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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
精神科医になって最初の症例が、このような患者さんだったことは、その後の私に今でも大きな影響をもたらしている。
何しろ、自分が死にたくなってしまっては、元も子もない。 私が今でもいくつか心がけていることがある。今では無意識にやっていることも多い。 「できないことは、最初からできないと言う。患者さんにも、他の職員にも、できるようなフリや顔は絶対しない。」 「分からないことも、分からないと言う。正直に『ちょっと自信がないから、調べておくね』と言っても、患者さんの不信感には繋がらない。」 「患者さんを入院させる時は、目標をはっきり決める。実際どこまでよくなるか、個人差もあるので何とも言えない場合は、そのように伝え、『でも、私は、××を目標にして、やれるだけのことをやってみます』と伝える。入院治療によって改善の見込みが薄い場合は『場所の提供だけであること』『状態が現状のままもしくは悪化しても、入院期間はここまで』と伝える。でないと、誰も帰れなくなってしまう。」 「治療契約は分かりやすくシンプルに。職員によって違う解釈の余地がないようにする。」 摂食障害の患者さんに、今の私なら、どんな治療契約を設定するだろう。 1.外出禁止、家族からの食品の持ち込みも禁止。(好きなときに好きなものを買って食べたいのなら、入院する必要はない) 2.食事は決まった時間内に決まった場所(具体的に指示)でとる。食べ残し等一切の持ち帰りを禁止。延食も検査でずれたなど、特別に主治医が許可する場合を除いて、禁止。食事摂取量は、完全に職員側で管理する。 3.病棟内は意外にプライバシーが保たれ死角も多いため、行動化を抑制する目的での入院はありえない。一時的に抑制できたとしても、退院すればいつでもやれてしまうので、やらなくなるまで入院、という選択肢はない。患者さんが意識的に行うことを止めることは不可能。患者さんが自分で、何とか抑制しよう、という意思を持たない限り治療は出来ない。入院中に行動化が起きた場合は、治療意思がないものとし、また入院による抑止力が期待できないものとして、退院していただく。退院指示が出た時は同日中に必ず身元保証人に迎えに来ていただく。 4.入院期間は2週間(~4週間で状況により退院日を最初から決める)とする。 5.他は、就寝時刻など、病棟ルール(病院によって違う)を遵守する。 かなり厳しいだろうか。 だが、私が設定した治療契約を守った人格障害とされる患者さん、守ろうと本気で努力した患者さんたちは、1~数年かかって結局社会に適応していっている。 こういった患者さんの場合、治療契約を守ろうとする努力そのものが、治療の主軸となる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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