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じゅびあの徒然日記

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2008年05月02日
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カテゴリ:カラダの病気
年末年始、GWの連休前は駆け込み押し込みで入院希望、入院依頼が増える。
連休中はほとんどの医療機関が通常の診療体制をストップするし、クリニック受診中の患者さんでは電話相談先もないという事態に陥る。
それでは不安だというご本人、ご家族の入院希望、さらには患者さんを入所させている施設(連休中は人手薄になりやすい)の入院希望が続々と集まってくる。

できるだけ不安にはお応えしたいけれど、一方で精神科単科の病院では、身体合併症に注意を払わなくてはならない。
設備の行き届いた総合病院と違って、連休中は検査もX線もストップだし、医師も当直体制で主治医が毎日出てくるわけではない。
当直医が患者さんを高次医療機関へ転送したくても、その転送先も当直体制で、受け入れを嫌う。
精神科で暴れたり、徘徊したり、大声をあげたりする患者さんなら尚更だ。
平常時でも一般総合病院病棟の精神科アレルギーは深刻なものがあり、時として家族同伴で普通に外来受診させるしかないことがあるが、頼みの綱の「外来」がお休みなのだから。
当直の先生にも迷惑をかけ、嫌な思いを強いることになってしまうし、何より患者さん自身の生命に関わることがある。

若くてガタイのいい患者さんならばまだよい。
基本的に体力があるので、通常の熱くらいならさほど慌てなくてよい。
少々の細菌など、潜在的に跳ね返す力を持っている。
怖いのはやはり高齢の患者さんだ。
熱がはっきりしなくても、重症の肺炎であったり。
食欲がなくなって数日で衰弱したり。
不思議なことに隙間風の入る自宅で生活していた高齢の患者さんが、気密性の高い冷暖房の行き届いた病棟へ入院した途端、環境の変化で肺炎になったりしてしまう。
検査のできない病院では、人体はまさにブラックボックス。
今の医者は視診聴診触診打診だけで見抜く透視能力など持ち合わせていない。

連休直前の平日、勤務時間終了間近になって、総合病院から高齢者の入院依頼など受けると、「身体合併症はありますか?」と尋ねるだけでなく、「血液検査尿検査、心電図、胸部X線と頭のCTを実施してから、患者さんを送ってください」と頼むこともある。
設備やマンパワーに恵まれた総合病院なら、検査結果もすぐに出揃うが、こちらではそうはいかない。
患者さんの到着が遅ければ技師はすべて退勤してしまうし、外注の血液生化学検査は連休明けまでやれないということになる。
胸部X線くらいはその気になれば自分で撮れるが、機械を動かせない、動かそうとしたこともない精神科医は多いから、「私がやれる」と公になると技師のいない時他の先生の患者さんのものまで私が撮影依頼を受けることになり、仕事が放射線技師になってしまうので、実のところあまり公にしたくない。
...いや、技師がいるだけマシなんだけどね。
なぜ私が撮れるかというと、技師のいない病院にいたことがあるからなので。

それで、「すみませんが身体疾患のスクリーニングを一通りやってから送ってください!」と依頼しているわけだが、恵まれた環境のドクターには、そこのところが理解されないようで、「おかしなことをいう女医が電話に出た」と思われてしまうらしい。
だいたい相手の言う「身体合併症はありません」「糖尿病はコントロールされている」「高血圧だけ」「精神科的な問題だけ」という言葉は鵜呑みにしないようにしている(内緒だけどね)。
実際、渋々ながら検査結果をつけて送らせたにもかかわらず、すぐに怪しくなり、送り返そうとしてもなかなか受け入れてもらえず(受け入れを頼まれる医者は送ってきた医者とは別だから、知ったこっちゃないという態度をとるのだ)、ようやく押しこんだら数日後に先方でお亡くなりになったケースを経験している。
つけてきたのが本当に通り一遍の検査だけで、器質的障害を見逃していたのである。
こちらとしても検査ができないから見た目で判断してるだけ、転院依頼の決定的な根拠を欠くから、やりにくい。

この連休前も、大学病院Aからいわゆる老人病院Bへの入院依頼を、Bが満床だからと断り、私のところへ送ってきたケースがあった。
認知症疑いで、不眠で徘徊や暴言のある80代後半の患者さん。
摂食状態もよくない。
電話では、身体合併症については高血圧くらいで、かかりつけの内科からの内服薬でコントロールされていると確認してある。
割と早い時間だったので、入院をそのまま受けず、外来で一通りの検査を行うことができた。
見て愕然。
ろくに食べていないのに血糖は高いし、腎機能も著しく低下しており、完全に腎不全のデータ。
さらに白血球数は18000(通常4000~9000)、CRPという炎症反応が26(通常0.5以下)。
熱は微熱程度だが、明らかな細菌感染症だ。
心電図は、これまた不整脈と心筋梗塞の疑いのある変化が見てとれた。
全身ガッタガタ。
かかりつけの内科、大学病院A、老人病院Bと、どこも検査をしていないのか。
したとしても、結果を見ていない、問題にしていないのか。
本人は腹が痛くて困ると言っているけれど、本当に痛いのかもしれないんだぞ。
事情を話して検査結果を添付した診療情報提供書を作成し、お願いし倒して内科へ戻ってもらった。
患者さんと、家族も大変だったと思う。
たらい回しに見えるかもしれないが、こんな患者さんを精神科単科の入院でとったら、連休明けまで命の保証ができかねる。

紹介元の「身体疾患は問題ありません」ほどアテにならない言葉はない。
彼らは、目の前の患者さんを送りたい一心なのだから、送ってしまえばそれで終わり。
普段も高齢の患者さんの入院依頼は、外来で最低限の検査をしてから決定することにしている。





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最終更新日  2008年05月02日 22時37分18秒
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