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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
初診の患者さんを前にして、治療が必要かどうかという判断、治療を始めるなら、まず何から...という決定を下すのに、五感と脳を働かせる。
診察の前に、まずワーカーさんや、研修医の先生が「インテーク」といって予診をとってくれる。 生活歴、家族歴、これまでの経過や治療歴なんかをザラッと聞いてきてくれるもの。 ただしこのインテーク、とる人の力量によって、情報量がかなり違う! 有用性のある情報が多いインテークで、典型的な患者さんであれば、患者さんに会う前にほとんどの判断がつくことも。 医者より診断の確かなワーカーさんもいるのだ(笑)。 診察室では、判断が違っていないか確認するような形で問診が進み、効率的。 患者さんを前にして、治療方法を選ぶとき、いろんなことを同時に考えながら、質問し、話を聞く。 たとえば、自分で「私はうつ病だと思うんです」とおっしゃる患者さんと、「自分はうつ病になんてなるはずがない。これは怠けているだけだと思う。でもどうにもならない...」とおっしゃる患者さんでは、治療の選択が違う。 「何もやる気がなくて、できません(実際しない)」という人と「次々仕事をしているけれど、うまくいかない。本当はもっとできるはずなのに、おかしい!(よく私は、空回り系、と呼んでいる)」という人とも、処方を変えている。 同じように幻聴や妄想があっても、「怖いから自分の部屋にこもりっぱなし」なのを家族が引きずり出して連れてきたのと、「隣近所に仕返しして回っている」人を警察が保護して連れてきたのとでも、薬剤の組み方が違ってくる。 高齢者で抑うつ気分、または被害妄想や徘徊のある方だと、認知症が入っているかどうか、でも治療パターンが変わる。 確認強迫や不潔恐怖のある患者さんでは、その思考パターンに「ゆるみ」や「解体」がないか、つまりそれらの症状が思考障害によって出てきたものではないか、ということを注意して診察する。 診断はもちろんだけど、その患者さんの思考や行動を止める方向に薬を使うのか、動かす方向に使うのか、一度はまず止めておいてから動かす必要があるのか。 動かした時に予想外の行動に出るタイプの人か、動かしても良識ある行動範囲が保てるタイプの人か。 ある大学の精神科で教育を受けた精神科医の多くは、精神病圏といえばまずR、うつ病圏だと思えばまずPという薬から使う。 ずっとどうしてかな、と思っていたが、ある時そちらからいらしている若い先生に「じゅびあ先生は、患者さんによって最初に使う薬を変えているんですか!?」とびっくりされた。 診断がついたら、こういう順番で薬を使うのが良い、と教えているんだろう。 製薬会社さんの頑張りの結果か!? で、新しい薬が販売開始になると、みなやたらにそれを2番目あたりの選択に持ってくる。 確かに新薬なら、薬価は高い。 私は決して最新の薬を優先選択しない。 新しい薬が、従前の薬よりも、全ての面において優れているということはないと思うから。 最新の薬というのは、作用も副作用も、その薬の「効きグセ」も分からないことが多い。 自分のよく知っている薬で改善できるのなら、何も慌てて使ってみる必要はないと思い、他の先生たちが試しに使っているのをそっと眺め、どんな効き方をするのか、様子見をしてしまう(ずるいかな?)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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