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Kausachun Qosqo

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2006.01.20
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片思いの人が私を必要としている。でも彼には彼の子をみごもる同棲相手がいるとしたら・・。

昨日、帰宅して団地の階段をあがろうとしたところで頭の上から声が聞こえてきた。

「retama、な~にしてんだよ~!」

カホンの先生のネグロ(スペイン語で黒人の意)だった。

せんせえ
El Comercioのweb版のカホン特集より拝借。この中でカホンを弾いている一人だよ。カホンの先生は


彼はクスコでクリオジャ音楽やサルサ、メレンゲなどを演奏するグループでカホンやコンガなどのパーカッションを弾いている。


私はちょうど来週は4日間仕事がないので、カホンのレッスンの再開をお願いしようと思っていたところで彼と連絡を取りたいと思っていたところだ。でも、私は携帯を失くして、新しいのに変え、音信不通状態になっていた。

どうしたの?いったい・・

「お前、携帯失くしたんだってな。連絡取れなくってよ~」

部屋に入って・・。でも、うち、散らかっているのよね。あ~、恥ずかしい・・

「構うもんか、ウチも散らかってるよ」

リビングに彼を通す。

「ふ~ん、まあ、コンドームは落ちていないな」

あんたねぇ~。ああ、ピルも落ちていないわよ。

「お前は、どうやって避妊する?ピル?コンドーム?」

う~ん、日付の計算も必要かしら?

「そうだよな!準備はしておかないと・・そうじゃないと俺みたいに突進したら、妊娠することになるからな」

まったく~!

「おれ、市役所で働くことにした」

え、どうして?
突然のことに私は言葉を失った。

「中絶に必要な金を稼ぐため!(爆)」

ペルーでは中絶は法律で禁じられている。中絶を実施するクリニックの捜査もニュースで見たことがある。

彼の同棲相手のEの妊娠がクリスマス前に発覚していた。

「だってよぉ~、産まれてくる子供の面倒見なきゃいけないだろう。音楽だけじゃ稼いでいけないから・・」

突然ね・・・。でも音楽はどうするの?

「続けていきたいよ・・。でも今後どうなるかわからない。グループのリーダーが影で俺の悪口を言っているらしいんだ。ホントは辞めたいんだよ。でも、クスコには他にいいグループはないし・・」

「retama、お前、中絶についてどう思う?」

私は正直に自分の考えを言った。

場合によっては必要かもしれない・・。

「俺は絶対、反対。父親と母親に子供を殺す権利なんてないからな!」

まるで自分を説得しようとしているようだった。彼は子供ができることを本当は望んでいないようだった。

故郷のリマに帰ろうにも妊娠中の彼女Eはクスケーニャ(クスコの女性)だ。クスコに残らざるを得ない。
彼が焦っているような、迷っているような雰囲気があった。

でも朝の7時から夜の5時までの仕事をしながら音楽の演奏を続けるのはたいへんよね。

「そうだ・・。夜中の3時まで演奏して、翌朝7時からまた仕事・・」

しばらく、サルサや音楽、キューバの話をした。
でも彼のほうにどこか落ち着きがない・・。

「あ~、俺、リマからサルサのビデオを持ってきたんだよね。みたい?ウチに見に行こう?」

え?あんたんち?
(ちょっと待ってよ・・。彼女がいるでしょ)

タクシーに乗って彼とその同棲相手Eの住む家へ向かった。

部屋に入るとEはいなかった。
1階の広い15畳くらいの広いワンルームだが、あんまりセキュリティがなさそう・・。
キッチンはなく、部屋の片隅に小さなコンロとそれにそぐわない大きな冷蔵庫。
流し台は見当たらない。
長方形の部屋の形を乱すかのように四角く出っ張ってトイレ兼シャワールームがある。
たぶんシャワールームで炊事をするのだろう。

ダブルベッドが一つとテーブル一つ。ケーブルテレビを接続したテレビ。

同棲相手のEは市役所のシビル・エンジニア。
カホンの先生が

「彼女は友達・・。彼女に言われて恋人同士になろうと努力したけどできなかった・・・」

と私に語ったのは去年10月のことだった。当時彼女と別れて私の元にやってくることになっていたけど、結局別れられないまま12月に妊娠が発覚した。

彼は私にキャッツ・クローティを入れてくれた。

ハーブティーキャッツクロウティー【ホーニマンズ】
ハーブティーキャッツクロウティー【ホーニマンズ】
まさにこれと同じものを入れてくれた


100パック入りの箱が目に入った。彼の体調が気になった。

胃炎にもいいらしいのよね、これ。

「そうらしいな・・」

Orquesta ReveのライブのDVDを見る。

彼は最近私との共通の話題としてキューバの音楽を選ぶケースが多い。憧れの国キューバに行った人間は彼の周りには私以外いない。

オルケスタ・レベのライブにはイラケレのチュチョ・バルデスやロス・バンバンのマイートも出演している。
エネルギッシュなライブ・・。

二人でいろいろ音楽や踊りやキューバの話をする。

部屋を見渡すと、クリスマスの飾りがまだ残っている。大きなクリスマス・ツリー。
壁にもクリスマスのデコレーション・・。
テーブルの上にもクリスマス用の飾りと赤いキャンドルが2本。
よく見ると、そのキャンドルの芯は白いまま、火をつけた跡が見られなかった。

Eはお腹にいる自分の子供の父親と一緒にクリスマスもニューイヤーも過ごせなかったのだ。

彼女の恋人は女手一人で子供二人を育てた母親と2週間を過ごすことを選んだのだ。

嫉妬深い、したたかな女と思い込んできたけれど、そこには退屈で単調な市役所の仕事と彼しかない寂しい女の姿が見えた。

DVDを見て楽しみながらも、ガマンできなくなって彼に言った。

「ねぇ、見てよ。キャンドル火がつけられていないのよ」

彼には私の言いたいことが伝わらなかったようだった。

片付けられないクリスマスの飾り。いったい彼は何を思っているのだろう・・。

そしてEの家族のことを思った。Eはどう見ても中産階級の出身。階級社会のこの国で娘がネグロ(黒人)の子供を身ごもったと知ってどう思っているのだろう。おまけに生活の基盤はしっかりしていない。

ペルーでは結婚観はきわめてゆるやかだ。子供がいても入籍しないまま20年近く未入籍なんて当たり前。だからといってそうしている人たちみんな異性関係がいい加減というわけではない。しっかりとした家族を築きつつ、浮気もせず、17年間未入籍のままも友人がいる。

それにしてもEはバカだな。ちゃんと大学まで教育も受けて、安定した仕事を持っているのに、まったく男の選び方に失敗した。
まあ、私もそんな甲斐性のない男に惚れているのだが・・。

ライブも終盤というところでEは帰宅した。

三人でDVDを見終わった。もう午後11時20分。

私は朝から講習会、彼も朝から仕事。
お暇をすることにした。

国道まで送ってもらう。私はタクシーをつかまえようとしたが、彼が
「バスで行く?」

と聞いてきた。

この時間、バスの本数は少ない。

彼は一人でいたくない、誰かにかまってもらいたいという感じだった。
バスだと停留所から家まで歩いていかなければ行けない。私の住む地区はクスコでは安全な方だが、さすがに夜は気をつけなければならない。冷静だったら気づくはずの危険性を彼は全く考えられないようだった。

私が通り過ぎる車を気にしている最中も彼はキューバのサルサを口ずさみ、ステップを踏み続ける。

ようやくやってきたコンビバス。私は挨拶のキスをして慌てて乗り込む。
彼は私をひきとめたい様子だった。

バスの中から彼に手を振る。発車したバスから見えた彼の表情には今まで見たことのない、焦ったような、絶望的な様子があった。。

胸が痛んだ・・。彼は迷っている。

私はどうしたらいいのだろう。彼のEの間に割って入るわけにはいかない。

愛していない女との間に子ともができてしまった。おまけに家族3人の生活を支えていくのは難しい状況にある。

気ままに生きてきたツケが今になって現れたのだ。

帰宅したのはもう12時前だった。

なんとか彼を支えてあげたい・・。でもそうすべきではない・・。別に彼がほしいというわけではないのだ・・。

彼だって私の元に来たがる理由をはっきりとはわかっていないと思う。
別に私が欲しいわけではないのだろう。
ただ、現実から逃避したいのだ。
好きな音楽から離れて行くかもしれない予感、家族を持つという責任を負わなければならない重圧。
おまけに愛していない女とずっと一緒に生活をし続けなければならない。

でもそれは彼とEの問題が二人で解決すべき問題・・。私は関わるべきでない。

なのに、自分が愛する人が苦しむ姿を見ていられない。

一夜明けても昨日の絶望的な表情が気になって、彼に携帯でメッセージを送った。

“コピーしてほしいCDのリストを日曜日に持ってくるように。でもEとちゃんと夕食をとるように、キャンドルに灯をともしてロマンティックにするように・・。”

私がキューバで買ったCDを欲しがる彼に対して
”私のウチに遊びに来てもいいよ。でも、Eのことはちゃんと愛して大事にするように・・。”
そんな気持ちをこめたつもりだったが、果たして伝わっただろうか・・



こんな馬鹿男に振り回される私に励ましの一票を!
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ちょっと今の状況に疲れています。これが必要かも・・







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Last updated  2006.01.20 12:19:57
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