|
カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
慣れない職場で精神科の「固い」医療をやるのは神経を遣う。
精神科の「固い」医療というのは、うつ病の休養入院とかと違い、例えば統合失調症で大暴れしている人を隔離して行なうとか、自傷他害や身体管理まで必要な人を拘束して行なう治療の事を指している。 精神病状態で、本人の同意なく入院させられた患者さんというのはまず自らすすんで薬をのんではくれない。 人によっては「病院の食事など絶対食べない」と決めていて、水分すら勧めても口にしない患者さんもいる。 被毒妄想、といって食事や薬に毒が入っている、と思い込んでいる患者さんもいるわけだから、一筋縄にはいかない。 拒食拒薬というのは本当に日常茶飯事で、看護職員も「ああまたか」という感じ。 週末に入院させた患者さんが、土曜日日曜日と全く服薬できない状態で大暴れ、不穏時(落ち着かない時)の指示薬ものめなくて、月曜日出勤するとそのまま保護室に隔離されている、ということもよくある。 当直医によっては、「拒薬しています」という報告を聞いて、「ああそう、じゃ主治医来るまでそのまま様子見て」と自ら服薬を勧めにいこうともしない輩もいる。 これって、結構困る。 患者さんから見れば、「ごねれば服薬せずに済む」わけだから、ますますその後ごねることになる。 主治医が出勤してから服薬させようと粘っても「昨日の先生はのまなくていいと言った」ということになってしまう。 私自身は、自分の入院患者さんが薬をのまない、ということを断固許さない医師だ。 入院させて薬が入らないのなら、入院の意味などない。 家にいて治療ができないから入院なのに、プロの医療職が薬をのませられず、そのへんに閉じ込めて徒に時間だけが経過するなら、何のための入院だ。 当直時に患者さんに服薬を勧めに行き、どうにか口に含ませたもののブーッと吹っかけられ、頭から薬と水とよだれをかぶったこともある。 白衣を通って服まで汚れ、クリーニング代だけは病院を通して請求させてもらった。 筋肉注射や末梢からの点滴で入れられる薬剤は限られている。 この患者さんにこれが合うだろう、と考えて処方した薬剤を確実に体内に入れるためには、やはり内服しかないのだ。 新しい病院でも、拒食拒薬の患者さんを拘束して経管栄養と内服、をやった。 入院前からろくに食べていなかった上、入院してから職員がお茶を勧めてもそっぽを向く状態だったから、いたしかたない。 もちろん精神保健指定医の診察の上、である。 だが、その指示が出た瞬間、「えーっ、マジで?」と言っている看護職員の声が聞こえた。 ...めげずに聞かないフリで、やらねばならなかった。 薬を全くのんでくれない患者さんが薬をのんでくれるまで、何日も隔離されることは、患者さんやその家族の時間的経済的負担を増すだけ。 あっという間に、何週間も経過してしまう。 鼻から入れているチューブが辛くて「こんなのを入れられているくらいなら、口で食べます。口から薬をのみます。その方が楽だから」という気になってくれればそれでいい。 前の病院ではだいぶ浸透させたことなのだが、ここではまだ違ったようだ。 結局その患者さんは、1週間で食事が摂れるようになり、あだこだ言いながら2週間で内服できるようになり、3週間後に「これくらいなら家でみます」と家族が連れて帰った。 最初の人でそこそこの結果が出せてよかった。 今後同じようなことがあっても、次からは理解されるだろうから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年11月06日 22時38分33秒
コメント(0) | コメントを書く
[プシコ(精神疾患)な毎日] カテゴリの最新記事
|