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じゅびあの徒然日記

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2008年04月26日
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4月になると、どこの大学精神科医局にも、「フレッシュ」と呼ばれる新入生が入ってくる。
最近、このフレッシュに転科組が多くなった。
転科組というのは、外科や内科や、皮膚科...その他もろもろの科から、専門科変更を希望してやってくる先生たちのことだ。

なぜ転科してこられるのか...外科では体力と気力と生活が続かなくなった、精神科なら今からでもやれると思った...など実際「楽だろうから」「誰でもやれる」と思って来られる先生が少なからずおられるに違いなく、ローテート研修後すぐに精神科を志した私などは「それは違うど!」と声を大にして言いたくなってしまうのだ。
前にも書いたように、場合によっては患者さんと取っ組み合うくらいの体力がいるし、服薬を頑強に拒否する患者さんとは気力を振り絞って根競べをしなくてはならない。

他科から転科された先生の診察を診ていると、若い先生でも「あー、いかにもお医者さんっていう診察だな」と思うことがある。
患者さんが何かを訊いたり、不満をこぼしたりする「隙のない」診察なのである。
傍から見るとそういう先生はとても信頼できそうで、言い切られると看護師も対応への不平不満を言いにくく、表面的には何も言われず指示が流れていったりする。

変なところでつけ入られたりしないためには「隙のない」ことも重要だし、時として私も言い切ることがある。
前の主治医がチョー隙のない先生だと、表面的に隙のある私は主治医交替した途端に家族から「家に置けない」と特に変化のない患者さんでも入院を迫られたりしてしまう。
何回か診察を繰り返すと「じゅびあ先生は実はそんなに隙があるわけじゃないんだ」と伝わるようだが。
何度言っても服薬してこない患者さんに「服薬しなきゃ話にならん、いくら診察に来ても、デイケアだけ来てても、意味がない」と半分怒って言うくらいのことは、私だってある。
...いくら怒ってもキリがないので、ある患者さんはGW明けまで服薬できなかったら、持続性抗精神病薬注射(デポ剤)の導入を考えるつもりだ。

精神科というのはものすごく専門性の高い領域だ。
精神科経験のない内科開業医が「内科・循環器科・心療内科」などと標榜していることがよくある。
この例ならばこの先生の専門は循環器で、心療内科については十中八九「患者さんの要求に従って睡眠剤と安定剤くらいなら出せる」という程度だと思ってよいし、診察している先生自身も「睡眠剤と安定剤くらいなら、特別の勉強をしなくても出せる」と思っている可能性が高い。
これはまた一方で、患者さんたちが「精神科」の看板を毛嫌いし、「心療内科」という甘美な響きに惹かれやすいということの結果でもある。
「心療内科」からの紹介状を見ると「この先生は実は全く向精神薬をご存じないのだな」と思うことが、本当によくある。
心療内科でも、「心療内科・精神科」「精神科・心療内科」と標榜している先生は、精神科医だから、誰でも見分けられると思う。
この「心療内科」いうのは微妙で、本当は内科とも精神科とも趣の異なる領域で、本物の「心療内科」医を私は数えるほどしか知らない。
精神科領域を診療する心療内科医何とか、とコミックやドラマに出てくることで、うつや強迫、妄想で「精神科は嫌だから」と心療内科にかかってしまう患者さんが後を絶たないが、本来の「心療内科」は心因性に身体症状が出ているのを軽減するのが目的の科だから、混同されないような啓蒙が必要だと思う。

話を戻そう。
転科組の全てがそうだと言わないが、「今からでもできる」「誰でもできる」と思って精神科を希望される先生たちには「そう甘くないぞ」と言いたいし、「他の科をやって疲れたから、楽をしたいから精神科へ移った」医師にかかった患者さんは不幸だと思う。
指導をしていても最初から精神科希望(ローテート後、すぐ)の先生のほうが、変な「色」や、プライドがなくて正直指導しやすい。

転科組でも、精神科という領域に敬意を払い「大変なつもり」で来てくれる先生は、もちろん、大歓迎ですよ。





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最終更新日  2008年04月26日 18時42分26秒
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