていると言う。
確かに、世間と隔絶されたようなおばあちゃんで、頑固な上、滅茶苦茶とっつき悪い。
ほとんど家に閉じこもってはいるようだが、最低限の買い物をし、3食自炊して、たった一人で母親の面倒を見ている。
いや、最近までは両親の面倒を何年も一人で見ていた。
だが、数日前に父親が亡くなり、葬式は済ませたものの後始末もあって兄弟姉妹が訪ねると、おばあちゃんは誰も家に上げないのだと言う。
「この人がいては家に入ることも出来ない。財産を好きにされてしまう。言っていることがおかしいから入院させろ」と口々に言う兄弟たち。
目の離せない母親に訪問リハビリが来た隙に、保健所と示し合わせて連れてきたのだそうだ。
本人は、病院の玄関の外で、「私は病気ではないのに、どうしてこんなところへ連れてこられなきゃならない」とカンカン。
玄関の前で騒いでしまっているので、一応話を聞きに行かざるをえない。
おばあちゃんは怒ってしまっているので、多少話が噛みあわない部分はあるが、「こんな連中を家に入れるつもりはない」と主張自体はしっかりしていて明らかな幻覚妄想と思われる話があるわけでもない。
...大体今まで本人のことも母親のこともほっといて、父親が亡くなったら、初七日も済まないうちに連れて来るって...主観なのは承知の上だが、兄弟たちのほうが怪しいと思ってしまった(笑)。
遺産争いだったら、親族会議でやってもらわなくては困る。
結局おばあちゃんは「あたしゃ一人でも帰れる」とスタスタ裸足で歩いていってしまい、受診自体なかったものとした。
兄弟たちは、「入院させなくていいのか、させるべきじゃないのか、やっと連れてきたんだ」とゴネていたが、強制入院させる理由がありません、とお引き取りいただいた。

もっとびっくりしてしまうようなケースもあったけど、それは次回に。





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最終更新日  2007年06月24日 22時13分22秒
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