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じゅびあの徒然日記

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2008年01月16日
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ある高齢の男性が、家族に連れられてやってきた。
診察室で話を聞くのだが、とにかく、喋る喋る。
こぼれるように喋るのだ。
話している内容は意味不明というわけでもなく、一応私の質問に対する応答だが、同じことを全部2~3回ずつ繰り返して喋っているような感じ。
本人も自分の喋りが止まらないことを自覚し困っていて、私に止めてほしいと言う。
喋る方は喋るが、家では無気力、ほとんど寝たまま、何もしない。

これまでに、複数の病院を受診しているが、いずれも1ヶ月続いていない。
薬をのむとぼーっとしたり、よだれが出たりして状態が悪くなったから、とどこもすぐ勝手に自己中断してしまうのだ。
夏には転倒して骨折し、地元の名門総合病院に入院したが、喋り続けて他の患者さんに迷惑だという理由で、たった15分で退院させられたのだそうだ。

精神病圏でもなさそうだし、躁病で気分よく喋っているわけでもなさそうだ。
認知症自体は否定できないが、意識障害という感じでもない。
いったいこれは何なんだ。

正直診断が全く分からないので、様子を観察させて頂くことと、検査を目的に短期間入院とした。
家族には、精神科の疾患でない可能性もあるし、何らかの脳の変性疾患であれば、入院治療して全くよくならない可能性があることも伝えた。
家族は夜も喋り続けられた上、骨折後の介護に疲れ果てていたので最初から入院を希望していた。
本人は「入院した方がいいと先生が言うならする、入院する、家族も入院してくれなきゃ困ると言う、家族が困る、入院は嫌、入院は嫌、俺はどこへ行くんだ、どこへ行くんだ、でもしなきゃならない、しなきゃならない...」と言い続けながら、同意書を書いていた。

入院してもらって、寝る前に少しのハロペリドールだけで様子を見る。
本人は「先生は喋りが止まる薬を出してくれない」と不満だったが、最初から薬をかぶせたら、本態が見えなくなってしまうから、2日くらい待つように説明する。
家族は「本人が無意識にしゃべり続ける」と言っていた。
だが脳波や心電図の検査はちゃんと黙って受けることができ、どうも無意識に喋っているわけではないことが分かってきた。

治療的診断になってしまうが、何から行こう?
認知症系の薬から行ってもいいが、これから行くと、消去法が利かなくなる。
気分の波はこれまでなかったと家族が言うし、私自身も躁病とは違うようには思うが、とりあえず抗躁薬のリチウムを単剤勝負で使う。
リチウムが効く疾患であれば、効果の大小はありこそすれ、とにかく4日あれば結果が出る。
4日試して全く話が止まらないなら、躁病による多弁は完全に否定できる。

結果、リチウムは無効だった。
一方で寝る前に極少量のハロペリドールしか使っていないのに、著しく強いパーキンソニズムがが出現し、えらく小刻みで歩くようになってしまった。
喋りは確かに減ったけれど、呂律が回らず、喋りにくくなっただけのようで口をパクパク、苦しい苦しいと訴える。

ありゃ、待てよ。
改めて、家族の話していた病歴を読み直す。
「喋り続けているが、いい時はまったく普通で何ともない。夕方から夜にかけて特に喋る。」
「他の精神科で出された薬をのんでも症状は悪くなるだけだった。試しに止めてみると一時的に症状がよくなるので、そのままにした。それを繰り返した。」
「一番最初は、喋りながら家の中を早足で歩き続けた。」
高齢で、症状の日内変動があって、徘徊して、なんて言われれば当然認知症に伴うせん妄(軽い意識障害)なんかを私たちは考えがちだが...。

最初から振戦や小刻み歩行が主訴なら、誰にでも分かる。
主訴が「お喋り」というのに騙されていたけど、パーキンソンなのではないの?
改めて患者さんの顔を見てみる。
表情が硬いと、私たちは精神病圏とか、抑うつ的とか得意分野で考えてしまいがちだけれど、パーキンソンの仮面用顔貌とも十分言えるじゃない(薬剤性パーキンソニズムでないのを診るのは、学生の時以来かもしれない...)。
お喋りの仕方だって、小刻み歩行で「おっとっと」ってなるのと同じように、口から出る言葉も「おっとっと」ってこぼれてしまう感じ、と考えたらぴったりはまる。

まるっきり私の守備範囲外の神経内科的疾患だが、慌てて処方を一から組み直す。
それまでと正反対の作用を持つドーパミンアゴニストをガツンと使う。
少量とはいえ使っていたハロペリドールが完全に抜けるまでまだ数日かかるけれど、処方変更後2日目には言葉の繰り返しが止まった。
看護記録も行数が減り、ご本人は黙ってテレビを見ているではないか。

あのお喋りでは総合病院の一般身体科で嫌われてしまうのも無理はないが、今まで関わってきた医者の誰もが、精神科のレッテルを貼り、パーキンソンだと気付けなかったなんて。
骨折で入院が必要なのに、喋るからと追い出されたなんて、なんということだろう。





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最終更新日  2008年01月16日 22時42分21秒
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